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道化遊戯 コールランナー 愛夜ソフィア その1

これ、『シャドウラン』のシナリオにしても面白そうだなと作りながら思ったり。

後日、ファンティアにシナリオソースとしてUPしている。

 東京都台東区鶯谷。

 駅前のラブホテル街にそのネットカフェがあった。

 潰れたラブホテルを再利用した個人経営の店らしく、店の名前もなかなか凝ったものになっている。

 インターネットカフェ『ズヴィズダー』。

 ロシア語で星という意味である。

 入り口のフロントでカジノのディーラーみたいな黒スーツを来た女が、気だるそうに漫画を読んでいた。


「暇そうだな」

「そうでもないわよ。仕事どうしたのよ?仕事は?」

「その仕事でな。

 奥、使えるか?」


 ただのタクシー運転手ではなく、探偵として来たのだという事を察した女は受話器をとった。


「誰か今空いてる?

 ちょっと入り口お願いしたいのよ」


「はーい……って近藤さんじゃないの。

 いい加減ソフィアさんとくっついたらいいのに」


「今日の時給減らすからね」


「横暴だー!!!」


 そんな女の子を入り口において、ソフィアと呼ばれた女と近藤俊作は奥の部屋に入る。

 元がラブホテルなので防音はばっちりで、それ目的で男女が使っている事も良くある。

 ついでにいうと、ソフィアと呼ばれた女や入り口の女の子たちを含めて自由恋愛を行うこともよくある。


「めずらしいわね。久しぶりに来たと思ったら探偵復帰したんだ」

「俺にも恩を返したい相手が居てな。戻らざるを得なかったという訳だ」

「そういう甲斐性を私に見せたら、少しは見直したのに……」


 友人と言うには恋が多すぎて、夫婦になるには愛が少なすぎた。

 そんな二人の関係は男女の仲を含めて『腐れ縁』なのだろう。


「で、久しぶりにやってきて抱きたいなんて事もないでしょうし」


 一番奥の彼女の仕事場兼自室のドアを開ける。

 普通のラブホテルの部屋と違ってでんと鎮座していたのは、デスクトップのパソコン数台と複数のモニターである。

 近藤俊作は勝手知ったるとばかりに冷蔵庫から水を取り出す。


「飲まないって事はかなり真面目な話ね」

「かなりどころか、すごく真面目な話だ。

 何しろ、CIAが出てくる物語だからな」

「まぁ。じゃあ、私達はエキストラぐらいにはなれるかしら?」


 軽口を叩いたソフィアだが、近藤の顔を見て黙り込む。

 しばらくの沈黙の後、ソフィアが口を開いた。


「本当なの?」

「嘘だったら良かったんだがな。

 ハッカー連中で米国にいたずら仕掛けている奴らに連絡つかないか?」

「それはつくけど……どのレベルを探るかで変わってくるわよ?」


 複数のパソコンを立ち上げてキーボードを叩く手は早い。

 専門知識ではなく独学でここまでこれた理由の一つは、ここという拠点を得たことだろう。

 極東最大の電気街秋葉原が近く部品調達が楽な上、ラブホという匿名性の高い場所からのアクセスが逆探知を難しくしていたのである。


「米国大使館及び米軍基地の報告や会話で、明らかに浮いているワードを探してくれ。

 多分それが何かの作戦のコードネームだ」


 キーボードを打つ手が止まる。

 ソフィアが振り向いて近藤の顔を見つめた。


「本気?」

「本気なんだよ。悲しい事にな」


 ぽんと男の手からゴムで束ねられた札束が投げられ、それを女の手が受け取る。

 確認しながら女の手が止まる。


「本物じゃない!?」

「困ったことにな。

 全部くれてやる。何しろ戦闘機一機分の予算があるそうだ」


 近藤は煙草を咥えてそのまま口で弄ぶ。

 この部屋は禁煙なのだ。


「一応聞くけど、引き返すならここだぞ」


「あら。引き返せるんだ。

 私の人生、選択肢なんてなかったわよ」


 ソフィアは物憂げに微笑む。

 過去を振り返り、それに達観した女の笑みがあった。


「あの樺太統一の際に売られてここで客を取る日々。

 秋葉原が近く、ITバブルの客を相手にそれがもうかると掴んだ藁が私をここに押し込んた。

 その過程で、探偵と粋がっていたあんたのと縁もあったんだけどね。

 私のハンドルネーム、コールランナーの由来知っているでしょう?」


「たしか、『コールガール』と『ネットランナー』の造語だったっけ?」


「ええ。

 ハッキングが私をただの娼婦から救い出したのよ。

 そのハッキング相手が米国?

 ハッカーとしては最高の栄誉ね」


 もちろんハッカーとしての腕は三流であるとソフィアは自覚していた。

 その手のハッカーが集まるチャットに潜って、それとなくコールガール仕込みの会話でハッカーたちにカマをかけてゆく。


「あった。

 米国大使館や米軍基地の通信の中に『キャスリング』ってワードが何度か出ているそうよ。

 何かの作戦名じゃないかって噂している」


「キャスリング?

 たしかチェスの手だな。

 キングとルークを入れ替える……」


「米国大使館や米軍基地の通信ではたしかに浮いているわね」


 ここでソフィアが手を止める。

 近藤俊作の方を振り向いて、彼女は自ら踏み込んだ。


「ここまで関わったんだから、全部教えて頂戴」


「巻き込みたくなかったんだがなぁ……」


 タバコに火をつける。

 ソフィアが嫌な顔をしつつも灰皿を出すと、煙とともにそれを吐き出した。


「新宿ジオフロントの完成式典にテロの予兆がある。

 その阻止というかなかったコトにするというのが一応依頼だ。

 依頼主はCIAと桂華グループ。

 ターゲットは警視庁内部にDIAだ」


「……映画じゃないの?」

「だったら良かったんだがな。最後まで関わってもらうぞ」

「やだぁ!こんなの特級の厄じゃないの!」


 立ち上がって出ていこうとするソフィアの手を引き止めると体勢が崩れて二人はベッドに。

 そうなると、空気的になんとなくという所で電話のベルが鳴る。


「「……チッ!」」


 二人して舌打ちをする程度には体の相性はいいらしい。




「あ。ソフィアさん。近藤さんとより戻したんだ。おめでとう♪」

「その戻しの前に、あんたのせいで出てきたのよ!水樹ちゃん!!」

「だって小野副署長、私が情報持っていったのに、都内のラブホ出禁にしたのよ!

 ひどくない?」


 入り口でソフィアとじゃれ合う占い師神奈水樹。

 ラブホの部屋を譲った縁で神奈の占い師と知り合いになり、それが彼女の幸運に繋がった。

 そんな神奈の次期後継者が彼女である。


「諦めなさい。

 うちも駄目ですからね。小野さんには色々縁があるんですから」

「神奈とも縁があるじゃないですかー!

 私、神奈の次期後継者ぁー!!」


 こんな体をしているが、彼女はまだ中等部である。

 色々と言いたいことがあるがここは大人として他人として黙っておこうと思った近藤の耳に運命が飛び込む。


「どうせ小野さんに迷惑かけたんでしょう?

 補導されたとか?」


「私はそんなへましません!

 ただ、帝都警の残党の人と新宿のラブホで寝ただけで……」

元ラブホのネットカフェ

 このあたり法律ですごく厳格に決まっているのでフィクションとしてご容赦を。


ソフィアのハッキングスキルよりも側近団の野月美咲の方が数段上。


ネットランナー

 パソコン雑誌ではなく、『サイバーパンク2.0.2.0.』の方から。

 そうか。もうゲームの時代を超えたんだな……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 元ラブホのインターネットカフェの設定ですが、 札幌には、元ラブホをそのままアパホテルにして、 コロナ前後でお風呂場以外を改装したホテルが 運用されてます。 すすきのの東の寺街ところ。
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