書かなかった小説① 『無題』あらすじ1
ボクが風俗街に飛び込んだ理由の1つ。
なぜ、書かなかったのかは、現実を知ると辻褄が合わなくなったから。
それが何かは、今後の#小さなリアリティ#でわかります。
主人公は、二十代前半の青年。
実家暮らし。
家業を手伝っていました。
ある日の未明、彼は両親の寝室に忍び込み、金属バットで両親を撲殺、そのまま逃亡生活に入ります。
彼は、ボンヤリと考えます。
『どうして、こうなっちゃったんだろうな……』
裕福とは言えないけど、生活に困ることはなかった。
真面目で、少し歪なところのある両親でしたが、暴力的でもなかった。
青年が幼い頃に大きな借金を抱えるハメになりましたが、コツコツと返済し、子どもに惨めな想いはさせまいと気遣ってくれていた、世間からすれば良き父親、良き母親と評価されるだろう両親でした。
青年が家業を手伝い、継ぐ気でいたのも、そんな両親の人生に価値を感じさせてあげたかったからなのです。
数週間の逃亡の後、青年は、地方の風俗街に従業員として身を潜めます。
まじめで、あまり世間を知らなかった青年には、雰囲気やシステム、いろんなことが新鮮でした。
そして、彼は、他店で働く風俗嬢と親しくなります。
それは恋愛とは違うものでしたが、彼の新しい生活では、とても大きな刺激でした。
彼女は三十代後半。
ただし、営業上は二十代後半を自称していて、それなりに人気でした。
しかし最近は、肌や体型に、年齢相応の変化が見られるようになり、人気も落ち始めています。
そんな彼女は、時々、考えるようになりました。
『どうして、こうなっちゃったんだろうな……』
地方で生まれた彼女は、華やかな生活に憧れ、都会に出て美容師の見習いとして働き始めます。
将来は自分のお店を持つのが夢で、質素に、少ないお給料からもコツコツと貯金をする生活でした。
技術の上達も認められ、一人前の美容師としてお店に立ち、指名してくれる顧客も増えてきました。
そんな頃に、店員と客という形で、1人の男性と知り合います。
彼は、俗に言う『遊び人』と呼ばれるタイプで、パチンコに明け暮れ、その他のことは恋人の有無なども、私生活がわかりにくい男性でした。
彼からの猛烈なアプローチもありましたが、陽気で話上手なこと、自由に生きている空気などに惹かれ、彼女は独り暮らしで倹約を続ける寂しさや息苦しさから開放されたかった想いもあったせいか、しばらくして、同棲するようになりました。
その数ヵ月後……、自分のことを知る人のいない土地の風俗街で、風俗嬢として1人で暮らすようになり、それから十数年が経ったのです。