昔馴染みの密会 【月夜譚No.140】
あの情報屋とは、長い付き合いだ。
思えば、幼少の頃から家が隣同士で、幼稚園から高校まで同じところに通っていた。幼馴染みと言えば聞こえは良いが、彼とはどちらかというと「腐れ縁」と言った方がしっくりくる。
彼は人当たりが良く、よく色々な人間に囲まれていた。一方、自分は人付き合いが苦手で一人で行動することが多く、友人と呼べる者は彼以外にいなかった。
我ながら、暗い青春を過ごしたものだと思う。だが今思えば、それも現在の自分にとって良い経験だったのだろう。
町の隅でひっそりと開店する地下のバー。薄暗いそこに足を踏み入れると、学生の頃から変わらない笑顔で彼が出迎えた。手を挙げ返して彼の隣に腰かける。
そして、無言のまま彼が差し出した封筒を受け取り、軽く中身を確認をしてから厚みのある別の封筒を彼に渡す。そうしたいつものやりとりを交わしてから、二人はやっと口を開くのだ。
話すのは、他愛もない世間話や思い出話。そこに意味がないことはないのだが、この仕事を始めてからは心からそれを楽しむこともなくなった。
彼から受け取った封筒の中身――それを今から精査して、犯罪の計画を練らなければならないのだから。