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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
第2部 最弱の八天導師

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外伝58.5話 ……改良の余地、有り

 ナギさんは刀を構え、マナトを見据える。

「『神威』!!」

 そして早速、ナギさんは新作の魔導を発動した。

「おっ出し惜しみ無しか」


 『神威』こそレンと協力して新しく制作した魔導だ。露出が激しいナギさんの身体に、細い帯が巻き付いていく。帯は左胸を中心に四肢へと伸びていた。


「いきますっ!!」

 ダン、とナギさんは踏み込んだ。

 一瞬にしてマナトとの距離を詰め、その胴体目掛けて刀が振るわれる。


「っ!」

 マナトは即座に対応し、その刀を黒い剣で受け止めた。


『おぉっと!! なっちゃんの先制攻撃だぁっ!』

『『神威』は資料にない、新しい魔導ですね』

 ナギさんは続けて更に攻撃を繰り出す。


『素早さを生かした怒濤の連続攻撃ッ! とっくんは防戦一方かぁ!?』

 マナトは冷静に攻撃一つ一つを剣で受けていく。

 そして、攻撃の間隔、そのリズムを掴みとり合間の隙を狙って剣を突き出した。


「っ!」

 ナギさんはすぐに身を退いて、マナトから一気に距離を取った。


「――なるほど」


 マナトはナギさんの身体を改めて観察し、頷く。

『なんという事でしょう! いつもは少し動くだけ血塗れになるなっちゃんが傷一つ負っていません!!』

『これが『神威』という魔法の効果のようですね』


 実況解説が目を付けたとおり。俺が考案した『神威』の正体は『サクリファイスの刻印』を模倣した帯状の新基軸の鎧だった。あの帯は筋肉を補助する役割があり、レンが改造した『サクリファイスの刻印』による強力な付加効果を得て身体機能を大幅に向上させる。


 肉体を直接酷使する訳ではなく、あくまで外部から動作を補助するモノなので今までのように血が噴き出すこともない。


 距離を取ったナギさんに、マナトが詰め寄った。


「『グリード』!」

 マナトの呼びかけに応えて、黒い剣が霧へと変質しマナトのもう片方の手に集まる。

 そしてマナトの両手には2本の小振りな剣が携えられ。


「『二刀裁断』ッ」

 二つの剣が振るわれる!


「くっ!」

 目で追うことも出来ない無数の斬撃がナギさんを襲う。

 ナギさんは一部は刀で受け、身体を捻り、無数の斬撃に対応するが。


 それでもギン、ギンと高い音が幾つか聞こえて来た。マナトの剣がナギさんの鎧に打ち付けられている音だ。


「あー、やっぱそうなるか」

「……改良の余地、有り」 


 製作者二人でその様子を見ながらメモを取る。

『一転してとっくんの攻勢だぁっ!』

『どうやら『神威』は『サクリファイスの刻印』程の身体能力向上は見込めないようですね。ナギさんの動きのキレが悪いように見えます』


 ドライズの指摘の通り、『サクリファイスの刻印』の性能を100%再現はしきれていない。目測で70%程と言った所か。 

 加えて、『神威』には大きな欠点がある。これは魔導の構造上どうしても解消できない『神威』の根幹に関わるものだ。


「レン、あと何分だ?」

「……大体2分」

「やっぱ短いよなぁ……せめて30分くらいは保たせないと」


 『神威』のコンセプトは『サクリファイスの刻印』の代償を〝鎧に肩代わりさせる〟事にある。つまり、今までは傷ついていた肉体の代わりに鎧に負担をかけるのだ。当然、そんな負担が続けば鎧にガタが来る。


 ピシッとナギさんの身体に巻き付く帯に亀裂が入った。現時点では最大稼働時間は5分程度が限界だろう。


「マナトも容赦ねぇな……的確に『神威』そのものを狙って攻撃してやがる。いや、その方が参考になるから良いんだけども」

 ただでさえ負担が掛かっている鎧に更に攻撃を与えられては本来想定されている時間よりもっと保たないだろう。


 俺とレンは二人の攻防を元にメモを取る。


 さて、始まって早々だが、ナギさんにはもう残された時間は僅かしかない。

 ナギさんは多少強引に、刀を繰り出した。マナトの斬撃がナギさんの頬を掠め、すれ違う様にナギさんの刀がマナトの胸へと伸びる。


 しかしその切っ先は黒い霧が変質した小さな板に阻まれた。

 

『ここで隙を突いたなっちゃんの急所攻撃ッ! しかしとっくんこれを軽く防御!!』

『やはり『グリード』の変幻自在性は強力ですね。流石〝強欲〟と銘打たれているだけあります』

 因みに魔導決闘においては事前に魔石を保持する事で目には見えないが身体に二種類の魔導障壁が展開されている。


 一つは安全用の障壁で、普通はこの障壁が壊れる事は無い。これが決闘による怪我や事故を防止している。そしてその上から脆いもう一つの障壁が展開していてこれが破壊されると決闘は負けと判定される。


 因みにこの魔導障壁はイーヴィルとの実戦でも利用されているが、強度には限界があるのでどんな攻撃でも無傷で勝利、とはいかない。


「名残惜しいですがそろそろ時間ですね……っ」

 ナギさんは攻撃を辞め、もう一度マナトから距離を取った。


 そして、呼吸を整え、刀を構え直す。

『おっとどうした事だぁっ!? なっちゃんが身を退いたが、とっくんは追撃しない!』

『様子を伺っているのでしょう。お互いに動きは止まりましたが、緊張が張り詰めています。次の一手で、大勢が決しそうです』

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