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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
第2部 最弱の八天導師

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外伝58.4話 ヒーラーってどういうことだよ!?

 一週間後。

「マナト、少し良いですか」

 放課後の教室で、ナギさんが天井を見上げて声をかける。


「いやいや、何処に向かって声かけてるんだよ」

 と、俺がツッコむのとほぼ同時に。

「どうかしましたか?」

 しゅたっと天井からマナトが降ってきた。


「おわ!?」


 どうやら天井に貼り付いていたらしい。

「相変わらず忍者みたいだな……」

 ともあれ、ナギさんの用件は一つだ。この数日間、レンと一緒に熱中して作り上げた大魔導のお披露目会である。俺は大した事をしていないが製作者の一人として少しワクワクしていた。

 

 ――ら。


「貴方に決闘を申し込みます」

 続くナギさんの言葉に、俺は。

「……え?」

 思わず、耳を疑った。


 所変わって舞台は決闘場。魔導決闘部という魔法を使って殴り合う部活動が行われる場所だ。どうもナギさんはその部活のエースらしく、決闘場の使用許可をすんなり貰っていた。


 突然の決闘に、マナトは一瞬だけ驚いた様子を見せたがそれでも穏やかな笑顔で了承していた。俺だったらとりあえず色々捲し立てるところなのだが。


 俺は決闘場の二階の観覧席から、中心で向かい合う二人に視線を落とす。ナギが決闘を申し込んだ瞬間、耳ざといエクレアがもの凄い勢いで宣伝しまくったせいで観客がそこそこ入って居た。


「なんか、無駄に大事になっちまったな……」

 俺は観客席の手すりに顎を乗せてため息を吐きつつ、横に居るレンに語りかける。

「……ん」

 レンの方は一応返事をしてくれたが。一文字だけの台詞からはその心境が読み取れない。


『あー、テステス』

 ふと、スピーカーから聞こえてくる声。

『さぁ突如始まる事となった四のA最強決定戦ッ!! 実況のエクレアちゃんとォ――』

『突然拉致されて〝解説よろしく〟と言われてマイクを渡されました。ドライズです』

 親友の、呆れ果てた様な、達観したような、妙に抑揚の少ない声色で述べられた台詞に俺は思わず苦笑する。


「何やらされてんだあいつ」

 主人公は大変だなぁと、文字通り高みの見物をしながらニヤニヤドライズに視線を送った。


『まずは選手の紹介! ドラリンよろしくっ!』

『紹介って言われても――え? 資料? あるなら君が読めば良いじゃ無いか。解説の仕事? もう、判ったよ。やれば良いんでしょ、全く――』

 ブツブツ文句を言いつつも、ドライズは資料に目を通した。


『先に紹介するのは一条いちじょう なぎさん。この決闘の挑戦者側ですね』

 ドライズは資料を読み上げていく。


『土属性専攻で、所有する属性は土と風属性。クラス内での役割ポジション回復魔導士ヒーラーです』


「異議ありッ!!」

 俺は思わず手を上げて抗議した。


「ナギさんは最前線で戦うゴリゴリのアタッカーだろ!? ヒーラーってどういうことだよ!?」

 声を大にしてドライズに問いかけるが、


『いやでも資料にはヒーラーって書いてあるんだよ』

 と、ドライズの方も困惑気味だ。すると、ドライズの元に小柄な緑の影が歩み寄り。


『マイク変わります、四のAリーダーのヴェルリーゼです。ナギにはその卓越した戦闘能力から最前線で戦って貰っていますが、彼女の学園での選択コースは回復魔法専門であり、それに乗っ取った分類をするならばそのポジションはヒーラーで間違いありません』


 全身から血を吹き出しながら前衛で敵を全滅させるヒーラーなんて居てたまるか、と叫びたかった。


『と、いう事らしいです』

 ドライズはこほん、と咳払いを一つして仕切り直す。


『武器は非マテリアライズ製の業物、『草薙クサナギ』という刀。防御面の一切を廃し、攻撃と素早さに特化した戦いを得意とするスピードファイターです』

 

 ドライズは資料のページをめくる。

『続いて、応戦するのは石田いしだ愛斗まなと君』

 慣れてきたのか、ドライズはすらすらと続けていく。


『闇属性専攻で、所有する属性は闇属性単色です。クラス内での役割はサポーター兼サブヒーラーとなります』

 マナトは、まぁ。基本的に誰かの手助けをする役回りなのでポジションに違和感には無いのだが。


「エクレアは最強決定戦とか謳ってるけどその実ヒーラー同士の決闘って最早意味判らないな……」

 でも実際多分クラスの中で戦闘能力を比べたらはナギとマナトの二強になるだろうから間違ってはないというのがなんともおかしい。


『武器は闇属性の魔法剣、『グリード』。霧の様に変質する事で自由自在に形状を変形出来る臨機応変な対応力を持った剣です。攻撃特化のナギさんに対して、マナトの戦闘スタイルは攻防兼ね備えたバランス型となります』  

 解説が終わり、俺は視線をナギさん達に移す。


 ナギさんはエクレアによって大衆娯楽化されてしまったこの状況にも動じること無く、すぅっと深い呼吸をして。

「多くは語りません。戦いの中で、貴方に伝えたい事があります」

 と、マナトに告げる。


「――判りました」

 対するマナトも言葉少なく、神妙な面持ちで頷く。


『さぁ、準備は整った模様です! それではぁ——デュエル開始ィィッ!!』

 エクレアの宣言と共に、二人は武器を抜いた。

あの人達ヒーラーなんです


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