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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
第1部 俺は主人公になれない

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16話 やってやれッ主人公ッ!!

 ナギさんは迫り来る巨人の手を刀で真っ向から受け止める!

「ッ、ハァッ!!」

 ぶわり、とナギさんの四肢から鮮血がほとばしり、刀を振るって巨人の手を押し返した。


「ナギッ適当に置いておきますッ使って下さい!!」

 マナトが叫ぶと、黒い霧と化したマナトの剣が空中で幾つかの小さな塊を形成する。

 ナギさんは返事も無くその黒い塊を足場として飛び乗り、蹴っては空を駆けてゆき、


「急所は人体と同じでしょうか?」

 巨人の顔の目の前へ飛び、その目と思われる部位に刀を突き立てた。

 巨人は大きく仰け反り、悶え苦しむ。

 

 ナギさんの攻撃により悶える巨人から俺達は距離を取る。

 リーゼが思案している。     

「ともかく、ユウの救出が急務ね」

「だが、ユウ君を拘束してるあの腕のような物体は斬ってもすぐに再生していたぞ?」

 可哀想なクラスメイトこと、シャルネさんの指摘にドライズが声をあげた。


「多分、僕ならあれをどうにか出来る」


 皆、その言葉に驚くが俺はハッとして確認した。

「もしかしてお前……もう〝受け継いでる〟のか?」

「うん。僕にも〝破滅の光〟が宿ってる」

 ルクシエラさんを特別な人間たらしめている力。

 

 原初の魔力の一つ〝破滅の光〟。

 

 正当な弟子であり養子でもあるドライズならばいつから継承するものだとは思っていたが、もう既に受け継いでいたとは。


「でも、普通に使ったらユウさんを巻き込んじゃう。剣にエンチャントして、直接拘束してる腕を攻撃しないと……」

「そのためには接近しないといけない、か……」

 俺はもう一度、時間を稼いでいるナギさんの方を見た。


 マナトが作り出した黒い足場を次々に蹴っては移動を繰り返し、空中を三次元的に駆け回る事で撹乱するナギさん。


 巨人の方は、ナギさんを捉えようとその二つの腕を大きく振るい応戦している。相手がナギさんだからその攻撃を捌ききれているが……。


「刻印を使用したナギの素早さ、身のこなしは僕でも追いつくのが精一杯です。他に真似できるクラスメイトは居ないと思われます。まずは相手の動きを制限するべきかと」

 マナトの分析。


 ドライズとマナトの言葉を、リーゼはかみ砕き、


「つまり、〝あの腕を無力化〟して、〝ユウの元へドライズを送り届ける〟必要があるという事ね」

 そう言って作戦を整理し、顔を上げる。


「作戦が纏まったわ」


     ◇  ◇  ◇


「ナギッ、リーゼさんから指令です!! 腕を1本、無力化してください!!」

 地上から、空のナギさんへ向けてマナトが叫ぶ。


「承知」

 ナギさんは撹乱する動きをやめ、黒い足場の一つに留まった。

 すぅ、と深く呼吸をして、


「ユウさんには申し訳ありませんが。私はこの状況を少しだけ、喜ばしく思って居ます」

 正面に立つ巨人を見据えて、言葉を続ける。


「嘗て対峙する事の無かった異形との戦い。沸き立つ心を抑えられません」

 刀を構え直し、キッと巨人を睨んだ。巨人の方は、ナギさんが動きを止めたことを好機と考えたのかその細い腕で拳を作って繰り出す。


「私の武道が何処まで通じるものなのか……血の滾りを感じずにはいられない!!」

 ドクン、とまるで心臓の鼓動の様な波動がナギさんから放たれた。

 濃厚な魔力を孕んだ紅いオーラがナギさんから立ちこめる。


「――そして、これが私のケジメです。我が血を以て、皆の活路を開きましょう」

 紅いオーラを纏ったナギさんは再び刀を構えて、口を開いた。


「『我が戦いの道はここへと至る。我が研鑽、我が生涯。その全ての結末を示しましょう』」


 詠唱と共に。迫り来る拳を真っ向から迎え撃つ!!


「『神風』ッ!!」


 大気すら切り裂かんと放たれた斬撃は、ナギさん自身より何倍もの体積を誇る巨人の片腕を。


 文字通り、一刀両断にした。


「……っ」

 一方のナギさんは、『刻印』の代償により全身に赤い亀裂の様な筋を走らせ、血をだらだらと流しながらゆらりと身体を傾けた。そのまま、黒い足場から落ちていく。


 落下してきたナギさんを、マナトがしっかりと。

 例にもよってお姫様抱っこの形で受け止めた。


「お疲れ様です。しっかりと休んで下さい」

 マナトはナギさんに回復魔法をかけながら、そう伝えた。


 ナギさんがイーヴィルの片腕を斬り捨てたのと同時に、俺は空へと飛び出した。

 リーゼが乗っていた箒を借りて、サーフボードのように立ち乗りをして空を突き進む。


「ただの石ころだってなァッ!! 鉄砲玉ぐらいにはなるんだよォッ!!」

 イーヴィルはそんな俺を叩き落とそうと残されたもう一方の腕をこちらへ向けて来て。

 目前に巨大な拳が迫る。


 俺はそのまま、得物である槍をマテリアライズした。

「喰らえッ!!」

 俺は勢いに乗せて槍を投げ飛ばし。

 俺が放った槍はそのまま、イーヴィルの拳に突き立つ。

 しかし、相手の巨大さからみてみれば突き立った槍なんて爪楊枝のようなモノ。


 無論、それだけでどうにかなるだなんて思っちゃ居ない!


「『弾けろッ黒鉄の楔』!!」

 俺の詠唱に呼応して、突き立った槍が赤熱し、ボコボコと形を変え、

「『ヘビィ・ブラスター』!!」

 槍はそのまま大爆発を起こした。


 俺も爆風に巻き込まれて吹き飛ばされ箒から落下しそうになる。しかしこの爆発だけで腕を消し飛ばす程の威力は無い。


 石ころの様な俺に、ナギさんみたいに腕一本を簡単に潰せるだけの力は無い。


 それでも、一瞬怯めばそれでいい!


 「『求めるは第三の叡智、制するは炎、集いし業火は煉獄の魔弾』ッ」

 箒の上でバランスを崩しつつも重ねる詠唱。


 石ころの鉄砲玉も、数を撃てば少しは効くはずだ!


「『第三火炎魔法(グレン・フレイム)ッ!!』


 俺は俺に出来る最大限の魔法を放った。


 『ヘヴィ・ブラスター』の爆発でややひるんだ腕に追撃で紅蓮の火球がぶつかり、爆ぜる!

 相乗する爆風が俺を完璧に箒から振り落とした。


 ナギさんみたいに、強く鮮やかにとはいかない。

 けれど、この二連撃で残された片腕も確かに大きく怯んだッ!!


 逆行していく景色。


 落下しながら、すれ違う様に昇って行く影へ向けて。

 鼓舞するように俺は拳を突き出す。


「やってやれッ主人公ッ!!」


 落ちていく俺とは入れ違いに、幾何学模様で構成された翼を備えたドライズがイーヴィルに囚われたユウの元へと羽ばたいていく!

「ユウさん……! 今助けるよ!!」


 ドライズの翼の正体はレンの魔法陣とリーゼの風魔法を組み合わせた即席の飛翔魔法だ。

 即席故に調整が甘い点を、レン・リーゼ・シャルネさんの三人がかりで制御している。

 そして、ドライズはユウさんが囚われている巨人の胴体部分に到達した。


 胴体からはユウさんを拘束している無数の骨張った腕と同じ物が更に生えてきて、わなわなと抵抗するように無造作に振るわれる。しかし、リーチも威力も足りていない無駄な足掻きだ。

 ドライズは難なく腕の妨害を回避して、大きく剣を振り上げた。


「これで、終わりだああッ!!」

 エンチャントにより〝破滅の光〟が纏われた剣を振り下ろし、ユウさんを拘束していた腕を切り裂いた。

 光の軌跡が切り口に残り続ける。

 ユウさんを拘束する腕が新たに生えようとするも、その滞留する光に触れると蒸発するように黒い霧となって、再生が妨害されてしまう。


 やがて、支えがなくなったユウさんの身体が零れる様に落下していく。

 ドライズはすぐに軌道を変えて、ユウの落ちる先へと回りこみしっかりと受け止めた。

「うぅ……ドライズ、君……?」

「ユウさん、もう少し待ってね」

 ドライズはそのままゆっくりと優しく着地すると地面に優しくユウを寝せた。

 その後改めてイーヴィルの方を向くと、イーヴィルは苦しむように呻いていて、あれ程巨大だったイーヴィルの身体が黒い魔力を放出させて凄まじい勢いで小さくなっていく。

 ユウを引き離した事で何らかの影響が出たらしい。


 巨人の肉体が完全になくなって元の小鬼型のイーヴィルが二体、力尽きたようにぐったりした姿で現れる。

「嬉しい誤算よっ! ドライズ、トドメを差しなさい!!」

 リーゼの指示に従って、ドライズは細剣を振り下ろした。

 切り裂かれたイーヴィルは、黒い霧の様になって霧散する。


「……ふぅ。なんとかなった、かな」

 ドライズが漸く、といった様子で一息吐くと。

 今、まさに限界が来たと言わんばかりに。


 キィィンと高い音を立てて、ドライズが使って居た細剣の刀身がバラバラに砕け散ったのであった。

  

 余談だが。

 羽ばたいていくドライズと入れ違いになって落下し、一足先に地上に到達していた俺は。


「はい、ファルマ君もお疲れ様です」

 例にもよってマナトにしっかり受け止められていた。


 ……これまた例にもよって、お姫様抱っこの形で。


「…………お前、今日だけで何人お姫様抱っこしてんだ? イケメンかよ」

 ちょっと恥ずかしくてそんな冗談を言ってみたがマナトは、

「皆さんご無事で何よりでした」

 と、いつもの優しい笑顔を絶やさなかったとさ。   


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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルにあるように主人公になれない(むしろ主人公クラスの仲間にかこまれながら)主人公がそれでも懸命に仲間たちと一緒に頑張ったり、絆を結んだりする姿がなんとも微笑ましく、胸が熱くなりました…
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