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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
幕間 戻って来た一時の日常

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120話 非日常を楽しもうぜ

「主人公!? 勇者!? どういう事かな!?」

 ウィンドウを覗き込み、驚くアリスに伝える。


「折角ゲームなんだから、普段と前衛後衛入れ替えた方が面白いと思ってさ。だから俺は僧侶」

 俺は手にした杖を見下ろす。


 VRだから重量は無いが普段と違う得物に少しわくわく。

 そしてゲーム開始を告げるファンファーレと共にダンジョンを進めと表示され。


「さ、非日常を楽しもうぜ」


 いつもの調子でアリスの前に出たところ。

「って僧侶が前にでちゃダメなんじゃないかな!?」

 と慌ててアリスが追い越していって、頭を掻いた。


「おっとっと。自分で設定したのにやっぱ癖になってるな。気をつけないと」

 アリスより前に出ないように、斜め後ろを歩く事数歩。


 突如、怪しげなBGMが猛々しいBGMへと切り替わる!

「えっ、何!? 何かな!?」

「エンカウントだ! ほら、剣を抜いて!」

 レンガ造りの通路を阻む様に現われる人骨型の敵とスライム型の敵を指さしてアリスを急かす。


「抜くって、あ、このボタンで――出来た! 私剣なんて使ったことないけどね!?」

「大丈夫大丈夫、所詮ゲームだし適当に振ってればダメージ入るよ」

「こ、こうかな? えぇいっ!」

 アリスがぎこちない動きでスライムに剣を振り下ろすと、エフェクトと効果音が発生しダメージが表示された。


「やったね! ちゃんと攻撃出来てる!」

 手応えを感じたのかアリスはそのままザックザックとスライムを斬り付け。


「アリスー! 後ろ後ろ!!」

「え? ――わわっなんかブルブルってした!?」

「スケルトンに殴られてるんだよ! ヒール!」

「あ、ありがとね!」

「とりあえず移動して! 挟まれてるから!」

「わかった!」


 アリスがスライムとスケルトンの間を抜けて、陣形を立て直す。


「どうしよう、ハル君」

「こういう時は各個撃破が基本! 折角最初に殴ったんだ、まずはスライムを倒そう!」

「了解!」

 アリスは頷き、改めてスライムへと斬りかかり。


「今度は挟まれないようにな!」

「うんっ大丈夫ッ!」

 慣れてきたのか、スケルトンの攻撃はきっちり身躱して、


「まずは、トドメッ」

 スライムが両断され、消えていく。勢いそのままにスケルトンにも攻撃!


「てぇい!」

 一際派手なエフェクトと効果音が鳴り、数倍のダメージが表示された。


「ナイス! クリティカルだ!」

「こっちも~おしまいっ!!」

 アリスは反撃より先に二の太刀を繰り出してスケルトンも撃破した。


「はーっ、はーっ……こ、これで良かったのかな?」

 戦闘勝利のBGMが鳴る。


「うん、良いと思うよ」

「前衛さんってこんな感じなんだね……緊張したぁ」

 ぐっと伸びをしてリラックスするアリスだが、


「和んでる所悪いんだけどこれ普通のゲームじゃ無くてアトラクションだからさ」

「うん? それがどうかしたのかな?」

「いや、多分こっちじゃなくて運営のペースで展開が進むと思うから――」

 と、説明しようとした言葉の途中でBGMが戦闘用に切り替わった。


「えー!? エンカウント!? 歩いてないんだけどね!!?」

「まぁそこは大人の事情ってヤツで。次いってみよう!」

「大人の事情かぁ世知辛いねぇ……」

 アリスが剣を構え直すと、今度は無数のスライムが群れを成し、俺達を囲む様に現われた。


「って多過ぎなんだけど!?」

「しかもこの状態からスタートって……んー俺は回復魔法しかリストに無いしな。アリス、なんか魔法使え無いか? 右手のボタンでリストが確認出来るから」

「え? えーと……あった! って、サンダーストーム? なんで雷属性の第四階級基礎魔法なのかな?」

「勇者は雷を操るもんなんだよ」


 理由は不明だが勇者にはそう言うイメージがある。


「そう、なんだ?」

「それよりさっきからずっとヒールしてるんだけど、早く使ってくれないと流石に回復が間に合わなくなるぞ」

 アリスが魔法を確認している時からずっと、スライムの群れは俺達を攻撃していた。併せて俺もヒールを連打している。


「ああっそうだった囲まれてるんだったね、攻撃されてもちょっとした振動しか感じ無いから忘れてたよ!」


 アリスは剣を天井に掲げて、

「えっと、このままボタンを押せば良いのかな? えいっサンダーストーム!!」


 彼女が入力すると剣の切っ先から黄色い稲妻が迸りスライムの群れを焼き払った。


「……ダンジョンの中っていう設定のせいなんだろうけど、第四階級にしちゃしょぼい演出だったな」

「サンダーストームっていうか第二階級のサンダーみたいだったね。でも、普段使え無い属性の魔法が使えるのちょっと楽しい!」

「楽しんで貰えてるなら何より。……正直、いくらアトラクション用の簡易ゲームだからってヒールしか使え無い僧侶はどうなんだって思うけどな」

 ゲーマー的にはもっとこう、『身体強化魔法エンハンス』とか所謂バフ系魔法くらい欲しかった。


 そしてまたも勝手に始まる戦闘用BGM。

「またエンカウントしちゃった!? 動いて無いのにぃ~!」

「まーまー。勝手は判ったろ? この調子で攻略しちゃおうぜ」

 俺達はその後十数分、VRゲームを楽しんだ。


     ◇  ◇  ◇

 

「お疲れ様でしたー」

 ゴーグルを外して、スタッフさんに手渡す。


「いやぁ、焦ったな。流石VR」

 俺はアリスから目を逸らしつつ言う。


「焦ったのは私だからね!?」


 『第四雷撃魔法サンダー・ストーム』の演出がショボかったので完全に油断していたのだが、流石アトラクションの一つにしているだけあってボス戦は演出が派手だった。

 お陰で臨場感が半端なく、いつもの調子でアリスを攻撃から庇い、先に倒れてしまったのだ。


「最後アリスが上手い事必殺技を使ってなかったら負けてたな」

「操作方法判らなくてすっごく大変だったけどね!?」

 最終的に雷を剣に宿したアリスの斬撃がボスを倒して、無事アトラクションは終了した。


「でも、どうだったかな。勝手に設定しちゃったけど、楽しめたかい?」

「それは――勿論、楽しかった。ハル君の言うとおり、いつもと違う戦い方って新鮮で面白かったね」

「そっか。ありがとう、わがままに付き合ってくれて」

「わたしこそ、ありがとう。普段ハル君がどんな目線で戦ってるのかちょこっとだけ判って、嬉しかった」

 こうして無事、VRゲームで非日常作戦は成功した。

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