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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
幕間 戻って来た一時の日常

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114話 ……デートとか、行かないの?

レン視点

 そしてお昼休み。私はシジアンとアリシアを私の魔法陣研究会の部室に招いていた。

 ファルマの方は授業中ずっと居眠りしていて、それでも先生に怒られる事もなく。昼休みの今もきっとどこかで眠っているだろう。


「……何がどうなってそうなった?」

 私はさっさと昼食のおにぎりを食べ終わってアリシアに問いかけた。


 対して。


「えへへぇハル君がね、ハル君がねぇ~〝いつまでも側に居たい〟って言ってくれたんだぁ。それでね、それでね!」


 アリシアは頬を染め蕩けきっただらしない表情で幸せそうに続ける。


「『君の想いに応えたい。君を幸せにしてあげたい』って言ってくれたんだよね! もう私、嬉しくて嬉しくて夢じゃないのかなって!」

 昨日のあの絶望的な雰囲気は何処へ行ったんだと言わんばかりに怒濤の惚気が飛んで来る。別に惚気自体は気にしないけど、ギャップというか事態の急変ぶりに驚きを隠せない。


「ご心配なさらずとも、全て現実ですから」

 と、シジアンがカロリーバーを囓りビタミンジュースを飲みながら、妙に確信を持って言う。


「って部長さんなんでハル君のディストピア飯になってるのかな!?」

 アリシアがパッと現実に戻って来て驚くが、


「先輩にとっての一大事に自分の事へあまり時間をかけたくなかったですから。最初に見たときは驚きましたが、いざ試してみると食事の時間も短く栄養もバランス良く取れて悪くないです、これ」

「ぶ、部長さんが良いならそれでいいけどね……」


 話が全然前に進まない……。


 ともあれ、何があったかは判らないけれどアリシアはなんとか大逆転勝利を掴み取った事だけは判った。あの頑固なファルマをよく口説き落としたものだと素直に驚く。


 それで。結局相談に乗る前に問題が解決してしまって私としては少々消化不良だ。折角良い方に話が向かっているのなら、そちらの方面で手助けできないだろうかと思う。


「……で、これからどうする?」

 私の問いかけにアリシアはキョトンとした。


「へ? これから?」

 どうやら、今の幸せで胸がいっぱいな様子でそっから先の事を考えて居ないらしい。年頃の男女が付き合うとなればやる事は色々あるだろうに。


 例えば――


「……デートとか、行かないの?」


 その言葉を投げかけると、アリシアは桜色に染めていた頬をボッと一気に真っ赤に変えて。

「そ、そそそ、そんな、付き合っていきなりデートなんて……! ちょっとがっつき過ぎじゃ無いかな!? ハル君に引かれちゃうかもしれないよね!?」

 とあわあわしながら目を泳がせるが。


「いえ、普通だったら個人のやり方にもよりますけれど、付き合う前からデートなどを通してお互いを知って関係性を進めるモノだと思いますが」

 とシジアンが補足する。


 その通り、デートくらい付き合う前から繰り返すアベックだっている。というかデートを繰り返してから告白とかの定番ではなかろうか。以前からあれだけいちゃいちゃいていたのだから今更デート一つに恥じ入らなくても良いものを、と色々感情が頭に浮かんでくるが言葉に出来ない。


「……気にしすぎ」

 その一言が今の私の限界だった。


「そうかなぁ……?」

 真っ赤な顔の口元を手で隠し、目線を斜め下にむけるアリシア。本心では行きたくて仕方が無いのだろう。


 そして、恥ずかしそうに、


「じゃ、じゃあ例えばなんだけどね……初デートってどういう所がオススメかな?」


 と、聞いてきた。漸く、力になれそうだ。


「……難易度順に、買い物、映画館、遊園地、温泉、等」


「後半の難易度高すぎないかな!? 温泉なんて最早大人のデートだよね!? っていうか旅行だよね!?」


 戸惑うアリシアに補足する。

「……ファルマの財力ならイケる」

「ハル君そんなにお金持ちなの!? だとしても奢って貰うには申し訳ないし折半するには私の方が辛いよ!!」

 ファルマはかなり懐が潤っている。


 大金持ちのルクシエラさんの弟子で、何かにつけてルクシエラさんからお小遣いという名の札束を一方的に渡されているからだ。明らかに学生が貰うような金額じゃない枚数を突きつけられて困っている様子を何度見た事か。


「難易度的にはお買い物が良いかな……」

 アリシアはそう言うが、そこで待ったをかけたのはシジアンだった。


「買い物は辞めておきましょう。よく言われるお話ですが男性と女性では買い物への価値観が違います。男性はウィンドウショッピングが苦手な方が多いです。そして先輩は間違い無くそちらに分類されます」

 そう言えばそんな話を聞いたことがあるような。男子は、買う物が定まらずにお店に向かう事自体に疑問を抱く人も居るとかなんとか。


「先輩の事ですからアリシアさんに合わせて不平不満などは零さないと思われますが本人には退屈をさせてしまうでしょう。それは本意じゃありませんよね?」

「う、うん。出来れば一緒に楽しんで欲しいね……」

 と、アリシアは言う。そこで私はこれという答えを選び出した。


「……じゃあ遊園地で」


「あれっ!? 一段階難易度飛ばなかったかな!? 映画館は!?」

 アリシアは驚いているがシジアンの方は納得している様子だ。


「映画の場合観るモノに困るでしょう。先輩は主にゲームや漫画、アニメが好みなのでアニメ映画なら楽しめると思いますがその場合アリシアさんが楽しめないでしょう?」

「うっ……確かにハル君が好きなアニメとか漫画とかゲームは判らない……昔はハル君と良く交換したりしてたけどハル君と交流が途絶えてからぷっつりと、かな……」


 と、一瞬憂いを見せたが、パッっと表情を変えて、


「で、でも! 世間で流行ってるのは押さえてるよっ! それならどうかな?」

「先輩は逆に流行モノは流行が終わってから手を出すタイプですが」

 シジアンのその言葉に私は思わず、


「……高二病めんどくさ」

 と漏らしていた。今回は自分の感情を上手く言葉に出来て満足だ。


「あうっ……」

 アリシアはデコピンを喰らった様に仰け反った。


「遊園地ならお互い楽しめるでしょうし、費用的負担もそこまでではありません。悪く無いと思いますが?」

「な、難易度高いけどね……」

 アリシアは尻込みするが、私は思う。今まで、もう学年内ではすでに付き合ってると認識されてるくらい猛烈アタックしてるんだから今更引き下がってどうする、と。


「……いけるいける」

 そう言って私はずずーっとお茶を啜った。


「先輩もきっとお喜びになられると思いますから、是非提案してみましょう」

 シジアンがそう言って嬉しそうにアリシアを応援していた。


 そう言えば、シジアンもファルマの事大好きなのが見え見えなんだけど恋敵の応援するんだな、と今更疑問に思う。

 

 頭の中に、とある光景が浮かぶ。


 なんてことは無い廊下を歩くファルマに、べったりくっついてその後ろをちょこちょこついて行くシジアンの姿。それが少しずつ、後ろから離れていって、やがて横に並び立ち、笑い合う二人の姿。


 そんな光景が脳裏に映り込み、疑問を感じた。

 ――知らない記憶だ。でも、違和感がない。なんだったんだろ今の。


 自分は男子同士の絡みを妄想したりするが男女の恋愛はこうやって首を突っ込んだりはすれど妄想まではしない。


 アリシアの惚気に当てられて妄想癖が変な方向に傾いたか?

 私はもう一度お茶を啜って、とりあえずアリシアに助言が出来て多少罪滅ぼしできたのではないのかな、と満足した。


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