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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
第2部 最弱の八天導師

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??話5 間違い無い。今まで見てきた魔法陣の中で、世界一すごい魔法陣だ……。

 その日、僕は会議室に呼び出されていた。

 円卓の中央正面にはティアロ様が、そして向かい合うように僕と、その横にレンさんが座っている。


「お主達に初仕事を命じる。二人で協力して対応して欲しい」

 ……。


 カンベンシテホシインデスガ。

 なんて、初仕事そうそうストライキとか出来ない。


 でも、ホントに、マジで勘弁して欲しい。同年代の女子とは6年くらい喋って無いんだって。別に女性恐怖症って訳じゃ無いけどさ、その普通に怖いんだよ! 自分で言っててなんか矛盾してる気がする。


 僕は笑顔を引きつらせたまま、話を聞く。

「レンの描く魔法陣『紋章』は一般的に普及している魔法陣とは規格が異なる独自の技術じゃ。そのままではレンのみにしか運用できん」

 独自規格の魔法陣!? 


 魔法陣は詠唱と同じで、算術で例えるなら〝計算機〟とか〝公式〟みたいなモノ。それを自分で作ってるなんて凄すぎる。


「今回はその『紋章』をマジックアイテムに組み込む実験を行って欲しい」

「ああ、なるほど……」

 僕が得意な魔法はマジッククラフト。魔力や魔法を込めた道具を作る魔法だ。


 消費する事で詠唱・魔法陣などの課程を省略して魔法を発動させる触媒としてのアイテムや、単純に魔法的加護が付与されたお守りとか、後は魔法陣を転写しておく事で描かずにいつでもその魔法陣を発動できるようにするアイテムなどが作れる。


「レンの『紋章』をマジックアイテム化できれば、非常に優れた効果をもつレンの『紋章』を八天導師内で共有できる。それは大きな戦力になるであろう。逆に、マジックアイテム化が困難な場合はそれはそれでよい。レンに振る仕事内容の参考になる」

 必ずしも成功を目指す事だけが実験では無い。失敗という結果も、何らかの糧になる。


「期日は、そうじゃな。新しい試みじゃ。余裕を持って一ヶ月としよう。では、頼むぞ」

「承りました!」

『……承知』


 と、承認したはいいものの……。


 会議室を出て、レンさんと並んで歩く。常識的に考えて、すぐにでも打ち合わせを始めるべきなんだろうけど……。


 ど、どどど、どどど、どうする!? 僕から提案するべきかな!? 無理だよ! 話しかけるの怖いよっ! ていうかレンさん無表情だからもっとハードル高いよ!


 なんて心の叫びをかみ潰しながら廊下を歩く事、数分。

 不意にレンさんが顔をこちらに向ける。

 ひぇっと悲鳴を上げそうになるのをぐっと堪えて。


 恐らく何か続くであろう言葉を待った。が、レンさんは歩きながらこちらをじぃっと見つめるばかりで何も喋らない。


 この人は何を考えて居るんだろうか……。


 いや、そうだった。レンさんは声が出せない。発している合成言語は決して簡単な魔法じゃないらしいし、レンさんにとって会話は大変なものなんだ。


 ――……僕から、切り込むべきだ。気付くのが遅すぎる。


「えっと、打ち合わせ、しましょうか?」

 声が震えているのを必死にごまかして作り笑いを浮かべてみた。レンさんは何も答えず、ただこくりと一つ頷く。


「えっと、今すぐ用意できる『紋章』のサンプルってありますか?」

 こくり、とレンさんはまた一つ頷いた。


「じゃあ、それを持って工房に来て下さい。そこで簡単に予定を決めましょう。あ、工房の場所は判りますか?」

 ふるふる、とレンさんは顔を横に振った。


「えっと、この建物の一階の――」


 工房の場所を説明し、別れる。

 レンさんが廊下を曲がってその姿が見えなくなった後。

 僕はへにゃり、とその場に崩れ落ちた。


「き、緊張したぁ……」

 ただ、会話――いや会話してないな、僕が一方的に話かけてただけだ。けど、それだけでこんなに緊張するとは……童貞かよ。いや童貞だけど。


 と、こんなところでへにゃってる場合じゃない。僕も必要な道具を持って工房に行かないと。

 工房には僕が先に着いた。12畳くらいのスペースに大きな作業台が一つ。あとは材料や工具が入った棚が並ぶ。


 暫くして、レンさんがやってくる。

 そして作業台に1枚の紙を広げた。


「っ」


 僕は、息を呑む。


 目の前に提示された魔法陣は――言葉を失う程に美しかった。


 一般的な魔法陣の三倍は濃密に記号と線が並べられている。僕も魔法使いの端くれだ、普通の魔法陣ならちらっと見ればどんな魔法の魔法陣なのか位は判る。でも、レンさんの魔法陣は一目みただけではそれが何を意味した記号なのか、式なのか、全く判らない。


 なのに、整合性がとれている。究極の機能美と造形美。


 間違い無い。今まで見てきた魔法陣の中で、世界一すごい魔法陣だ……。


 レンさんもまた、特別な魔法使いであるという事実が目の前に突きつけられ胸が苦しくなる。思わず無言で呆けてしまった僕に戸惑うように、レンさんが首を傾げた。


「ご、ごめん。あんまりにも凄い魔法陣だったから、つい見蕩れちゃった」

 僕の反応に、無表情なレンさんの口の端が僅かに伸びた気がした。


「これをマジックアイテムに、か――」

 僕は頭を仕事モードにして考察する。目測で3倍濃密な魔法陣。アイテムへの魔法陣の転写は縮小して行われるけど、この密度だと倍率によっては線と式が潰れかねない。


 かといってこの大きさのままアイテムにしてもアイテムとしての利便性は損なわれてしまう。と、いうかそもそもこんなに凄い魔法陣を僕なんかが転写できるのかあやしい。


 ……けど、まずはやってみるしかない。

 僕の心の奥底で密かに炎が灯る。


「とりあえず一週間頂戴。それで、試作品を作ってみる」

 レンさんはこくり、と頷いた。


「その間レンさんはできるだけ色んなパターンの魔法陣のサンプルを用意して貰えるかな。攻撃系、支援系、生活系、高度なモノ、簡単なモノ、色々。ティアロ様の意向を考えれば、レンさんの『紋章』のウチ、アイテム化できるモノと出来ないモノの区別はしっかり報告するべきだと思うから」

『……判った』

 頷きつつ、レンさんは言葉を発した。


 今までは頷くだけだったのに、どうして急に返事してくれたんだろう? まぁ、細かいことは良いか。僕女心とかよくわかんないし。


 そして一週間後――


 テーブルの上には試作品の腕輪が一個、寂しげに置いてある。

 向かいに立つレンさんはその試作品へ怪訝な眼差しを下していた。


 それもそうだろう。これは失敗作なのだから。


「その、腕輪のサイズならぎりぎり転写しても魔法陣が潰れないかなと思って作ってみたんだけど――全然だめでした……。うんともすんとも言わない……」

 完成した腕輪を装着して魔力を流してみたがなんの効果も現れなかった。

 この一週間レンさんから貰った紋章とにらめっこして試行錯誤を繰り返したのにだ。


「正直レンさんの紋章を100%正確に転写出来たとは思って無いよ。でも、流石に一切反応が無いのは想定外だったな……ごめんね」


 魔法陣の記載を間違えた場合、魔法効果が正しく現れない事が想定される。例えば前に炎を放つ魔法陣なら炎は出るが前では無く四方八方に火が飛び散る、等だ。


 逆に言えばある程度魔法陣のコピーに成功していれば仮に失敗していたとしても何らかの動作は示す筈なのである。なのに何も起こらないと言うことは、僕はレンさんの紋章を一ミリも再現できなかったという事に他ならない。


 自分の無能さに死にたくなっていると、レンさんは腕輪に手を翳した。


 すると、ぶわんと腕輪の上部に長方形の光が板のように展開する。長方形の中には僕が転写したレンさんの紋章が映っていた。これはマジックアイテムに刻みこんだ魔法陣を確認する魔法である。


 レンさんは僕が転写した紋章を、眉間に皺を寄せてまじまじと見つめて。


 ふぅ、と一息吐いた後。

 その無表情な瞳を僕に向けて言った。


『……60点』

「微妙ッ!!? ……って、え、60? そんなにくれるの?」

 何も効果が発動しないのだから僕としては0点のデキだと考えて居ただけに驚いた。


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