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【第二部完結】俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~  作者: 岩重八八十(いわじゅう はやと)
第2部 最弱の八天導師

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81話 第二の切り札

「『ブラックホール・バイト』ォォッ!!」

 あらゆるモノを飲み込む黒い球体を咀嚼するようにキータの爪が交差する。

「どわっ」

 引力に取り込まれそうになったオレは咄嗟に自分の目の前を爆破して、反動を使って距離を取り何を逃れた。


「くっそ、当てが外れた!」

 キータが口にしている物量は明らかにキータの身体に収まる量では無い。従って、ブラックホール・バイトやキータが食している物体は亜空間あるいは異空間のような別口に取り込まれ蓄積していると考えた。


 そこで『破魔のルクスエクラ』を発動させた『フェア・クリスタル』を敢えて食べさせて、様子を伺っていたのだが。一向に効果が現れる様子が無い。食べさせたあの一個はもう無駄になったと考えた方が良いだろう。


「オ腹が空いたンだよォオッ!!」

 キータの爪が振り上げられる。

「っ!」

 咄嗟に槍を横に構えて防ぐが、


「アアアアッ!!」

 咆哮と共に槍にかかる重圧がドンドン増していく。

 やがて、ミシッと金属が軋む音が聞こえた。


 ――やられるっ!

 槍ごと爪に切り裂かれる光景を予感した俺は咄嗟に槍を爆破する!


「『ヘビィ・ブラスター』!!」

「がッ!?」

 槍の爆風でキータは弾き飛ばされ、俺も軽く吹き飛ばされた。

 受け身を取ってすぐに立ち上がる。


「はぁ……はぁ……!」

 息が上がる。キータの攻撃を見切ってなんとか致命傷を避けるのが精一杯だ。

 その回避方法も結局自爆が殆どでダメージは蓄積していく。

 このままでは結局じり貧になる事は明らかだ。


「……切り札、抱え落ちするのが一番みっともねぇよな」

 出来れば、もう少し温存しておきたかった。

『破魔のルクスエクラ』に次ぐ、第二の切り札。


 この魔導には時間制限がある。だから、ここぞという場面で使用するべきだと思って温存していたが。このままでは結局何も出来ずにやられてしまう。

 こうなったら一か八か、ここで全力をぶつけ、一挙にキータとハルカを拘束する!!


「ふぅ……」

 目を閉じ俺は呼吸を整え、


「いくぞキータ!!」

 爆発させて失った槍を改めてマテリアライズし、キータに差し向けて。

 その魔導を発動する!


「『神威』!!」


 金属質の帯のようなモノがマテリアライズされ、俺の四肢に絡みつく。異質な鎧、あるいは衣と形容できるこの魔導はナギが持つ固有魔導『サクリファイスの刻印』を改造した身体能力向上魔法!


「狙うは、そこだっ!!」

 槍を振り上げ強く踏み込むと、驚くほど軽やかに身体が動く。

 四肢に纏う金属の帯が仮想の筋肉として運動を補助してくれる。


「『リア・スラスター』!」

 ハルベルトの背から炎が噴出する。

 『神威』で強化された腕力と、炎の推進力を伴ったハルベルトが、キータの爪に叩き付けられる!


「グッ!?」

 あまりの重圧に、ひるむキータ。攻撃するチャンスは今しか無い!

「魔道士って言うには脳筋過ぎるけどっ」

 俺はハルベルトを何度も、何度もキータの爪に叩き付ける!


「まずは厄介なそいつを、無力化させてもらうっ!!」

 ピシッと爪に走る亀裂が広がり、破片が散る。


「ぶっ壊れろぉッ!!」

 トドメと言わんばかりに、渾身の力を込めてハルベルトを叩き付け。

 バキンと心地よい音を立てて、キータの爪が一つ、砕け散った。


「グるぅッ、ガァッ!!」

 爪に痛覚などは無いのだろう。大した動揺は見せず、反対の手に備わる爪を俺に差し向けるキータ。


「焦らなくても――」

 俺は軽く跳躍してその斬撃を躱し、


「そんな似合わなねぇモン、残りも全部叩き割ってやるよッ!!」

 空中でハルベルトの背部から炎を噴出させる!


 すると俺の身体は槍に引っ張られて横回転し、遠心力が槍に籠もる。

 何周か回って十分に力が溜まったところで、ダメ押しと言わんばかりに一段の強く炎を噴出させて、強烈な一撃を振り下ろした。


「グァアアァッ!!」

 キータの爪がはじけ飛ぶ。だが同時に、ピシリと俺が纏う『神威』にも亀裂が走った。


 ――まだだっ、手を休めるな!! 『神威』が生きている間に、爪は全部破壊する!


 『ブラックホール・バイト』は見たところ、『第三暗黒魔法ブラック・ホール』で周囲の物体を引き寄せた所を爪で切り裂き、分解した対象を喰らう魔法だ。爪さえ壊せば後半の動作を封じられる。


 元々、第三階級の基礎魔法なんて一年生であるキータの許容範囲を大きく超えた魔法だ。前半動作の『第三暗黒魔法ブラック・ホール』の規模は小さく、それ単体ではそこまで脅威になりえない。


「これで、最後ッ!!」

 連続攻撃と締めと言わんばかりに、ぎゅっと力を込めて振り下ろした刃がキータの持つ最後の爪を粉砕する。


「悪い、許せよッキータ!!」

 更にオマケに槍を大きく横に薙いで、刃の無い棒状の部分でキータの腹をとらえ。

 打撃によって大きく吹き飛ばした。


「げ、ぁっ……!!」

 遠くの樹木に背中を打ち付け、がくりとキータがうなだれると同時に、『神威』もはじけ飛び役目を終える。


 ――やっぱ短ぇ! まだまだ改良の余地ありまくりだ……!

 できればハルカとの戦闘に持ち越したかったが、贅沢は言えない。


「次はお前だ、ハルカ!!」

 改めて、謎の力でふわふわと宙に浮かび昏々と眠っていたハルカの方へ視線を向けた。

 が……。


 そこに居た筈の、ハルカの姿は無かった。

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