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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た  作者: 椎家 友妻
第三話 ファミレス『ニューハーフ』
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2 これは自転車の二人乗りが禁止される前の物語

 「変な事したら承知しないからね」

 自転車で(しばら)く走った頃、後ろの美鈴がそう言って話しかけてきた。

これは別に俺と積極的にコミュニケーションを取りたいとかではなく、嫌いな相手とはいえ、この沈黙(ちんもく)状態(じょうたい)に間が持たなくなったと解釈するのが妥当(だとう)だろう。

なので俺は、(いた)って()()なく答えた。

 「この状態でどうやってそんな事するんだよ?」

 「今だけじゃなくて、この後乗るバスの中でもよ」

 「しねぇよ」

 「どうだか。お風呂場での事もあるし」

 「もう弁解する気力もねぇよ」

 「(まぎ)れもない事実じゃないの」

 「そういえば、その時ひとつ気になった事があるんだけどさ」

 話のついでに、俺はさり気なく()いてみる事にした。

昨日の美鈴の『涙』の訳。

すると美鈴は、そんな俺を露骨(ろこつ)に警戒する口調で言った。

 「何よ?寝顔がブサイクだったとでも言いたいの?」

 「今度写真に()って見せてやろうか?」

 「馬鹿!」

 バチコン!

 「痛ぁっ⁉殴るなよ!冗談だよ!そうじゃなくて、お前あの時泣いてただろ?」

 「え?あの時って、どの時よ?」

 「だから、おとといバスに乗ってた時だよ。お前は居眠りしながら泣いてたんだよ」

 「え?私、泣いてた?」

 「おう、それで俺は、あまりにも涙が流れ出てアレだから、ちょっとハンカチで()いてやろうと思って、別にやましい気持ちなんかこれっぽちもない清らかな心で、お前に近づいた訳だよ。

そしたらいきなりバスが大きく()れてだな、俺はバランスを(くず)した結果、あんな事になったんだよ・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・あの、何か言ってくれよ。黙られる方がむしろ怖いんだけど」

 「──────ないの・・・・・・」

 「はい?何がないって?」

 「何でも、ないの。あの涙は、別に・・・・・・」

 「涙?ああ、そっち?そ、そうか。まあ、何でもないならいいよ。

うん、誰だって寝ながら涙を流す事も、あるだろうし」

 「うん・・・・・・」

 何か、微妙(びみょう)に話が食い違ってる気がするけど、俺の言い分をとがめるつもりもないみたいだし、それはそれで良しとしよう。

 そうこうしているうちに、御撫町のバス停が段々と近づいてきた。

それから美鈴は、バスに乗って坂川町のバイト先に着くまで、一言も(しゃべ)らなかった。

 何なんでしょうね?一体。



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