2 幼なじみの乱入
「こらぁああああっ!」
耳にキーンと響くカン高い声が、部屋の入口から飛んできた。
その声の拍子で琴葉は反射的に俺から身を離し、俺も上半身を起こした。
そして声のした方に顔を向けるとそこに、現在両親の都合で同じ屋根の下に住んでいる、
同い年で幼なじみの由奈が、眉をつり上げて立っていた。
「朝から何してるのよ二人とも!」
怒りの声を上げる由奈。
こいつは顔は可愛いのに、怒るとやたらおっかない。
その怖さを重々(じゅうじゅう)知っている琴葉は気まずそうに笑い、
「いえ、あの、私は、聖吾さんを起こしに来ていただけですよ?オ、オホホホ~」
と言いながら、そそくさと部屋を出て行った。
「マッタク、朝っぱらから何やってんだか」
そう言ってギロリと俺を睨む由奈。
チクチクとしたその視線が痛い。
「いやあ、あははは・・・・・・」
俺はとりあえず笑うしかなかった。
すると由奈はプイッとそっぽを向き、一転して消え入る様な口調でこう言った。
「ああいう事なら、私に言えばしてあげるのに・・・・・・」
「え?ああいう事って、何?」
その言葉の意味がもうひとつ分からなかった俺は、キョトンとして由奈に訊いた。
すると由奈はまた激しい口調に戻って、
「うっさいわね!何でもないわよ!とにかくさっさと起きなさいよね!」
と言い放ち、さっさと部屋から出て行った。
あいつは時々訳の分かんねぇ事で怒るんだよなぁ。
と思いながらベッドから下りると、由奈が戻ってきて入口から顔だけ出し、
「あと、エリムちゃんも起こしてよね!あの子はあんたが行かないと絶対に起きないんだから!」
と言い、俺が「へ~い」と返事をすると、またさっさと行ってしまった。
朝から元気な奴だ。