表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/72

1 メイドさんでお目覚め

 「──────さん」

 ・・・・・・。

 「──────きて下さい」

 ・・・・・・ん・・・・・・。

 「──────吾さん」

 んん・・・・・・。

 「(せい)()さん、起きてください」

「ん・・・・・・」

 柔らかく、聞き心地の良い声に(うなが)され、俺は目を覚ました。

 もうろうとした頭でゆっくりと目を開けると、(ほが)らかな笑みを浮かべたメイド姿の女性がそこに居た。

 「聖吾さん、早く起きないと、学校に遅刻してしまいますよ?」

 聖吾は俺の名前。

苗字(みょうじ)は稲橋。稲橋(いなはし)(せい)()

この春から隣町の高校に通う事になった十五歳。

そんでもって、俺を優しい笑顔で起こしてくれたのが、この家で働くメイドの(こと)()

気立てが良くて美人で働き者という、三拍子(さんひょうし)(そろ)った女性だ。

 俺より若干(じゃっかん)年上(あえて具体的な年齢は(しる)さないが)の彼女に、俺は(ひそ)かに淡い恋心を抱いていた。

 ああ、出来ればずっとこのまま、琴葉の笑顔を見ながらベッドに横たわっていたい・・・・・・。

そんな願いが、俺をベッドから起こす事を(はば)む。

 「もぉ、いい加減に起きなきゃダメですよ?」

 なかなか起きようとしない俺に、琴葉は怒った様に(ほお)(ふく)らませる。

その怒った顔もまた素敵(ステキ)だ。

そんな事を思っていると琴葉は、おもむろにその白く細い両手を俺の頬にそっとあて、

少し口を(とが)らせてこう言った。

 「早く起きて下さらないと、オシオキしちゃいますよ?」

 「オシオキって、キスでもしてくれるの?」

 冗談めかして言う俺。

まあそんな事はありえない訳で、どうせこの両手で頬をつねられたりするんだろうけど。

とか思っていると、琴葉はキュッと(くちびる)(むす)んで目を閉じ、ゆっくりとその美しい顔を、俺の顔へと近づけてきた。

 「えええっ⁉」

 驚きの声を上げたのは勿論(もちろん)俺。

しかしそんな俺に構わず、琴葉の顔はどんどん俺の方に近づいてくる!

このままでは、俺と琴葉の(くちびる)が、ムチュっと触れ合ってしまうじゃないか!

起きて早々何だこのおいしい展開は⁉

でもこういう展開は大歓迎だ!

これだったら毎朝寝坊してもいいくらいだぞ。

 そんな悪だくみをしている間にも、琴葉の(くちびる)はどんどん迫る。

 そして俺と琴葉の唇の距離が三センチ、二センチ、一センチ、と、迫った、その時だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ