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彼女は星を食べた

作者: 黒宮杳騏

たまの「星を食べる」の個人的解釈です。

歌詞そのままだと転載になってしまいそうな箇所は改変し、更に黒宮個人のイメージで書いたものなので、原曲のイメージを壊されたくない!という方は読まないで下さい。

ぼくは自分の覚悟を確かめるように、ズボンのポケットに突っ込んだ手を握りしめた。

もう前にしか進めない事は分かっているから、ぼくは落ち着きのない鼓動に冷たく言い聞かせる。

目の前にいる彼女は、ずいぶん前からぼくを見ていないのだと。

今だってほら、あちらこちらへふらふらと焦点が揺れて、ころころと目の色も声も変わるから、ぼくの心はばらばらに散った彼女の欠片だらけで足の踏み場もない。


ふたりで夢の中にいた時は本当に幸せだったのに、ひとりきりで歩いた夜道で、ふいに見上げた月がきらいな人の面影をまとってにやりと笑ったから、ぼくはうつむいて歯ぎしりをするように新しいガムを噛んだ。


今ではもう化石になってしまった綺麗な思い出が詰まった夜景の見える高台へ向かう途中、見上げた星はぼくのさびしさに呼応するようにまたたいて、それがあまりにきれいだったので、ぼくは彼女の細い首へそっと手をのばしそうになる。


倒れた彼女の大きな目をのぞき込むと、まるで小さなプラネタリウムみたいにたくさんの星を映していて、とてもきれいだと思った。


そして彼女は声も出ないほど口一杯に星を詰め込んで、ぐったりと動かなくなった。

ぼくはもう力の入らない腕をぶら下げながらよろよろと震える脚で立ち上がって、仰向けに寝転んだままの彼女を見下ろす。

はやく彼女が星空に溶けてしまうよう祈りながら。

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