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羊飼いと亡国のお姫様  作者: 書く猫
第7章.隣国の王子様
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第65話.目覚め

 『童話の中の王子様』そのものである『エルナン』王子。彼が白馬に乗ったまま、ちょうど僕の目の前を通過しようとした瞬間……何の前触れもなく、王子の前にいきなり人が現れた。


「全員、止まれ!」


 王子が右手を上げて急いで命令し、自分自身も馬を止めた。

 僕は何が起きているのか理解できないまま、いきなり現れた人を見つめた。しかし黒い仮面を被っていて顔が見えない。明らかに怪しい人だ。それにもっと怪しい事実は、その人が『その場にいきなり現れた』ということだ。まるで魔法みたいに。


「王子様!」


 『獅子騎士団』と騎士たちが軍馬を走らせ、黒い仮面の人から王子を守るように陣取った。黒い仮面の人は屈強な騎士たちを前にしても動揺せずに……ゆっくりと右腕を上げる。


「あ……!」


 僕は目の前の光景に驚いた。いや、僕だけではなくその場の全ての人間が驚愕した。黒い仮面の人の周りに、いきなり無数の黒い猛獣たちが現れたのだ。


「『召喚獣』……!」


 それは狼に見えるけど狼ではない……『召喚獣』だ。古代エルフの遺跡で姫様やケイト卿、そして僕を噛み殺そうとした召喚獣たちが、今僕の目の前にいる。

 王都の市民たちが悲鳴を上げ、王子と騎士たちが素早く剣を抜く。そしてそれと同時に無数の召喚獣たちが王子一行に襲い掛かった……!


「王子様を守護せよ!」


 四方に逃げ走る人々の悲鳴、騎士と兵士たちの気合、召喚獣たちの吠え声……ついさっきまで平和だった王都の街が、一瞬で戦場と化した。

 僕は唖然とした。どうすればいいんだ? こんな状況で……一体どうすればいいんだ? 逃げるべきか? それとも……。

 ほんの数秒、僕が迷っているうちに……目先で王立軍の兵士の一人が倒れた。彼は剣を落としたまま数匹の召喚獣に囲まれ、攻撃されていた。


「くっ……!」


 僕は何をしているんだ……!? 迷うな! 迷ってないで何かできるだけの行動をしろ!

 兵士が落とした剣が視野に入った。僕はそれを手にして、兵士を噛み殺そうとしている召喚獣を切った。


「あ……!?」


 僕は驚いた。僕の上段斬りで、召喚獣は見事なまでに真っ二つになってしまった。僕の剣術が……こんなに強いだと!?

 いや、驚いている暇はない……兵士を救うんだ! 僕はその一念でまた剣を振った。基本的な横斬りだ。そして今度も召喚獣は真っ二つに切られた。

 何となく分かった。これは……僕の力ではない。何か別の力だ。しかし今はそんなことどうでもいい。何だっていいから、目の前の人を助けるんだ!


「うっ……!」


 ここ数週間、クロード卿から学んだ基本的な剣術……僕はそれを駆使して次々と召喚獣を倒した。それで兵士を救うことはできたが、まだまだ敵は多い。

 周りを見回すと、『獅子騎士団』の騎士たちが軍馬から降りて、数十の召喚獣たちと戦っているのが見えた。獅子騎士団は本当に勇猛だった。何倍の敵にも一歩も引かない。

 じゃ、この状況で僕がやるべきことは何だ? それは……無防備な市民たちを守ることだ! そう判断した僕は追われている人々に近づき、迫ってくる召喚獣に向かって剣を振った。召喚獣特有の黒い血が飛び上がった瞬間、僕はもう次の召喚獣を切っていた。

 体の底から、不思議なくらいの力が溢れ出てきた。もう僕自身さえ統制できないほどの力だ。その力を使って、僕は市民たちを襲おうとする召喚獣たちを切り裂いた。


「た、助けて!」


 声が聞こえてきた。振り向くと、少し離れたところで中年の男性が召喚獣に押し倒されていた。僕はまるで放たれた矢のような速さで接近し、召喚獣の頭を切り落とした。


「これは……」


 僕は自分の手を見つめた。そして気付いた。この溢れ出る力は……人々を守るために与えられたのだ。そしてこの力の源は……。


「危ない!」


 中年の男性が叫んだ。はっと気づいて頭を上げると、数匹の召喚獣が近くまで来ていた。僕は迷わず剣を振ってやつらを倒した。


「あ……!?」


 しかし3匹目を切った途端……剣が折れてしまった。これでは戦えない……! 僕は慌てて別の武器を探そうとしたが、4匹目の召喚獣がそんな僕に襲い掛かった。


「うっ……!」


 反射的に両腕で頭を守り、召喚獣の攻撃を待った。牙に噛まれるのか? じゃなければ爪で切り裂かれるのか? そんな考えが頭をよぎった。でも……結局何も起こらなかった。


「君!」


 若い男の声が聞こえた。僕は頭を上げて声の主を見つめた。それは……白いマントと白い鎧を着て、剣を持っている美少年だった。


「君、大丈夫か!?」


 エルナン王子だ。王子が召喚獣を倒し、僕を助けてくれた。


「王子様!」


 騎士たちが駆けつけてきた。王子を守るためだ。


「何をしている!?」


 王子が騎士たちに一喝した。


「私のことはいい! 市民たちを助けろ!」


 その命令で、騎士たちは周りの市民たちを助けるために走り出した。

 僕は王子を見つめた。王子も少し驚いた顔で僕を見つめた。


「この野獣たちは君が……?」


 さっき僕が倒した召喚獣たちを剣で指しながら、王子が質問した。僕はその質問に答えようとしたが……その時、急に体から力が抜けていった。


「お、王子……様」


 僕は王子を呼びながら倒れ、そのまま気を失った。

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