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羊飼いと亡国のお姫様  作者: 書く猫
第7章.隣国の王子様
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第64話.訪問日

 ついに明日、『ペルガイアの第2王子』がこの王城を訪問する。

 もう王城の内部は非常事態だ。 万が一でも隣国の王子に失礼がないように、王城の働き手たちは死力を尽くしていた。

 舞踏会の準備は既に終わったそうだ。王城の美しい庭園の所々にテーブルが置かれ、大量のお酒が用意された。全部明日の舞踏会のためだ。

 王都の貴族たちはもちろん、王城の騎士たちも明日の舞踏会には必ず参加することになった。それは『従者なき騎士』も例外ではない。


「まったく……面倒くさい」


 クロード卿は自分の部屋で舞踏会のための礼服を用意していた。


「何で俺まで参加しなければならないんだ」

「クロード卿も白金騎士団の騎士ですからね」


 僕は苦笑しながらクロード卿を見つめた。


「そもそも俺はな……美しい姫ならともかく、王子にはまったく興味ないんだよ」

「流石です」


 と答えた瞬間、僕はリナさんとの会話を思い出した。

 どうしよう……リナさんの心を伝えるべきか? いや、それはあまりにも……でも伝えないとクロード卿は……。


「あの、クロード卿」

「何だ」

「実はリナさんにクロード卿について聞いてみたんですが、その……リナさんは恋愛に興味ないらしいです……」


 僕の言葉に、クロード卿が爆笑する。


「まさかそれを真正面から聞いたのか?」


 クロード卿はしばらく腹を抱えて笑ってから、ゆっくりと口を開く。


「お前ってやつはな……純粋というか無謀というか」

「すみません、生意気なことをしてしまって」

「いや、別にいいんだよ」


 クロード卿が笑顔で首を横に振る。


「もう知っていたんだ。リナさんが俺に興味がないってことくらいは」

「そうですか? じゃ、クロード卿は……」

「叶わない片思いとか、趣味じゃないけどさ。人間の心ってそう簡単に切り替えないんだ」


 僕にはまだそういう経験はないけど……何となく分かるような気がした。


「俺は自分の心を否定するつもりも、リナさんの気持ちを無視して接近するつもりもない。こういう態度は男らしくないけどな」

「……いいえ、自分には理解できます」


 たぶんリナさんの気持ちを尊重しているからだろう。確かにクロード卿らしくないような気がするけど……理解できる。


「まあ、この話はここまでにしておこう。アルビン、明日はどうするつもりだ?」

「別に予定はありません。でもペルガイアの騎士たちを見てみたいです」

「『獅子騎士団』か。なら朝早くから東に行って、王都の門の近くで待っていろ。王子一行の行列が見られるはずだ」

「分かりました」


 レオノラさんも明日は宮殿で待機だし、僕にはしばらく自由時間だ。よし、ペルガイアの騎士たちを見に行こう。


---


 そして次の日は……いよいよ王子の訪問日だ。

 僕はクロード卿の言葉通り、朝早くから王都の門の近くで待ち続けた。時間が経つにつれて僕の周りに人々が集まった。皆ペルガイアの王子一行を見に来たんだろう。

 そして警備隊や王立軍の兵士たちが来て、王子のための道を確保し、人々を統制した。もし王子の身に何か起こったら深刻な外交問題になるから、何よりも安全を最優先にしているわけだ。


「くるぞ!」


 誰かが叫んだ。僕は大勢の人々と一緒に並んで、門の方を見つめた。するとしばらく後、白馬に乗っている誰かが姿を現した。


「おお……!」


 人々が歓声を上げた。僕も内心関心した。白馬に乗ってゆっくりと門を通っている人は……『童話の中の王子様』そのものだった。

 白い鎧と白いマント、短い金髪、彫刻のような顔……一瞬女性に見えるほどの美少年だ。


「『エルナン・カヒール』王子……」


 僕の隣で誰かが言った。そう、あの童話のような美少年が……ペルガイアの第2王子、『エルナン・カヒール』だ。

 街に並んでいた人々、特に女性たちの歓声が絶えなかった。その気持ちも理解できる。もし僕が女性だったら、僕も王子に一目惚れしたかもしれない。そう確信できるほどエルナン王子の姿は素敵すぎる。

 そして王子の後ろを追って、軍馬に乗っている騎士たちが次々と姿を現した。獅子の紋章が描かれた灰色の鎧を着ている騎士たち……もちろん彼らが『獅子騎士団』だ。

 屈強な体と貫禄……獅子騎士団は全員百戦錬磨の戦士に見えた。僕は彼らの姿に見とれて、頭が真っ白になったまま関心するだけだった。

 しかし……ちょうど王子一行が僕の目の前を通っていくその瞬間……異変が起きた。


「全員、止まれ!」


 王子が急いで命令し、自分自身も馬を止めた。王子の前に……何の前触れもなく、いきなり人が現れたのだ。

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