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羊飼いと亡国のお姫様  作者: 書く猫
第4章.王都へ
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第36話.気がかり

「あの……ヒルダさん、一つだけ質問してもいいですか?」

「何だ」


 僕は勇気を出して、以前から疑問だったことを聞いてみることにした。


「この部隊は、何故全員女性なんですか?」


 ヒルダさんの目つきが鋭くなった。


「まさか兵士たちに何か嫌なことでもされたのか?」

「い、いいえ! そんなことはありません!」

「そうか。もしそんなことが起きたら私に言ってくれ。すぐ解決してやるから」

「わ、分かりました」


 僕は慌てて答えた。


「それで、女性だけで部隊を編成した理由が知りたいのか? その答えは簡単だ。君も知っている通りこの部隊は姫様の護衛をしているから、男性がいるといろいろ不便だ。だから女性だけで部隊を編成したってことだ」


 まあ、そんなところじゃないかなと想像はしていた。でも……。


「でも……ただそれだけの理由で……?」


 ちょっと納得がいかない。確かに男性がいればちょっと不便なことがあるかもしれない。しかしそれが女性だけで部隊を編成しなければならないほどの問題かな?


「……勘のいいやつだな」

「はい?」


 僕はわけが分からなくてヒルダさんの顔を見つめたが、彼女はそれ以上説明する気はないようだった。


「アルビン君、それらの木箱を荷馬車に載せてくれ」

「は、はい!」


 装備の入った木箱は結構重たかったけど、これくらいは一人でも何とかできる。僕は3つの木箱を荷馬車に載せた。それで昼食前の仕事が終わった。


---


 兵士たちは木陰の下で昼食を始めた。もちろん僕も、そしてアイナもだ。


「お兄ちゃん、ここ!」

「うん、ここで食べよう」


 僕とアイナは大きな切り株に座って食事を始めた。涼しい風が気持ちよかった。まるでピクニックのようだ。

 食事自体は相変わらず質より量を重視したものだったが、僕とアイナに不満なんてない。


「それでね、食事の準備を手伝ったの!」


 アイナは楽しくしゃべりながらパンを食べた。そんなアイナの姿を見ているだけで僕も楽しくなる。素朴な食べ物も美味しく感じられる。

 しかしそんな楽しい食事とは裏腹に、僕の心には何か引っかかるものがあった。


「アイナ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ん? 何々?」

「リナさんのことだ」

「リナさん?」


 アイナが目を大きく開いた。僕がリナさんのことを口にするとは予想もできなかったんだろう。


「リナさんが……お前に意地悪したりしなかったか?」

「意地悪? 私に?」


 質問を理解したアイナが首を横に振った。


「そんなことないよ! むしろリナさんはとても親切なんだよ!」

「本当?」

「うん!」

「そうか……」


 僕がゆっくりと頷くと、アイナが僕の顔をじっと見つめながら口を開いた。


「お兄ちゃん、何でそんなこと聞くの?」

「別に理由なんてないよ。ちょっとお前のことが心配になっただけだ」

「……もしかして、リナさんがお兄ちゃんに意地悪したの?」


 たまに感がいいんだよな、アイナのやつ。


「そんなことあるはずがないじゃないか。そもそも僕はリナさんと関わることもないし」


 別に嘘ではない。僕はリナさんからちょっと注意されただけだ。むしろ注意くらいで済んでよかったとも言える。だから僕のことはいい。それよりアイナの方が心配だ。


「それよりアイナ……お前、村の友達と会えなくなって寂しくないか?」


 アイナが一瞬浮かない顔になった。これはまずい……僕が迂闊だった。


「私は大丈夫……お兄ちゃんと一緒だから」

「……そうか」

「それに、いつかはデイルに戻るんでしょう?」

「ああ、そうだな。いつかはデイルに戻って、またあそこで暮らそう」

「うん」


 ふと思った。もし僕が大金を稼いでアイナに贅沢な生活をさせても、アイナにはあの狭い小屋での生活こそが一番幸せなんじゃないかな、と。

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