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羊飼いと亡国のお姫様  作者: 書く猫
第2章.運命の鍵
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第21話.活路

 僕たちは暗闇の中を走りながら、戦いを繰り返した。


「アルビン君、まだ行けるか!?」

「はい!」


 召喚獣たちが1匹か2匹ずつ僕たちの前に現れる。するとケイト卿が素晴らしい剣術でやつらを切り倒す。そして僕が倒れたやつらに短剣で止めを刺す。それをもう何度も繰り返した。

 最初は弓も使ったけど、すぐに矢がなくなった。矢を回収する暇もなく前進しているから僕にはもう短剣しかない。

 短剣を使うのは初めてだけど、力を込めて刺したらそこまで難しくなかった。召喚獣たちの返り血が僕の体のあちこちに付いたが、その黒い血はすぐ蒸発してしまった。

 戦いが少し収まった時、突然道が二つに分かれた。右と左……どっちに進めばいいんだ? どっちも暗くて先が見えない。


「左へ進みましょう!」


 魔法を使った女性が決断を下した。もちろん彼女もここの構造を知っているわけではないから、直感で判断したんだろうけど……今はそれを信じるしかない。

 左の道を選んでしばらく走ると、永遠に続きそうだった通路が終わって……広い場所に出た。しかし暗いからどれだけ広い場所なのか知る由もなく、僕たちはひたすら壁に沿って歩いた。


「あそこに!」


 魔法を使った女性が暗闇の真ん中を指さした。その方向には……小さくて白い光があった。


「あそこへ向かいましょう!」


 あれはまさか出口? じゃなければ他の何か? とにかく今は行ってみるしかない。僕たちは壁から離れて、白い光に向かった。

 僕は病にかかった時の夢を思い出した。その夢の中でもこうして光に向かって歩いていた。しかしあの時とは違って、今は生きるために光に向かっている。


「アルビン君、警戒を怠らないように!」

「はい!」


 壁から離れたから、僕たちももう暗闇の真ん中だ。四方を召喚獣たちに囲まれて攻撃されることもありえる。しかしだからといって前進を止めるわけにもいかない。注意しながら進むしかないけど……。


「うっ!」


 突然の苦痛に、僕は低い悲鳴を上げた。苦痛は左腕から全身へ広がった。


「アルビン!」


 ケイト卿が僕の前を塞ぐように飛び込んで、召喚獣と対峙した。僕はやっと何が起こったのか理解した。左後方の死角から召喚獣が音もなく突然現れて、僕の左腕に傷をつけたのだ。


「はっ!」


 召喚獣が動こうとした瞬間、ケイト卿の剣が曲線を描いた。黒い血が飛び散り、召喚獣が倒れる。


「アルビン君、大丈夫か!?」

「は、はい……!」


 痛い。左腕から血が流れてくる。だけど今は立ち止まっている場合ではない。僕もケイト卿もそれを理解している。


「悪いが、今は我慢してくれ」

「はい!」


 僕は右手で左腕の傷口を塞ぐように掴み、また走り出した。せめてあの白い光のところまで行かなければならない。もう少しだ……!

 しかしやっと近くまで行ってみたら、それは単なる光ではなかった。それは……人だ。しかも全身から白い光を発している……美しいエルフ族の女性だ。


「誰だ!」


 ケイト卿が鋭い声で質問した。しかしエルフの女性は何の返事もしない。いや、返事をしないどころか、僕たちに振り向きもしない。ただ虚空を見つめているだけだ。まるで幽霊みたいだ。

 僕は周りを警戒しながらも、そのエルフの女性を観察した。腰まで届く長い金髪と、布を巻いたような服装……美しくて神秘的なその姿に、今の状況を忘れて見入ってしまいそうだった。


「この人は……」


 魔法を使った女性が口を開いた。


「この人は………古代エルフです」

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