コレ、無理かも……
書きたい事書いていたら、ちょっと長くなりました。
という事で、97話どうぞ!
「で、結局のところ、本体まで行ってどうすんだ?」
先に本体へ向かって走り出したマインとアレンを追いかけ、今しがた横に並んだ途端、マインから放たれた言葉がそれだった。
まぁ、戦闘中だった事もあり話が耳に入って来なかったのだろうし、そもそも何をするかちゃんと説明もしていない。寧ろマインがそう問いかけるのも当然だろう。
ならここはちゃんと分かりやすく説明すべきだ。
「簡単だよ。本体をボコボコにして後退させればいいんだよ!」
しかし、ユルトの説明はあまりに頭が悪そうで、剣を振るいながら、無駄に爽やかな笑顔でそう答える。
普通なら訝しんでもっと詳しい説明を求める所だが「ははっ! 分かり易いじゃねぇか!」とまるで気にする事もなく、マインは豪快に笑って了承する。
その隣では、アレンがげんなりした表情で「えぇ……それでいいの……」と消え入るような声で呟き、二人を見る。
なんであんな化物相手にそんな作戦? しかも何でそれで納得できるの? 生き死にに関わるんだけど?! といった視線だろうか、それに気づいたユルトは苦笑いを浮かべる。
途端、アレンは唐突に理解した。
どうして、ユルトはそんな単純な事しか伝えなかったのか、それはマインの幼馴染みであるアレンだからこそ理解できた。
マインが一体どう言う人物なのか、今迄の言動からユルトがそう断定するのも無理はない。
つい先程ユルトが浮かべた苦笑いは、恐らくこういう事だろう。「マインちゃんは脳筋だから、これぐらいの説明なら分かるよね?」
多分当たっているであろうその笑顔の真意に、アレンはユルトにそう思われているマインに対して無性に悲しくなり、涙目で見つめた。
(マインちゃん、ユルトさんの考えに否定出来ない自分がいる……ごめんね)
「ん? どうしたんだアレン?」
「いや……何でもない……」
「お前また泣いてんのか?」
「大丈夫……気にしないで……」
アレンは目尻に溜まった雫を拭うと、いつにも増して優しい笑顔をマインへ向ける。
その笑顔はどう言う意図があるのか分からないが、哀れんだ視線を感じるのは気のせいではないだろう。
マインの額に青筋が浮かび、少し不機嫌な空気を漂わす。
それを敏感に感じ取ったアレンはわざとらしく咳き込むと、慌てて視線を前に戻す。これ以上マインを怒らせると拳が飛んでくる。長い付き合いのアレンにはそれが分かっていた。
取り敢えず、マインへの件はこれで置いておくとして、実際本体へ辿り着いたとしてどうするのか、ここをちゃんと把握しておかなければ後々に響くだろう。
どのタイミングで何をどうするのか、それを知っておかなければ、自分達の立ち回りも方も大きく違って来る。
だがそれよりも、まず前提として、どうやって空に浮かぶ"人喰い"の本体へ乗り込むつもりなのだろうか。
正直、触手の上を走って行くとか、あまりに現実味がなさ過ぎる。出来ない事はないだろうが、どちらかというと不可能に近い。
いくら殆どの触手がシェイバへ差し向けられているからといって、こちらに触手が来ないないわけではないのだ。
触手の上を走っている途中に、危険を感じた"人喰い"がこちらへ意識を集中する事も考えられる、
それに、あの上を走って行くとなると、襲い来る触手の他に、振り落とされる危険を考慮して、足元にまで注意を払う必要が出てくる。
オマケに触手という足場の悪い所では、まともに剣を振るう事も出来ないだろう。それでは不利を通り越して無謀だ。
反撃をする間も無く殺られる。
それをマインはともかくとして、ユルトが理解していない筈がない。
ならば、アレンが考えられる方法は一つ。魔法という手段のみだ。
しかし、魔法を使ったとして果たして本体へ乗り込めるのだろうか。アレンにはローリエと言う優秀な魔導師の仲間がいるが、その仲間が言うには空を飛ぶ魔法や転移魔法と言った物は、物語の中でしか存在しない架空の魔法とされている。
ならば〈身体強化〉で脚力を増して跳躍すればどうだろうと考える。
しかし、アレンは少しの逡巡の後、首を横に振ってすぐにその方法を破棄する。
確かに〈身体強化〉で脚力を強化して跳ぶのは良いかも知れない。しかし、例えそれで高く跳躍したとしても、たかが知れているし、本体に届く前に途中で減速して落ちるのが目に見えている。
そして、減速して無防備になった所を触手でリンチにされるのが容易に想像できる。
他にもそういった方法をいくつか考えるが、どれもピンと来ない。
いくらローリエという魔導師の仲間がいて、魔法についてある程度の知識を得ていたとしても、槍一本で戦って来たアレンには魔法の詳しい事までは分からない。
そもそも、ユルトがどの様に"人喰い"の本体へ乗り込むかすら聞いていないのだから、まずそこを確認したほうが早いだろう。その上で、考え実行すれば良い。
「ユルトさん――」
「ユルトでいいよ、さん付けは面倒でしょう?」
「……分かった、ならユルト、単刀直入に聞くけど、本体へはどうやって乗り込むの? あれだけ高い所に構えられていると、〈身体強化〉で脚力を強化したとしても届かないし、ましてや俺達は空を飛べない。
触手の上を走って行くのも考えたけど、正直無謀だ。上がり切る前に振り落とされちゃう。どう考えても無理な気がするんだけど?」
当然の疑問にユルトは少しキョトンとした表情をする。しかし、それも一瞬、次の瞬間にはすぐにいつもの笑顔を作る。
「う〜ん、そうだね、取り敢えず〈身体強化〉で跳ぶのは正解かな。勿論二人とも出来るよね?」
「おう、出来るぜ!」
「俺も出来るよ――」
アレンは一拍おいて口を開く。
「――でも〈身体強化〉でどうやって本体まで昇るつもりなの? さっきも言ったけど、無理じゃないかな?」
「うんそうだね、〈身体強化〉だけなら無理だね。だけど、そこに〈魔力障壁〉を使えば行けちゃうんだなぁ、これが!」
「何で〈魔力障壁〉なんだ? あんな防御魔法どう使うん、だっ!」
正面から空気を押し除ける様に迫る破城槌を《レイピア》で突き刺し、瞬間的に受け止める。それを横からアレンが槍を巧みに使って真っ二つにする。そして、進路上にある肉の塊を〈身体強化〉したマインが蹴り飛ばして、更に左右から来ていた触手にぶつける。
「ナイス、アレン!」
「それはどうも」
幼い頃からずっと一緒にいるだけあって、二人の息はぴったりだ。
ユルトは心の中で二人に拍手を送る。
「悪りぃ、邪魔が入った……そんで、えっと、何だっけ……?」
「〈魔力障壁〉をどう使うのか、でしょ?」
もう忘れたのかと、呆れたアレンが隣から答える。
「そうそれだ! そんで、その〈魔力障壁〉をどう使うんだ?」
「単純な話だよ、〈魔力障壁〉で足場を作るんだ」
ユルトの言う事に、アレンは少し逡巡した後に理解の色を示すが、少し困惑した表情をする。
恐らくユルトの言っている事が本当に出来るのか疑問に思っているのだろう。
その隣では、マインが眉間にシワを寄せて、意味がわからんと、頭を傾げる。
「要は〈身体強化〉で脚だけをギリギリまで強化して、跳び上がった先に〈魔力障壁〉で足場を作っる。それで、そこでまた跳び上がるんだよ。そうすれば上まで行ける。
但し、〈魔力障壁〉は魔力の燃費が悪いから、瞬間的にだけ発動させないとすぐに僕達の魔力が尽きちゃう。そこは注意が必要だね。
とまぁ、簡単な説明はしたけど、分かりにくいと思うから実際にやってみるよ」
ユルトは二人が頷くのを確認すると〈身体強化〉を発動する。地面が爆ぜる勢いで力強く跳躍して、進路上に〈魔力障壁〉を最小限の範囲で作りだす。そして、障壁の手前で体をくるりと回転させ、静かにその場へ着地、触手に囲まれる前にまた飛び上がる。
跳ぶ際の衝撃で、足場の〈魔力障壁〉はガラスが割れた様な音を立てて砕け散り、虚空へと消えてゆく。
二人が地上から見上げる中、ユルトは同じ事を何度か繰り返して、どんどん上へと昇って行く。
〈魔力障壁〉を足場として使う様を見せつけられたマインとアレンは、今迄の常識が何処かへ飛んでいった様な顔をする。
というのも、この世界では攻撃魔法はあくまで攻撃に使用する為のものであり、同じく防御魔法は防御に使うものだ。
それ以外の用途として使う事はまずない。それがこの世界の――魔法の常識である。
しかし、ユルトは防御魔法である〈魔力障壁〉を足場として利用するなど、その常識とは離れた使い方をしていた。
それは魔導師達からすれば邪道と言われるだろう。
だが、ユルトやカレンからすれば、逆にその凝り固まった考え方自体がおかしいと思わざるを得ない。
魔法というのは、応用すれば基本的に出来ない事はないのだ。
閑話休題
防御魔法を移動用として活用する。それはユルトの話し方から予想ができていた。しかし、実際見てみると状況を忘れて一瞬呆けてしまう。
自分の中の常識が一つ崩れた瞬間だった。
マインに至ってはキラキラした目で「スゲェー! 空を跳ねてやがる!!」と興奮状態だ。
とにもかくにも、此処にいては"人喰い"の本体へ有効な攻撃を当てる事は出来ない。ましてや、あんなものを見せつけられたのならもう行くしかないだろう。
アレンは隣で興奮しているマインへ視線を向ける。すると、アレンの視線に気付いたマインは顔を向けて目を合わせる。
行くぞ、と言う意を示した目で頷くと、了解とばかりにニカッと無邪気な笑顔で返事をする。そして〈身体強化〉を使って"人喰い"に向かって跳躍、その後をアレンが追う。
(確か自分の前に〈魔力障壁〉を張って………こうか!)
自身が乗れる広さの障壁を瞬時に張り、そこへ着地する。しかし――
「おわっ?!」
――魔力を極力使わないように張った〈魔力障壁〉は、マインが上に乗った瞬間、薄い氷のように簡単に底が抜けた。
いくら魔力を温存しなくてはならないからといって、魔力をケチり過ぎると、〈魔力障壁〉は重さに耐えきれず、簡単に砕ける。
ユルトの様に魔力を極力使わず、かつ、飛び上がる際の衝撃に耐えうるものを作り出す事は、中々に高度な技術を要する。
故に、こうしてマインが失敗するのも無理はない事なのだ。
「マインちゃん!!」
〈魔力障壁〉が砕けた事により、マインはそのまま下へ落下して行く。アレンは落ちて行くマインの手を掴もうと自分またを伸ばすが、届かない。あっという間に二人の距離は開く。
そして、それをチャンスとばかりに触手が追いかける。
空中では足場がないためにまともな攻撃や回避、防御もままならない。
バランスを崩せばきりもみ状態で落下する事にもなる。そうなってしまえば助かる見込みはない。
仮に落下先に〈魔力障壁〉を張って足場を作るとしても、魔法が得意ではないマインは〈魔力障壁〉を張るのに集中してしまい。次は襲い来る触手への意識が疎かとなり、足場を作った頃には八つ裂きにされるだろう。
それが分かっているマインは表情を険しくして、舌打ちをする。
自分が招いた結果とはいえ、この状況はかなりまずい。
マインの心は今、焦燥感に駆られていた。
すると、マインの心情を読み取ったかどうかは分からないが、"人喰い"はユルトやアレンへ向けていた触手をマインへと集中させる。
「ちっ! 化物のくせして、よく見てやがる!」
夥しい数の触手が前後を塞ぐ光景に、流石のマインも悪態をつかずにはいられない。
剣を持つ手に汗が滲む。
背筋を冷たい何かが這い回る。
どうにかしなければと、頭をフル回転させる。だが、少しの暇も与えないかの様に触刃や破城槌が容赦なく叩きつけられる。
「人が考え事してる時は邪魔すんじゃねぇ!!」
鞘から細剣を抜き放ち、高速の六連突つを放つ。しかし、足場のない空中では踏ん張る事も、上手く腰を入れる事も叶わず、攻撃の威力がガタ落ちする。その為、触刃は軌道を変える程度にしか出来ず、破城槌に至っては軌道を変えるどころか減速すらしない。
このまま直撃を受ければ致命傷は免れない。その上、下に待ち受ける触刃の剣山に串刺しにされるのは想像に難くない。
「ちっ! 一つの失敗でコレかよ、笑えねぇ!」
戦場とはそういうものだ。少しの違いや失敗で簡単に命を落とす。
一瞬という時間が生死を分けるのだ。
「ヤベ、アタシ死んだかも……」
死を覚悟する。
ここに来て殆ど戦闘という戦闘はしていない。にも関わらず、こんな下らない死に方で終わるのか。
空中に張った〈魔力障壁〉が抜け、その後触手によって串刺し、あまりにあっけなさ過ぎる。そう思ってしまう。
だが、理由はどうあれ、これが生きるか死ぬかの戦いなのだ。死ぬ時は意外とあっけない。それが遅いか早いかだけの話だ。
分かっていた事だ。冒険者になった頃から死ぬ覚悟はしていた。だからいつ死んでもよかった。だが、いざ"死"を目の前するとこれ程恐ろしいものなのか。
体は震え、心が嫌だ嫌だと泣き叫び、目元が熱くなる。
時間がゆっくり進むような感覚に飲み込まれ、走馬灯を見る。
(悪りぃ……アタシ、死んだわ……)
目を閉じる。真正面のわずかな空気の動きで、すぐそこまで破城槌が迫っている事を感じ取る。
もう何をしても無駄だ。障壁を張ったところで袋叩きにされれば一瞬の内だろう。
はっきり言ってこんな所で死ぬのはマイン自身納得がいかないし、釈然としない。だが、何を言った所で死を回避する事は出来ない。
ならいっそ、潔く死んでやればいい。だが――
「マインちゃんっ!!」
――アレンが死ぬ事を許さない。
マインが声のする方向へ顔を向けるより速く――
破城槌が、マインを打ち砕くより早く――
アレンがマインを掻っ攫う。
同時に背後では破城槌が振り下ろされ、ゴウッ! という音共に空を切る。
「アレン、ナイスだ!!」
「うわぁぁぁぁぁ! ギリギリ、ギリギリだったよ! もうちょっとで潰されるところだったよ!」
アレンはマインを抱き抱えたまま、空中を立体的に跳び回り、触手の僅かな間を通り抜けて上へと進む。多少安全な空間までくると、自前で作った〈魔力障壁〉の上に立つ。
しかし、多少安全とはいえ、周囲には相変わらず触手が空を埋め尽くしており、決して安全というわけではない。あくまで、触手の数が少なく、容易に対処ができる場所、という意味だ。
故に、アレンは周囲への警戒を怠らず――いつもの情けない表情は完全に抜け落ちないが――周囲を警戒する視線だけは鋭くキリッとしていた。
普段のヘタレはなりを潜め、今は頼れる戦士といった雰囲気を漂わせる。
そんなアレンについ頬を赤く染め、鼓動が跳ねるマイン。
一息ついたアレンは先程の事を思い出したのか、プルプルと震えだし「お家帰りたい……」とぼやく。
しかしここまで来て変えるわけにもいかず、最早やるしかない。
アレンはマインを抱き抱えたまま移動を開始する。
その場に留まっていてはかっこうの的であり、何より〈魔力障壁〉を展開し続ける事は魔力の消費を意味するからだ。
アレンは何をするにしても器用にこなす。
しかし、だからといってユルトのように絶妙な魔力調整までは出来ない。
だから、先程から跳ぶ度に作り出している〈魔力障壁〉は必要以上に魔力を消費しており、今もアレンの魔力はガリガリと削られていた。
想定していたより多くの魔力を消費しているアレンは少し焦りを覚える。
本体へ辿り着くまでに自分の魔力は一帯どれ程残っているのか、本体へ辿り着いたとして戦える余力はあるのか、正直なところは予想がつかない。だから、その代わりと言ってはなんだが、こうしてマインを抱えて移動しているのは、少しでも彼女の魔力消費を抑える為でもあった。そうすれば、魔力を使うのは自分だけで済み、マインは魔力がほぼ満タンの状態で戦える。
このアレンの意図がマインに伝わっている事はまずないだろう。
だが、マインには悪いが、本体に辿り着くまでは、このまま大人しくして貰うのがアレンとしては好ましい。
「マインちゃん、もう少しこのまま我慢してね」
「ああ、寧ろ頼む。アタシじゃ空中を飛び跳ねながら〈魔力障壁〉張るのはちと無理がある」
「コレ意外と難しいもんね!」
「その割にゃ、上手くやってんじゃねぇか?」
「そう見える? 実際は魔力がどんどん削られて超焦ってるんだ」
「そうなのか?」
「うん、だからすぐユルトに追い付いて、本体に乗り込むよ。その間結構動きが荒くなるかもしれないから、マインちゃんは振り落とされないようにしっかり掴まってて!」
「おう、頼むぜ!……………ていうか銀王は何処だ?」
そういえば、と触手の雨を掻い潜りながら上へ上へ進む中ユルトの姿を探す。
先に昇って行ったから、前にいる筈だ。
しかし、いない。
あんなに目立つ銀髪のユルトが何処に見当たらない。
「ありぃー……?」
「銀王どこ行った?」
ここまで綺麗さっぱり姿が見えないと、一瞬逃げたのではないかという可能性が脳裏を過ぎる。
しかし、会って間もないが、とてもユルトがそんな事をするようには見えなかった。
なら、いったいどこにいるのか。
考えられるのは一つだった……
♢♢♢♢♢
吹き抜ける強風が銀の髪を荒々しく撫でる。
気配を完全に消し去り、ユルトは立っていた。
黒ずんだ金属の光沢が足元で輝き、ユルトを移す。
「うーん……硬いね……」
ユルトは手に持った剣の刃を眺めながら、小さく、それでいて少し驚いたように呟く。
「流石にこの強度は予想外だなぁ……どうしよう……」
この場に来てから何度も斬りつけたのだろう。足元の金属には剣で傷付いた後がいくつもあった。
しかし、そのどれもが浅い傷ばかりで、とても斬り裂くとまでは至ってはいない。
まさか"人喰い"の外皮がここまで硬いとは、流石のユルトもお手上げである。
「どうしようか……」
ユルトが今立っているのは、"人喰い"の頭の上。人間で言うところの額に位置するのだが、そこで問題が発生した。
それは、"人喰い"の頭を覆う外皮――一部は甲殻――が硬すぎたのだ。
その強度はアダマンタイトを優に超え、ユルトの持つミスリルとオリハルコンの合金で出来た剣では浅い傷をつけられる程度。
一度斬りつけた程度ではびくともしなかった。
だからと思い、寸分違わぬ位置に剣で何度も斬りつけた。しかし、やはり効果は薄く、浅い傷をつける程度であった。
これにはユルトも、手を止めざるを得ない。いくらこの硬い外皮を剣で斬ったとしても、結果は変わらないのだから。
「………」
ユルトは手に持っていた剣を一度鞘へと戻す。
顎に手を添えて忌々しい金属質の外皮を見つめながら逡巡する。
そして、いつものように爽やかな笑顔を作ると、ポツリと呟いた。
「コレ、無理かも……」
いつも『転生悪魔〜世界最強に至るまで〜』を読んでくださいり、ありがとうございます
さて突然ですが、今回はカレンの名前とギレンの名前について語りたいと思います。
ではまず、カレンから!
カレンが転生する前の名前はご存知の通り "千石 夏憐" と言う名前になります。
どうしてこの名前にしたのかと言いますと、特に深い意味はないです。
ただ強いて言うならば、苗字の方は「"千石"って苗字カッコよくね?!」という単純な考えからです。
名前の方に関しては、「男でも女でも使える名前っていいなぁ……」と思い、パッと浮かんだのが "カレン" でした。そして、「よし、主人公の名前は"夏憐"にしよう!」と言うことになりました。
これが主人公の名前を決定した経緯です。
続いてギレンに参りましょう。
ギレンの名前はかなり前から考えてました。
まず、"ギレン"と言う名前ですが、コレはカッコいい名前にしたいという事で、思い浮かんだのが、ギレンでした。正直ここは真剣に考えつつも、少しテキトーなところがありますね……
次に"バール・ゼブル"ですが、本当は"バアル・ゼブル"と言います。
意味は「気高き主」または「気高き館の主」と言います。
おそらく、嵐と慈雨の神『バアル』の尊称の一つだったと言われています。
後にこの"バアル・ゼブル"は"バアル・ゼブブ"、「蝿の王」と蔑まれます。
さて、知っている方はもうお分かりですね。そう"バアル・ゼブル"はあの有名な悪魔の王、"ベルゼブブ"の元になった神様なんです!
コレを知って、名前を"ギレン・バール・ゼブル"と致しました。つまりは神話からの借用です。
さて、少し長くなりましたがここで終わります。次はエスタロッサと紅姫の名前の経緯を話せたらなと思います。
では今後ともよろしくお願いします。




