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悪魔がカレンにわらうとき  作者: 久保 雅
第3章〜天空の巨獣〜
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思いがけぬ巡り合い

評価ポイントが500をこえ、ブックマークが200件を達成しました。

本当にありがとうございます。

これからも、『転生悪魔〜世界最強に至るまで〜』を応援よろしくお願いします!!

 (さてさて、父上よりルミナス殿と合流する様に言われていますし、ここは王都の近くまで行かねばなりますまい。しかし、あまり近くまで飛んで行けば、我輩の存在がバレてしまう危険性がありますし、どこか身を隠せるところに降りて、そこから徒歩で()かねば……)


「あそこが良さそうですな!」


 エスタロッサは空中で体をくるりと回し、真下にある森へ向かって急降下する。

 ゆっくり降りていけば、誰かに目撃されてしまうかも知れない。だから、こうして姿を見られない為に猛スピードで森へ突っ込んで行くのだ。


 遥か上空より、人間では到底竜王種だと認識出来ない速度で森に突っ込み、地面が近くなると大きな翼を広げて急ブレーキをかけて柔らかく着地する。


「王都より四キロ地点と言ったところですかな。周囲に人間がいないことは確認しましたが、警戒はした方が良いですな!」


 そう言いながら、鼻を鳴らし、耳を澄ませ、気配を探る。

 森の新鮮な空気が鼻を通り、肺を満たす。肌を撫でる優しい風が木々を揺らし、森の音が届く。


 (人間の気配はない、それどころか……)


「魔物の気配もありませんな……」


("人喰い"の影響か、それとも先程の大爆発の影響か……いや、今はそれを考える時ではありませんな。

 今は一刻も早くルミナス殿と連絡を取り合い、合流せねば!)


 エスタロッサは王都へ向けて森の中を歩く。その道中、同時にルミナスへ向けて〈念話〉も飛ばす。

 王都から現在位置はかなり距離がある。〈念話〉は通常、三百メートルが届く範囲内だといわれている。しかし、カレンとルミナスの場合、何故が最長で二キロ先でも〈念話〉が届いていた。

 というのも、〈念話〉という魔法は、届く距離に個人差や相性があるのだ。その為、エスタロッサは、もしかしたら遠いこの場所からでも繋がるかも知れないと、一縷(いちる)の望みに賭けて〈念話〉を飛ばしたのだ。だが……


「ふはははっ! まったく繋がりませんな! 危険ですが、やはり王都の近くまで行かねばならないようですな!」


 翼をピッタリと体に貼り付けるように折り畳み、生茂る木々の間を縫うように駆けるエスタロッサ。小型の魔物ならまだしも、全長八メートルを超える巨体で、犬顔負けの機敏な動きで木々を避けていく様は圧巻だ。


(ふむ、なるべく早くルミナス殿と合流したいのですが、これでは王都近辺まで行くのに、どれ程かかるのやら。

 森の中は昼寝には最適なのですが、木々が邪魔で移動が面倒ですな。いっそのこと竜砲撃(ブレス)で焼き払ってしまいますかな? いやいや、それをしては目立ちますし、何より、また父上にお(しか)りを受けてしまいますぞ!)


「しかし、やはり〈念話〉は届きませんか……どうして父上とルミナス殿は長距離でも〈念話〉がで来たのでしょう? 種族的な関係? いやいや、お二人は正反対の種族ですし、その可能性はゼロですな! やはり相性なのでしょうか……まぁ、それはいずれ母上にお聞きすれば分かるかも知れませんな! 今はとにかく、目立たぬよう走って行きますぞ!」


 一通り独り言をした後、ペースを上げて景色の変わらない森の中を駆けるエスタロッサは、ここで、数キロ先の音すら拾うと言われるその鋭い聴覚で小さな地響きのような音を拾う。

 その小さな地響きが気になり、一度足を止めて、その音のする方向へ頭を向けると耳を澄ます。


「ふむ、この音は父上やルミナス殿が歩く音に似ていますな……少なくとも数百から千と言うところですかな?」


(これ程の数、まさか我輩の存在がバレて、討伐隊でも差し向けられましたかな? いやそれにしては対応が早すぎますな……)


「ギレン殿に確認してもらいますかな!」


 地上で"人喰い"の捜索をしているギレンへ向けて〈念話〉を飛ばす。すると、すぐに繋がる。意外と近くにいた様だ。


『ギレン殿、我輩です。エスタロッサでありますぞ!』


『若様、どうかなさいましたか? まさか、何か"人喰い"に繋がる情報でも?』


『いえ、それとは別件なのですが、どうやら何処かで人間と思わしき足跡が大多数聴こえるのです。もしかしたら我輩の存在がバレて、討伐隊が差し向けられたのやも知れませぬ。

 ギレン殿、申し訳ありませぬが、確認して頂けませぬかな? 我輩は目立つ故、なるべく近づくわけには行きませんからな!』


『かしこまりました。そう言うことなら(わたくし)が確認して参ります。若様は少々その場を動きませぬようお願い致します』


『承知!』


(ふむ、〈念話〉が繋がったという事は近くにいたという事ですかな?

 まぁ、とにかく、ギレン殿から連絡があるまで、我輩はここでしばしの待機ですな)


 その場で暫くぼーっと待っていると、ギレンから〈念話〉が繋がる。その時間約十分。


『お待たせ致しました、若様』


『ギレン殿、どうでしたかな?』


『はい、結論から申しますと、討伐隊ではありませんでした。どうやら、ここら一帯の村や街の住人が一斉に王都へと避難している模様です』


『………少し不味いですな!』


『はい、これまでの村や街の被害からして、"人喰い"の好物は、まず間違いなく人間、それを一箇所に集めるとなると……』


『"人喰い"が王都を襲撃しますな……』


『はい、確実かと。若様、現在王都にはルミナス様が居られます。おそらくこの大移動はルミナス様の指示であると愚考いたします』


『何故そう思うのですかな、ギレン殿?』


『これ程大胆な事をしでかすのは他にいないかと……』


『ふむ、成る程………ギレン殿、我輩は当初の予定通り、このまま王都の近くまで行ってルミナス殿と連絡を取り合い、一度合流しますゆえ。ギレン殿には申し訳ないのであるが、今すぐ父上を迎えに行ってもらえませぬか。どうにも嫌な予感がしてなりませんからな!』


『かしこまりました。では、私は我が君をお迎えに参ります』


『よろしく頼みましたぞ、ギレン殿!』


『はっ!』


 ギレンとの〈念話〉が切れると、エスタロッサはすぐさま王都へと走る。


(見つからないのであれば誘き出し、あちらから姿を現せさせる。成る程、合理的ですな。しかし、この方法を考えたのが本当にルミナス殿であれば、それはあまりに危険ですぞ! 相手は父上ですら警戒する魔物、今迄のようにはいきませぬぞ!)


 最早なりふりかまっていられないとばかりに、進行方向の木々を避ける事もなく、なぎ倒しながらただひたすらに真っ直ぐ最短距離を走る。

 体長八メートルの(ドラゴン)の突進を受けた木々は、まるで小枝のようにポキポキと折れ、後には道が出来上がる。

 折れた木々は宙を舞い、緋い鱗と甲殻を激しく打ちつける。しかし、オリハルコンと同等かそれ以上の硬度を誇るエスタロッサの鱗と甲殻には、この程度の事で傷一つ付かない。


「ふむ、もう少しペースを上げますかな!」


 走り続ける中、ルミナスへ向けて〈念話〉を飛ばすが、距離がありすぎる為に未だ繋がらない。


「この大移動が本当にルミナス殿の指示ならば、合流してその真意を聞き出さねば、場合によっては我輩も前線に出ねばならなくなりますぞ!」


(なんか我輩、最近独り言が多いような……最近父上やギレン殿といる時間が少ないですからな、致し方ありません! でも、やっぱり寂しいですぞ!

 この件が終わったら、久々に父上と昼寝でも致しますかな!)


「ふははははははっ!」


 カレンから、警戒しておけとか言われ、自分で"人喰い"は危険であると認識していたにも関わらず、先程自分の口にした事など夢だと言わんばかりに、全てスコンと抜け落ち、今は大好きな父であるカレンとどのように過ごそうかとひたすらその事だけに思考が偏り、想像を膨らます。

 いくらカレンが警戒する"人喰い"と言えど、大森海において、ほぼ最強を欲しいままにしたあのカレンに絶対に敗北などあり得ない。それは、これから先も変わらないだろう。それ程までにエスタロッサのカレンに対する信頼は絶大なものだ。


 だが、後にエスタロッサは思い知らされる事となる。上には上がいることを。




 ♢♢♢♢♢


 カレン、エスタロッサと別れたギレンは、地下で"人喰い"の捜索すると言う自らの主人(あるじ)とは別に、地上を捜索する事となった。


(さて、もし"人喰い"が【存在隠蔽】などの特殊能力(スキル)を持っていたと仮定するのであれば、私のように視覚や気配に頼る捜索の仕方では、発見は非常に困難。しかし、私は探知系の魔法は使えませんし、感覚による捜索しができません。

 ふむ、非常に困りました。どう捜索致しましょうか……)


 姿が見えない程の速度で動き回り、"人喰い"の痕跡を探すギレン。ここまで、"人喰い"に繋がる情報は、血の海となった村跡と、自らの主人であるカレンが保護した、村の生き残りのみ。

 目撃者が生きていた事は幸運ではあったが、その人間は恐怖のあまり、逃げるのに必死であった為に"人喰い"の特徴や姿形などは殆ど覚えていなかった。その目撃者からの情報で分かっているのは、"人喰い"は空に()()()()()事、とてつもなく巨大である事、そして、人間の手のような器官を持っていると言う事だけである。


(あまりにも情報が乏しい……何より、あのルミナス様の"ヨルズ山脈"を吹き飛ばす程の大規模魔法、あれだけの事が起きたならば、反応ぐらいしても良いはず。にも関わらず、姿を現さないどころか、気配すらも感じない……)


「ふむ、困ったときは冷静に状況の整理から始める、確か、奥方様がそうおっしゃられておりました。

 まず、我が君は地下空洞への入口である大穴を目指し"テルース大峡谷"へ、若様はルミナス様と合流すべく王都を目指されている。私は地上より"人喰い"の捜索。

 次に、"人喰い"に関しては殆どが判明しておらず、わかっている事といえば、空に浮いている事、巨大である事、人間の手のような器官がある事のみ。

 そして、"人喰い"はなんらかの方法でその存在を隠しており。上空にいるのか、擬態しているのか、それとも地下にいるか」


 ギレンは一度立ち止まり、空を見上げて考える。空か、地上か、地下か、この三箇所の内、何処に"人喰い"がいるのかを。しかし、考えれば考える程、何処にでもいそうな気がしてくる。

 そんな中、頭に唐突に浮かんだ可能性があった。それは、"人喰い"は筈でにこの国におらず、他国へ行ったのではないかと言う可能性だ。だが、ギレンはその可能性を破棄する。


「いいえ、ありえませんね。おそらくまだ王国国内に潜伏していると思われます。この国の南側半分には、この国の心臓である王都があります。大量の餌を前に別の国へ行くはずがありません。

 いずれにせよ、早期発見、討伐をしなければ、生態系に大きな影響を与え、更なる厄介事に発展しかねません。下手を打てば……考えたくもありませんね」


 最後に何が起こりうるか想像しただけで、ギレンですら震え上がる。

 ()()()()()()()()()()()()()()。ギレンはその決意を胸に、"人喰い"が潜伏できそうな、森林地帯、や山岳地帯を中心に捜索することにする。


「地上においてはその二種類の場所しか身を隠すところはありません。もしくは水中ですね。ですが、この辺り一帯は一通り調査しましたが、巨大な生物が身を隠せる程の大きな湖はありませんでした。となると、可能性の高い山岳地帯を捜索致しますか」


 そう言って、ギレンが"人喰い"捜索を再開しようとした、その直後、エスタロッサから〈念話〉が繋がる。


『ギレン殿、我輩です! エスタロッサでありますぞ!』


『若様、どうなさいましたか? まさか"人喰い"に繋がる情報でも?』


 そう問いかけてみたが、帰ってきたのは、全く別の答えであり、頭を抱えたくなる問題であった。


(討伐隊、ですと?! いえ、まだ決まったわけではありません。そもそも、この非常事態に他に戦力を割く余裕はないはず。しかし、それでも相手が竜王種となれば別かもしれませんね。ここは、若様の言う通り、一度確認しなくては!)


 ギレンは捜索を一時中断し、エスタロッサの向かった方角へと進路を取り、謎の集団の確認へ向かう。


(王都の方角は確か現在位置より東ですね)


 その瞬間、フッとギレンの姿が消えたかと思うと、少し遅れて、先程までギレンが立っていた地面が弾け飛ぶ。

 風を切り、音すらも置き去りにする。


 そして、数十キロもの距離をものの数分で走り去り、エスタロッサの潜伏している近くまでやって来る。


(僅かに若様の気配を感じますし、ここら辺でしょうか)


 場所は王都より数キロ離れた、森と草原の中間地点。ギレンは森の方角に、うっすらと感じるエスタロッサの気配から、この近くに謎の集団がいるのではないかとおおよその見当をつけると、その場に膝をつき、地面に指先を突き刺す。


「………なるほど、確かに、この振動からしてかなりの数の人間ですね。距離にして約二キロ、数はおおよそ千人前後と言ったところでしょうか。

 ですが、どうやらこちらに向かって来ているわけでは無さそうです。とにもかくにも、確認に向かいましょう」


 今立っているその場から、森を背に二キロの距離を捜索。そしてその二分後、ギレンは長蛇の列をなして王都の方角へ足を運ぶ、人間達の姿を発見する。


 ギレンは見つからないように、百メートル程離れた所にある小高い丘に体を寝かせて隠れると、人間達の様子を伺う。


 身なりはバラバラで、人間の中にはちらほらとエルフやドワーフも混じっていて、更にその中には、産まれたばかりの赤子から老人まで、年齢も様々だ。


(どうやら軍隊などの討伐隊ではなく、村や街の住人の様ですね。しかし……)


「彼らの向かっている方角には王都がありますね。と言う事は、彼らのこの大移動は王都へ避難している、と言う事でしょうか?

 だとしたら、少々まずい事態になりますね。すぐさま若様に報告しなければ」


 ギレンはその場よりエスタロッサへ〈念話〉を繋がると、確認の結果と状況の報告をする。


『お待たせ致しました。若様』


『ギレン殿、どうでしたかな?』


 ギレンは発見した集団が討伐隊や軍隊の類ではなく、周辺住民である事と、その集団が王都へ向かっていることを伝える。

 すると、エスタロッサはすぐさまそのまずい状況を理解する。獲物が一箇所に集まれば、人間を主食とする"人喰い"の行動はただ一つ、王都襲撃だ。エスタロッサはこうしてはいられないと、ギレンに"テルース大峡谷"へ向かったカレンを迎えに行くように命じる。


『かしこまりました。では、私は我が君をお迎えに参ります』


『よろしく頼みましたぞ、ギレン殿!』


『はっ!』


 エスタロッサとの〈念話〉が切れると、ギレンは早速カレンを迎えに行く為、"テルース大渓谷"のある方角である、後方を振り返る。すると、


(?!)


「こんにちは、魔物がこんな所で何しているのかな?」


 爽やかな笑顔で首を傾げる、一人の人間が立っていた。


(なんという失態! 気配を全く感じませんでした!)


 ギレンは魔法が使えない代わりに、気配を読むのが上手い。その為、大森海においては気配だけで魔物の位置と種類を正確に判別出来き、その気になれば一キロ先の気配も読むことすらできる。

 そのギレンがいくらエスタロッサと〈念話〉で話をしていたとは言え、気配を感じさせずにここまで近く接近するなど、神技に近い。


 ここまで接近された事実に、ギレンは()()()()()()()()()警戒を露わにする。


 目の前の人間の身長は百七十センチ前半、齢は二十歳を超えたぐらいで、セミロングの銀髪を後ろで三つ編みにくくりまとめている。顔立ちは非常に整っており、絶世の美女であるルミナスといい勝負をする、超が付く()()()

 服装は黒と黄色を基調としたロングコートと、膝丈まであるダークブラウンのロングブーツ、魔物の皮で出来ているであろう革製のズボン。そして、ーーおそらくーーアダマンタイト製の膝当てと胸当て、そして、所々に気持ち程度の革鎧を装備しており。腰には刃渡り八十三センチの剣をさげている。

 極め付けは首から下げた、ドッグタグの様なもの。


(あれは我が君と同じ、冒険者プレート。という事は、目の前の人間は冒険者という事ですか。

 気配からしてかなりの実力者。今のところ戦闘の意思は無いようにみうけられますが。しかし、油断ははなりませんね)


 ギレンが目の前の青年の動きや視線、気配からおおよその分析をする中、青年はパッと笑顔になると、思いついたように口を開く。


「あ、そうだ。まだ名前言ってなかったよね」


 目の前の見た事もない謎の魔物を前にしても、ペースを乱さない青年は、果たして自分の言葉が通じているのかも分からない魔物に対し、自らの名を告げる。


「改めて、僕の名前は"ユルト・ギルマ"だよ。よろしね!」


 爽やかな笑顔でそう名乗った青年は、六年前のフルール村にて、かつてカレンが兄と呼んだ人物だった。

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