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悪魔がカレンにわらうとき  作者: 久保 雅
第1章〜最強への道〜
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立ち位置

 バレット家の家は親子三人で住むには少々広い。

 数年前、(セラ)に自分の部屋が欲しいと上目遣いでせがまれ、改築して広くしたそうだ。


 そんなバレット家のリビングにある四人がけのテーブルには、無言で向かい合う四つの影があった。


 この家の主人で"オルド・バレット"。ガタイが良く、背は百七十センチ以上はある。髪は金髪で髭を生やしており、キレイに整えている。瞳は標準的な碧眼だ。

 そしてその妻の"シーマ・バレット"。子持ちとは思えないほど若くて、しかも美人だ。背は百六十センチくらい。髪は金髪で長く腰まで伸び、後ろで三つ編みにしている。瞳の色は深い青色である。

 そして、今年で十歳になるバレット夫妻の一人娘であるセラがふたりと並んで座り、最後に三人と向かい合うように、カレン(オレ)が座っていた。


 セラに頼んで両親を連れて来てもらったあと、セラの父親であるオルドさんに「ここじゃなんだ、リビングに行こう」と言われ、連れてこられたオレは、そのまま半ば強制的に座らせられ。先ほどから無言の状況が続いていた。


(重い! 何これ、どういう状況?! オレなんか悪い事した? これって、謝ったほうがいいの?……この重い状況、オレから話した方がいい、よな?)


 重い空気に耐え兼ねたオレは、意を決して話しかけた。もうなるようになれだ。


「えっとまず、オレの名前はカレンって言います。気を失ったオレをここまで運んでいただいたようで、ご迷惑をおかけしました。それと看病していただき、ありがとうございます」


 すると、ずっと無言でオレを睨み付けていた――ように見えていただけ――セラの父親であるオルドさんが口を開いた。


「えっ? あ、ああ、いや、子供がそんな事を気にするな。オレは当然の事をしただけだ!」


 慌てて、しかも何故か照れて話すその姿に、オレは目を白黒させた。


(なんかさっきと全然雰囲気違うんだが? )


 思っていた反応と違う事に困惑していると、オルドさんの奥さんであるシーマさんが、笑いながらオレに話しかけてきた。


「ごめんなさいね、この人あがり症なの。ましてや魔族(まぞく)の子供なんて初めてだから、どう接したらいいか分からなくて、余計に緊張しちゃってたみたい」


 そう言って苦笑いで謝るシーマさんの言葉に、オレは聞き捨てならない単語を拾い、怪訝な表情で首を傾げた。


魔族(まぞく)?」


「ん? カレンだったか? お前は魔族(まぞく)の子供だろ?」


「そうなんですか?」


「え?」


「え?」


 オレの、何も知らない、という反応を見た二人が顔を見合わせると、真面目な表情に一転。シーマさんが真剣な様子で質問をする。


「カレン君、あなた両親は?」


(両親かぁ……別にいないわけじゃない。と言っても、それは前の世界のことであって、今は正直分からない)


 シーマさんが今のオレの両親のことを聞くが、この世界に来た時、オレは森の中だった。

 この世界の両親の事は知らないし、生きているかどうかもわからない。そもそも存在しているかどうかも怪しい。


(そうか、この世界には()()オレの親がいるかもしれないのか。と言うことは、兄弟姉妹とかもいるのか?  考えてなかったな……おっと、質問に答えてなかったな)


 少し逡巡する素振りを見せ、首を横に振る。


「わかりません」


 そう答えたオレに、続けてオルドさんが話しかける。


「じゃあ、お前は何処から来たんだ?」


「えっと、目が覚めたら森の中で、何処から来たと言われれば森からとしか……」


「自分が魔族(まぞく)だってことは?」


「今さっき知りました」


「何も覚えてないの? 名前は覚えてたのに?」


「名前は覚えてるんですけど、それ以外は何も分かりません」


 それを聞いたオルドさんとシーマさんは、表情を険しくした。


 少し無言の状態が続き、オルドさんが険しい表情のまま重々しく口を開く。


「……記憶喪失ってやつだな」


 そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。実際微妙なところである。

 以前の記憶はハッキリとしているが、この体の記憶はサッパリである。もしかしたら、この体に乗り移った際、本当に記憶が消えている可能性もあった。だが、だからといって困る事ではない為、取り敢えず記憶喪失である事にしておく。そのほうが色々無難である。


「……困ったわね。本当に何も覚えてないの?」


「はい、すいません」


「別にあやまらなくてもいいのよ!」


 それから居間は静まり返り、また無言の状態が続く。重苦しい空気が四人を包むと、


 パンッ!


 と手を叩く音がし、そちらに視線を向ける。オルドさんがニカッと笑い、話し始めた。


「無くしちまったもんは仕方ねぇ。とりあえず記憶が戻るまでここで暮らせ!」


「でも、みなさんにご迷わ――」


 オレが言い切る前に、シーマさんが遮るように話し始めた。


「子供が遠慮するんじゃないの。ましてや記憶喪失なんだから、甘えたって誰も文句なんて言わないわ」


「そうそう。なんか大変そうだし、ここで暮らしなよ!」


「そうだぞ。シーマも言ったが、遠慮するな。それと子供がそんな(かしこ)まった口調で話すんもんじゃない。いつも通りでいい、いつも通りで!」


(こういうの、お人好しって言うんだろうなぁ。まぁ、好意で言ってくれているようだし、少しの間世話になるか)


「えっと、じゃあ、遠慮(えんりょ)なくお世話になります」


「おう、よろしくなカレン。オレのことはおじさんでいいぞ!」


「よろしくねカレン君、好きに呼んでね」


「よろしく〜カレン! あたしはセラでいいよ!」


「ああ、よろしく」


 急な展開ではあるが、今日からオレはバレット家で世話になる事になった。

 最初は「目が覚めたなら、出て行け」とか言われるのではないかと思っていたが。


  いい人たちで良かった。


 そういえば聞きたいことがあった事を思い出し、オレはオルドさんもといおじさんに話しかける。


「おじさん聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」


「いいぞ。オレに分かることならなんでも答えてやる!」


 そう言っておじさんは、自信満々な顔で自分の胸をドンと叩く。


魔族(まぞく)ってどういう種族(しゅぞく)?」


「………………」


 投げかけられた質問におじさんはピタリと固まり、顔から大量の汗を流す。

 何か聞いては行けないことを聞いてしまったのかもしれない。先程からおじさんが挙動不審である。


 あれ? おじさんが動かなくなった! おじさーん!!


「お、おじさんどうしたの?」


「む〜〜〜……!」


 目をそらして質問に答えないおじさんを見かねて、おば……シーマさんが代わりに――申し訳なさそうに――答えてくれた。


「えっとね、魔族(まぞく)っていうのはその、なんて言うか……この世界において魔族(まぞく)は人間の、というか全種族(ぜんしゅぞく)の敵。つまり、世界の敵みたいな……」


「あ〜……そんな感じはしてた……」


 四人の間にまた重苦しい空気が流れ始める。


 大抵の物語だと、魔族は敵というのが王道だ。だから、魔族という単語を聞いた時点でそうではないかとは予想していた。しかし、予想していたとはいえ、実際に言葉として聞いてみると、中々どうして少なくない衝撃を受ける。


(面倒な事になった。こうして転生したのはいいが。よりによって世界の敵と言われる魔族に転生するとはな。

 これじゃ、人前を堂々と歩けないか。見つかった時点で打ち首にあいそうだ。やっと自由に動ける体を手に入れたんだ。そんなのは真っ平ごめんだ)


「世界の敵、か……やっぱり迷惑がかかるんじゃ?」


 申し訳なさそうにそう呟くと、慌てて三人がフォローする。


「だだ、だ、大丈夫だよ! そんなことあたし気にしないし!」


「そ、そうよ! 種族(しゅぞく)なんて関係ないわよ!」


「そ、そうだな。種族(しゅぞく)なんて関係ないよな! それに魔族(まぞく)が世界の敵と言われていても、全部の魔族(まぞく)が悪いわけじゃないだろうしな!」


 最後のおじさんの言葉に、シーマさんとセラの二人もコクコクと頷いている。

 なんだか必死なように見える。


「でも、オレがいるだけで村から疎まれたりしないか? 魔族は人間の敵なんだから、そんな魔族を匿ったおじさん達は反逆者のレッテルを貼られるかもしれないし」


「大丈夫だ、心配するな。こんなド田舎の村に魔族(まぞく)の子供が一人増えたぐらいなんて事ないさ!」


「カレン君は気にしなくていいのよ。子供なんだから大人にもっと甘えなさい」


「そうだよ、村の人たちみんないい人だから心配ないよ!」


「……それならいいんだが」


 渋々ではあるが納得したオレの様子に、あからさまにホッとした三人。オレは自然と笑みがこぼれた。


 そんなオレに同調するように、三人も顔を綻ばせた。


 和やかな空気が包むと、シーマさんがパンッと手を叩き、微笑みながら口を開く。


「さっ、そろそろ夕飯にしましょ。今日は新しい家族が増えたことだし、腕を振るうわよ!!」


「あたしも手伝うよー!」


「じゃあカレン、部屋へ案内する。ちょうど一部屋余ってるしそこを使えばいいだろう」


「わかった、ありがとうおじさん」


「いいってことよ。そんじゃ、部屋に案内するから付いて来い!」


 そう言って歩き出すおじさんの後に付いて行き、オレは居間を後にした。


 おじさんの後ろを歩くオレは、顎に手を添え、先ほど居間で聞いた言葉を思い出す。


(この世界での魔族(まぞく)の立ち位置は全種族(ぜんしゅぞく)イコール世界の敵……随分と面倒な体に転生しちまったらしい。前途多難(ぜんとたなん)なこった)


 どうやらオレは、とことん世界に嫌われているようだ。まったくもって腹立たしい。

 前の世界では死んだように生き続け、こっちの世界では生きているだけで敵扱い。

 おじさん達は気にしないと言ってくれているが。この村にいる他の村人がどう動くか分からないし、それに他の村や街から人が来ないとも限らない以上、警戒は必要だろう。


「着いたぞカレン」


 オレが思考の渦にのまれていると、いつのまにか部屋の前についていた。そこでおじさんがドアを開け「好きに使え!」と親指をビッとサムズアップしながら言ってきたので、オレも親指をビッと立ててコクリと頷いた。


 それから三十分程して食事が出来上がり、四人で夕食を食べた。

 シーマさんの作った料理は絶品だった。特に鶏肉とキノコを使ったシチューは最高だ。


(初めてシチュー食ったが、こんなに旨いのか!!)


 それからオレ達はなんて事こない夜を過ごし、その日を終えた。

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