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悪魔がカレンにわらうとき  作者: 久保 雅
第3章〜天空の巨獣〜
103/201

解放

 目の前に現れたカレンに、ガルフォードと"神威"の四人は目を瞬く。


 もうダメかと思ったその瞬間、突如として現れた青年と少年の間ぐらいの男。

 たった一人で大規模の〈魔力障壁〉を維持し、灼熱の炎を完全に防ぎきる。

 しかも、見た限りではまだまだ余力を残している様子だ。


「あ、あなたはいったい……」


「だ、だれですか?」


 クラリスとロリちゃんの呟きを無視して、カレンは肩越しに後ろを振り返る。


 余裕そうな雰囲気を出しているカレンであるが、ぶっちゃけた話あまり余裕はない。

 加えて頭の中はプチ混乱中だった。


(何故だ。何故エリック兄さんがここにいる?!)


 ユルトは分かる。ギレンから話を聞いていたし、遠くから魔力を感じていた。しかし、何故エリックがいる。


 正直村にいた頃はあまり接点もなかったし、出会ってもセラとの対応の差が大きすぎて、あからさまにカレンのことを嫌っている感じだった様に思える。

 去り際には無愛想な顔で「気を付けろよ」と一言いって頭を撫でるくらいだったし、いつも睨みつけるような視線を向けていた。

 どう考えても好かれている風には見えなかった。


(意味が分からん! どう言う風の吹き回しだ?! それにアイツ、メービス・オプナーじゃねぇか! 幻術魔法してるけど、あの表情からして完全にバレてるだろ!)


 だが、最早遅い。すぎた時間は戻らないし、今回に限って言えばギリギリの状況だったのだ、仕方ない。


(まぁそれは後だな。今は()()か……)


 視線を正面へ戻す。

 その先には障壁によって囲まれ、緋い炎が全てを燃やし尽くしながら竜巻を引き起こしていた。


「流石にもういいだろう……」


 どうしてシェイバ達が必死こいて〈魔力障壁〉で防ぐ事態になっているのか、カレンはこの場に来たばかりで真相は知らない。知らないが、とりあえずこの事態を引き起こしたであろう張本人に〈念話〉を繋げる。


『エスタロッサ、やり過ぎだ。止めろ!』


 〈念話〉が繋がり、聞こえて来た声に反応して、エスタロッサは攻撃を止める。


『おぉ! 父上遅かったですな。見ましたかな我輩の〈塵炎滅却(イフリート)〉は!』


『バカかお前は! 少しはルミナス達のこと考えろ。もうちょっとで全員灰になっちまうところだったじゃねぇか!』


『な、なんと! それは申し訳ありませぬ!』


『まぁ今回はオレが間に合ったからいいが、今度から気を付けろよ』


『かしこまりましっっっった!!!』


『よし、ならお前はそのまま見つからないよう何処かに隠れてろ。それと出来ればオレの正面には行くな、いいな』


 エスタロッサは『了解っ!』と一言告げると、〈念話〉を切って雲に紛れながら姿をくらました。


 エスタロッサが飛び去ったのを確認すると、ほぼ同時くらいに〈魔力障壁〉の効果範囲内で燃え盛っていた炎の勢いがおさまる。


 未だ緋い炎が揺らめき、黒い煙がもくもくと広がる。

 障壁内の視界は完全に遮られ、中を見ることは出来ない。


『紅姫』


 紅姫に魔法を使って中を確認してもらおうかと声をかける。


『悪いがお前様、もう魔法は使えんよ……言っている意味がわかるか』


 実際に魔法が使えないわけではないが、これ以上の無理をするなと言う紅姫の警告である。

 ここまで無理をしたおかげで元に戻りつつあった根源は再び傷が広がってしまっており、現在進行形で発動している〈魔力障壁〉でさえ根源に負担を掛けている。

 これ以上魔法を使って無理をさせれば命に関わる。だから紅姫はカレンに魔法を使わせるわけにはいかなかったのだ。


 今も嫌な音を立て軋みを上げる根源。自分の体故に今の状態がどれほど危険かをカレンは理解していた。その為、正論を言われたカレンは返す言葉もなく了承する。


『……分かった。なら直接確認する』


 そう言って、カレンは開いていた手を握る。

 すると"人喰い"を囲う程の巨大な〈魔力障壁〉は、手の動きに合わせるように収縮してゆき、最後には人間の頭サイズまで小さくなる。

 その後、小さく圧縮された〈魔力障壁〉は縮まる力に耐えきれずに砕け散り、一緒に圧縮されていた空気が衝撃波となって押し寄せる。


「うおっ!!」


「ねっぷうぅぅぅ?!」


「次から次にな――おがっ?!」


 駆け抜ける暴風に乗せられて飛んできた岩が吸い込まれるようにアレンの顔面に直撃。岩が顔にめり込んだ状態で後ろに倒れ、そのままピクピクと体を痙攣させながら意識を失う。


「うわぁぁぁ、アレンさん大丈夫ですか!!」


「はははっ! アレン、お前顔に岩がめり込んでんぞ! スゲェ!」


 自分に飛んでこなくて良かったぁ、と安堵の息を漏らすガルフォード達は、暴風が止むと"人喰い"のいた場所に視線を戻す。


「マグマみたいになってらぁ……」


 "人喰い"をサークル状に〈魔力障壁〉で囲んでいた大地は真っ赤に染まり、ボコボコと煮え滾っていた。


「い、いない……」


「倒した、のか?」


「気配は感じません……」


「灰になった、てこと?」


 ガルフォード、メービス、ロリちゃん、エリックの順に疑問を口にする。


 確かに見た限りではその姿は見当たらないし、気配も感じない。

 大地をマグマに変えてしまう程の圧倒的熱量だ、灰になったと考えるのが妥当だろう。


 倒した。その言葉が頭に染み込んだ瞬間、体の力が抜けたシェイバはその場にへたりこみ、「やっと終わったぁ〜」と息を吐く。

 すると、それにつられて"神威"の四人(アレンは未だ失神している)、ガルフォード、メービス、エリックは安堵の息をはき、「やりましたぁ!」「やだもうメイクがぐちゃぐちゃ、シャワー浴びたいわ」「パーッとやろうぜ! 酒だ! 酒!」「はぁ、何とか生き残ったよ!」「危機一髪であった」「途中参加だったけど、報酬出るよな?」と勝利を祝う様に騒ぐ。


 しかし、次のカレンの一言に――ユルトを除いて――全員が現実に引き戻される。


「まだ終わってねぇよ。何勝手に終わった気になってんだ」


 呟く様な一言。だが、それは異様に大きく響き、騒いでいたガルフォード達を一瞬のうちに凍りつかせた。


「ははっ、やっぱりそう思う?」


 ニッコリと笑顔を浮かべたユルトが問いかける様にそう呟く。


「途中で変な魔力の流れを感じたからな」


「へ、変な魔力の流れ、ですか?」


 ロリちゃんが恐る恐る返事をする。


「ああ。どう言ったらいいだろうな。こう……吸い込まれていく様な――」


「〈魔導庫〉に吸い込まれていく感じ?」


「あぁ……それだ」


 カレンがユルトの答えに同意を示した瞬間、何もない空中に黒い渦が出現する。


「あ……」


 だれが発したのか、絶望故に漏れたその声は、全員の気持ちを代弁していた。


「冗談ではないぞ!」


 メービスが険しい表情で吐き捨てる。


 黒い渦は次第に広がり、中から大小様々な人間の手が無数に飛び出す。

 エスタロッサの攻撃が効いたのだろう、再生はしつつあるが、明らかに治りが遅く、所々で煙が上がっている。


「僕の"勘"また当たったよ。本当に〈魔導庫〉に身を隠してたんだ。あはははっ!」


「ユルト、笑い事じゃねぇぞ」


 ユルトの"勘"が当たった事に、エリックは苦虫を噛み潰した様な顔をする。


 最早体力も気力も魔力も底をついている。そこに倒したと思っていた化け物が生きて現れれば、絶望以外の何者でもない。


 疲労と焦燥が順番に顔に現れ、荒い呼吸をあげる。


 そして、黒い渦から唸る様な声と共に、再生途中の"人喰い"の本体が〈魔導庫〉から這い出る。その瞬間、最後に全員の顔に浮かんだのは絶望だった。


「オギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 焼け爛れた表皮と剥き出しの骨と肉、焦点の合わない血走った目が忙しなく動く。

 焼け焦げた所からは鼻をつく様な異臭が流れ、殺意の嵐がその場を包み込む。


「そ、そんな……」


 ロリちゃんのかすれた声がその心情を物語る。


 世の中甘くない。だれが言ったであろうその言葉は、今まさに目の前で起きていた。


 ガルフォードは自嘲じみた笑みを浮かべる


 メービスは血が滲むほど拳を強く握る。


 クラリスは拳を地面に突きつける。


 ロリちゃんはその場にへたり込む。


 マインはアレンの手を強く握る。


 アレンは顔面に岩がめり込んだまま気絶。


 エリックは忌々しげな笑みを"人喰い"に向ける。


 シェイバは絶望に打ちひしがれる。


(もうダメだ……魔力が無い。体力も無い。手も足も動かない。精魂尽きた。私達は全員、殺される……)


 シェイバも例外なく、現実に打ちのめされた。


 ギレンとの修行の際は似たような状況が何度もある。しかし、修行は修行。現実は厳しく残酷だ。


「ははっ……こんな所で死ぬなんて、情けないぞ……」


 乾いた笑い声がでる。ここが死に場所だ……




「何泣き言ほざいてんだ。勝手に諦めんな?」




「え……?」


 顔をあげれば、目の前には呆れ顔のカレンがいた。


「シェイバ、貴方はいつからそんな弱気になったんです。我が弟子ながら随分情けないですね」


「か、カレンは――!」


「名前!」


「あ、ご、ごめん……じゃなくて、レングリットはここにいなかったからそんなことが言えるんだぞ。アイツは強い。"災禍級(ディザスター)"の名は本物なんだぞ!

 だいたい今迄何処にいたんだ。みんな必死で戦ってたっていうのに!!」


 最初からいなかったレングリットにこいつの強さがわかるか――確かにそうだ。ギリギリで参戦したレングリットに"人喰い"の恐ろしさはわからないだろう。

 三万もいた戦友達はその数を三分の一にまで減らし、その死に方は悲惨と呼べるものだった。


 目の前でぺしゃんこにされ、中身を撒き散らし。引き千切られ、斬り刻まれ、そして喰われていった。   


「何も知らないくせに!」と吐き捨てる様な言葉をレングリットにぶつける。


『まぁ正論じゃのう。"人喰い"の捜索に行って。余計な事に道草食って。後からしゃしゃり出て来たお前様がでかい態度しとれば、そりゃルミナスも怒るわい』


『………』


『じゃが、それはルミナスとて同じじゃ。お前様の今の状況を知らんじゃろう。儂からすればおあいこじゃの』


 紅姫のいう事も一理ある。

 レングリットもここに来る前にダンテに根源をボロボロにされ、耐え難い痛みに今も立ち眩みを引き起こしている。

 しかし、今それを口に出しても言い訳してる様にしか聞こえず、シェイバの機嫌はさらに急降下するだろう事は想像がつく。


 兜の下では怒りに満ち満ちた表情だろう。


(ルミナスは頭に血が上ると人の話聞かねぇからなぁ……)


 内心で深い溜息をついたレングリットは、助けを求める視線をユルトへ向ける。が、ユルトはニッコリと笑うだけで何もしてくれなかった。


 助けてくれよ、と思いつつレングリットは頭を掻く。


(そう言えば、ばあちゃんが言ってたっけ。"男は行動で示すもんだ"って……)


 憤るルミナス、もといシェイバに「そうか……」と一言呟くと、這い出て来た"人喰い"に向き直る。


「確かにお前の言う通りだ……だから、後はオレが一人で殺る。お前らはそこで見物してろ!」


「なっ!!」


「あ、貴方レングリットよね。無茶よ、あんな化け物相手に一人で戦うなんて、自殺行為も同然じゃない。死にに行くようなものよ!」


「このまま死ぬの待てってか。冗談じゃねえ。オレは死にたくねんだ、ほっとけ!」


「……っ!!」


「まぁ、すぐ終わる。大人しく見てろ」


「テメェのその自信はどっから出てくんだよ……」


「さぁ、地獄からじゃねぇか……?」


「ところでレングリット」


「なんだ?」


「君、どうしてそんなボロボロなの?」


 ユルトの唐突な質問に、シェイバ達は今更ながら気付く。


 防具は砕け、身に着ける装備はどれもボロボロ。額からは脂汗が滴り、顔色も悪い。

 よく見れば腕は小刻みに震えていた。

 魔力も乱れており、どう見ても無理をしている様にしか見えない。


(私、悪い事ばかり考えてカレンのこと全然見てなかった……!)


 シェイバは兜の下では唇を噛む。


 絶望に打ちのめされ、怒りに視界が狭まって目の前のレングリットの異常に気付きもしなかった。そんな自分に心底腹が立つ。


「カ、カレン、私――」


「名前!」


「あ、はい。ごめんなさい……」


「お前の質問に関しては後で答えてやる。今は時間も惜しい。さっさと片付けるぞ」


 そう言ってレングリットは自身の〈魔導庫〉に手を突っ込み、中から根滅剣(こんめつけん) 紅姫(べにひめ)を取り出す。


 レングリットが〈魔導庫〉から引き出した剣を見た瞬間、その剣から放たれる異様な力から魔剣である事を理解する。


「おい、あれってまさか、魔剣?!」


「アタシ魔剣なんて初めて見たわ!」


「なんか、空気がピリピリします……」


「まさか、生きて魔剣をお目にできるとは……!」


「あれは確か、あの時持っていた剣か……!」


「アイツ魔剣なんか持ってたのか! ていうかあれってオルドさんが作ったやつじゃね?」


 絶望から一転。

 魔剣の登場に僅かに熱気が上がる。

 伝説とされている魔剣。それを目の前に興奮しない方が無理な話だ。


「カレ……じゃなかった。レングリット、いくら魔剣があるからって"人喰い"相手に一人じゃ無理だぞ!」


「何故だ?」


 レングリットは肩越しに振り返る。


「何故って……そんなの――」


「ああ、そう言えばお前には見せてなかったな。魔剣の()()()()を……」


「本当の、力……?」


 レングリットは無言で頷く。


『ま、まさか、アレをするつもりかお前様!』


『ああ。今の状態じゃ魔法は多用できねぇからな。確実に殺すにはこれが一番最適だろう』


『馬鹿を言うなお前様! そんな事をすればどの道根源が――今度こそ死んでしまうぞ!!』


『オレがこんな所で死ぬわけねぇだろうが』


『よせお前様っ!!!』


 紅姫の制止を振り切り、レングリットは"人喰い"向き直ると根滅剣を胸の高さまで持ってきて柄を握る。そして、ゆっくり鞘から引き抜いた。


 淡い紅色の光を放つその刀身は見るものを魅了する。


 まさに芸術と呼べる美しい姿とは裏腹に、途轍もない力を感じとり、肌が粟立つ。


 伝説に謳われる魔剣。その力を呼び覚ます言葉を静かに呟く――





「――魔剣解放」





 途端、淡い紅色の光を放っていた根滅剣(こんめつけん) 紅姫(べにひめ)は、刀身が血でも塗られた様な真紅に染まる。

 そして、紅黒く禍々しい(もや)を纏い、まるで心臓の鼓動のようにドクン、ドクンと脈をうつ。


 やがて、鼓動は徐々に小さく止んでいき、その鼓動が止まった瞬間、精神を抉る女の叫び声にも似た音が王都一帯を包み、凄まじい音圧を放つ。


「な、なんだこれはっ!」


「わおっ、女の人の叫び声、かな……?」


「もう嫌ぁ!」


「何なんですか、何なんですか!!」


 思わず耳を塞ぎたくなる様な、恐怖という感情を強く浮き彫りにする絶叫。

 その絶叫に当てられたのか、アレンが同じく絶叫を上げながら意識を取り戻す。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


「うおっ! アレンが目ぇ覚ましやがった!」


 魔剣解放――それはそのまま、魔剣の真の力を引き出す事を意味する。

 魔剣や聖剣はその強力すぎる力を普段は眠らせている。よって常に表面的に現れている力は全体の五パーセント。残り九五パーセントは眠っている状態である。


 この力を解放するには魔剣や聖剣、個々によって条件が違う。

 例えば、自身の魔力を糧に力を解放する魔剣などがいい例だろう。しかし、魔剣や聖剣もその強さはピンキリだ。ハッキリ言って魔力を糧にするぐらい()()()()()()()

 より強力な魔剣などになってくれば、解放条件はえげつない。


 カレンの持つ"根滅剣 紅姫"。その能力は根源を直接斬る事の出来る能力であり、保有する力は魔剣の中では間違いなく上位五本に入る。

 そんな魔剣の解放条件、当然優しくはない。

 その代償は死と隣り合わせだ。


 根滅剣 紅姫の解放条件。それは自身の()()()()()()()こと。


「ゴホッゴホッ……ッ!!!」


 既にボロボロであった状態から、さらに根源を根滅剣に喰わせた事で、身体にも少なくないダメージを与え、口から濃度のある赤黒い血を吐血する。


 その場に膝をつき、吐血する口元を手で覆う。


 乾いた大地に赤黒い血が染み込み、むせ返るような血の匂いが漂う。

 体は悲鳴を上げ、意識を手放しかける。


 今回の解放で喰わせた根源の量は全体の十パーセント。故に魔剣の解放率も十パーセントとなる。

 数字だけ見れば大した事はないだろう。しかし、この十パーセントを解放しただけでも、その力は格段に上がっており、寧ろ十分過ぎる程だ。


『お前様!!』


「カ、カレン?!!」


「おい、無茶し過ぎだ!」


 紅姫が泣きそうな声で叫び、シェイバとエリックが駆け寄る。


「少し咽せただけだ。心配すんな!」


「そんなわけないぞ! ボロボロじゃないか!」 


「うるせぇな。大袈裟なんだよ。いいから大人しく見てろ。一撃で終わらせてやるからよ!」


 苦しくない筈がない。それでも、カレンは笑う。


「カレン……!」


 滲み出る脂汗を拭うと力の入らない体に鞭を打って立ち上がる。

 今にも倒れそうによろめきながら前へ前へと歩を進める。


「イラナイ、イラナイ、イラナイ、イラナイ、イラナイ、イラナイ、イラナイ、イラナイッ!!! コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、ゴロスッ!!!」


 呪詛のように殺意を撒き散らす"人喰い"の口から、津波の様な瘴気が溢れ出し、殺気を纏う触手の雨が襲い来る。


 心ををへし折る光景にガルフォード達は声を無くす。


 しかし、そんな中であっても、カレンは凶悪な笑みを浮かべていた。


 そして根滅剣を視線の高さに構え大上段に振り下ろす。


 刹那――





(ほろ)ぼせ紅姫(べにひめ)ェ……!!」





 ――閃紅が走る。

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