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悪魔がカレンにわらうとき  作者: 久保 雅
第1章〜最強への道〜
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〜プロローグ〜

 はじめまして、久保 雅です!

 今回が初めての投稿です。

 自分の考えたものが少しでも多くの人に読んでいただけると幸いです。


 それではよろしくお願いします! どうぞ!

  "千石せんごく 夏憐かれん"それがオレの名前だ。

 どこにでもいる普通の十六歳の日本人。ちなみに女みたいな名前だが、生物学上れっきとした男だ。


  十六歳といえば年齢的には高校生だ。そう、楽しい花の高校生活。友達と馬鹿みたいに遊んだり、部活で汗水流したり、学校の帰り道、彼女と帰宅デートしたり、みんなで集まってテスト勉強したり、将来について考えたり、そんな毎日が楽しく輝かしい青春の日々。


  だが、オレはそんな高校生活というものを知らない。いや、正確には学生生活というもの自体を、オレは知らないし経験したこともない。


  理由? そんなの、オレが生まれてからずっと病院のベットの上で寝たきりの生活をしているからに決まってるだろ。もちろん、友達なんてものもいない。寂しい奴だろ? 笑ったっていんだぞ。

 

  オレは、生まれた時から輪をかけてかなり体が弱い。例えば、ほんの数歩くだけでも動悸と息切れを起こす始末だ。正直病弱なんていうレベルじゃない。死にかけの人間だ。よく十六年も生きて来れたなって、自分自身本当に感心する。

 

 通常の生活をすれば間違いなく三日と持たずにあの世行き。故に両親は少しでもオレに長く生きて欲しくて、オレを設備の整った大きな病院に入れた。そこでなら少しはオレの虚弱過ぎるこの体が治るかもしれないと思ったんだろうな。結果はまったく変わらなかったがな。金と時間の無駄だ。

 まぁそれ以来、オレはずっとベットで寝たきりの入院生活をしているわけだ。まったくオレの気も知らないで、有り難迷惑な話だ。そう思わないか? だってオレは一度も頼んだ覚えはないんだぞ。結局は両親(アイツ)らが勝手に満足したいだけ、自己満足の世界だ。

 これなら家畜の方がマシなんて思っちまうから哀しい。


 この寝たきり生活で出来ることと言えば大人しく本を読むか、勉強する事ぐらいだ。それでも体力の関係上、一日二、三時間で辞めさせられるがな……。

 それ以外のことをしようとすると、体に障ると言われて両親や看護婦達が全力で止めにくる。それはもう鬱陶しい事この上ない。

 コイツらは阿呆か。明日世界が滅ぶわけでもあるまいし。人一人が少しぐらい自由にしたって困る事なんざないだろう。


 だが、両親(アイツ)らにとってはオレが大人しくしていれば、自分達の子供が少しでも長く生きてくれるからそれで良いんだろうな。

 オレが生きていれば両親(アイツ)らにとっては幸せなんだろう。


 だが、オレにとってそんな人生は地獄に等しい。というか現在進行形で地獄だクソが。

 楽しいってなんだ? 幸せってなんだ?


 十六年間ただ本を読んだり、勉強するだけの寝たきり生活か? それとも毎日同じ事の繰り返し、無駄な日々を送る虚しい人生の事か? これを本当に生きていると、胸を張って言えるのか?  いいや言えない。こんなのは生きているとは言わない。少なくともオレは、これを"人生"なんて呼ぶつもりはない。





  ーーこれを死と呼ばずしてなんと呼ぶ!






 そう。オレは生きながらに死んでいる。夢も希望もない。あるのは絶望という名の空っぽのカラダと十六年という情報だけ。


 ただ、婆が生きていた頃はまだ多少はマシだったな。ベットで寝たきりのオレに「こんなんじゃ、人間腐っちまうよ!」「さっさと立ちな! この貧弱!」「人生楽しみたいなら血反吐吐きな!」と言って、よく外に連れて行ってくれた。まぁ、その度に動悸と息切れを起こして、すぐさま病院に連れ戻されたが。オレにとっては唯一生きていられる時間だった。

 風を感じて、陽の光を浴びて、外の景色を眼に焼き付けて、自分に命がある事を実感していた。だから、オレは婆ァに申し訳程度の感謝はしているし、ほんの少しは心を許していた自覚がある。だが、そんな婆も一年半前に他界しちまった。餅を喉に詰まらせたそうだ。

 なんの脈絡も無く、呆気ない死に方だ。これに関してはつい「……んなアホな」と呟いちまった。それと同時に、"死んだ"という事実が酷く羨ましかった。オレも早く死にたい。


 ああ、そうそう。話は変わるが、両親とは別に、毎日飽きずに見舞いに来る奴がいる。そいつは自称幼馴染みの女でな、正直なところ鬱陶しい。毎日毎日暇人かって話だ。

 だいたい、こんな病人に毎日会いに来て楽しいのか? もしオレが逆の立場だったら面倒で仕方ないがな。そう言った意味で、その自称幼馴染みの女は余程の物好きとしか言いようがない。


 ああ、死にたい。とにかく死にたい。こんな地獄みたいな世界にいたくない。

 ハッキリ言って産まれてきた事を酷く後悔している。こんな事になるなら産んで欲しくなかったというのが本音だ。


 生きていれば必ずいい事がある。そういや、死んだ婆ァが口癖のようにいつも言っていたのを思い出した。確かにその通りだろう。ただし、それは()()()()()()()()()()()()()の話だ。


 生きていれば幸せ? は? ふざけんな、幸なんざ生まれて十六年、一度も感じた事なんざないってんだ! オレは病院っつう檻の中に閉じ込められた家畜だ。まったく、何度自殺を考えて実行したことか……その度にオレの両親や周りの人間から「死ぬなんて馬鹿なことはやめなさい! 生きることに希望を持ちなさい!」「沢山の人が君の幸せを願っているんだ!」と言われた。

 は? 死ぬなんて馬鹿なこと?  希望? 幸せ?  はっ! 笑わせんな! そもそもそれがおかしんだよ。生きていれば幸せ?  死ねば不幸?  そんなもん誰が決めたんだ!

 ていうかオレの状況を目の当たりにして、よくそんな事を自身満々にほざけたもんだ。オレのように生きていれば不幸で、死ぬ事が幸せな奴なんて世の中石ころのように転がってんだろうよ。生きる権利があるなら、死ぬ権利だってあっていい筈だろうが!

 だいたい、希望を持てってなんだ? 十年以上ベットの上に繋がれて苦しい思いして、何も出来ない、同じことの繰り返しをする人生に生きて、未来になんの希望を持てってんだ?  まさかそれを本気で言ってんのか? そんな事が口から出るのは、健康な体に産まれて、何の不自由もなく、人の気持ちも知らない偽善者だけだ。


 だいたい気付けよ。何でオレが何度も自殺しようとしたか……死にたいんだよ! もう生きていても苦しいだけなんだよ。

苦しくて苦しくて苦しくて……生きていることが辛い。もう、頼むから死なせてくれ。


 オレは生きながらに死んでる。今更このオレという存在が死んだところで、世界になんの影響もない。


 だから――






 ーーやっと終わる。





 オレの中のか細い命の火がゆらゆらと揺れる。風が吹けば容易く消える、弱い火だ。

 正直、こんな体で十六年もの間良くもった。いや、此処まで生きてしまったと言うべきか。


 毎日毎日、絶望の太陽が昇り、長い長い一日が始まる。そして、数えきれない夜を越えた。だが、それも今日で終わる。

 オレはこの地獄から解放される、やっと死ねる。やっとオレは、





 ーー幸せだ。





  周りで泣き叫ぶ両親だった奴らの事など気にならない、気にしない。寧ろせいせいした。

オレにこんな生き地獄を味あわせた奴らなど泣き叫び絶望すればいい。


 それに最早もはやオレには、周りの声など届きはしない。


 意識は薄れ、視界もぼやけて来ている。


 何より、今のオレは歓喜に満ちている、この地獄から解放されるという歓喜に。


 待ちに待ったこの瞬間、多幸感が溢れ涙が滲む。


(あぁ、長かった……やっと………やっと、死ねる………。

 だが、もし……もし…………次が、あるなら……こん、な

 弱いオレじゃ……な……くて……もっと……強く……生まれ変わり……た………い)






 ーーもっと強く、自由に生きたいーー






 その言葉を残し"千石 夏憐"は静かに息を引き取った。


 そしてその強い願いが……







 ーー世界を渡る。


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[良い点] 作者の好き嫌いがはっきりしている [気になる点] なし [一言] (感想に書く必要間ない感想でただの自己満足なので見なくて良いです) 正直なところあまり合わない。親は普通に良い人だった。で…
[良い点] 待って、第1話が共感出来すぎて草。俺はずっと寝たきりってことはないけど両親がクソすぎて鬱病になって何度も自殺しようとした。俺以外にも仲間が居て良かった。同じ思いを持ってるやつが居て良かった…
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