角
角恐怖症の男がいた。
予め断っておくが、"つの"ではなく"かど"の方だ。
何でも彼は、角が極端に苦手らしい。
その角の凹凸に拘らず、とにかく角を見ると何とも言えぬ恐怖に襲われるのだという。
だから彼は家や持ち物の角という角にカバーを掛けている。丸みを帯びていれば大丈夫なようだった。
ある日、彼は友人があの「角の無くならない消しゴム」を使っているのを見て、非常に気が動転した。彼は友人に詰め寄った。曰く、そんな角ばかりのモノを持っていてよく正気なもんだ、曰く、デザイン性を追求するあまり丸みを失ってしまっている、と。
友人は言った。
「そんな言い方、他の奴にしたら角が立つぜ」
彼は失神した。
くれぐれもドアの角に足指をぶつけませんように。
忌避のトリガーは案外そんなものなのです。