風
風
自転車をびゅんびゅんと飛ばす
耳の中でひゅうひゅうと口笛が鳴る
耳が千切れるかのようにひりひりと痛む
突き抜けるような青空に向かって
私は風になる
冬
さぁーっと桜の花びらが
何千枚も空中に舞う
ゆっくりとゆっくりと舞い上がった花びらが
一枚一枚散ってくる
空からの贈り物のように
春
緑の風
草の、花の、大地の香り
湿った熱い大気の川がろうろうと流れている
陽炎がめらめらと土を焼き
私は熱い息を吐きながら
真っ白くそびえ立つ入道雲頂上を目指す
夏
狂った犬のように吠えながら
夜半に家の周りを駆け巡った
庭にめちゃくちゃに散らばった赤や黄色の葉が
乳色の朝に不釣合いに鮮やかで
悲しくさせた
秋