スクリーンの少年
-仏国軍 異能者 選考評議会にて-
「それでこの異能覚醒者 G-507の様子はどうだ?」
大きなドアを開けて男が入ってきた。
「はっ!G-507についてですがどうやらダブルアビリティの様です」
「そうか」
男は革製の椅子にふんぞり返り映し出されるスクリーンを見た。映っているのは路地裏で少年に襲いかかる男性だった。
「ただいま、中継によって映し出されています」
「変化と再生か…」
「どうやら彼は一線級の異能者みたいですな。これは戦果が楽しみだ」
「後ろの少女の異能は射撃…ありふれた異能だ。下らん」
「まぁ…どのみち仏教徒ではない。バラモン教だ」
「バラモン教…懐かしい名前だ。まだ信者がいるとは」
その時、スクリーンに映し出される男性のコードの下にもう一つコードが追加された。
「なっ!これは…仏教徒だと!」
この時代、三国は宗教の信者達をコードによって集計していた。それは管理の容易さと信者を改宗させていくうちに把握が困難になった為である。
スクリーンには仏教徒のコードが映し出されていたが、仏教徒である異能者のコードだけではなく襲われていた少年にもコードが新たに追加されたのだった。
「今、さっき信者になったみたいですね。このK-347は」
「ちっ…我々に刃向かう異教徒を始末させる為に信心深い奴を向かわせたのに」
「まぁ、すぐに異能に目覚めるとは限りませんし」
椅子に座る男の隣で書類に目を通しているとスクリーンが真っ赤になった。
「なんだこれは!」
「どうやら…中継カメラに血がついたんでしょう…別視点のカメラに切り替えます」
切り替わった画面に映ったのは身体の胸から上が判別不可能になった遺体とその遺体の上に立つ血まみれの少年。そしてそれを眺める少女の姿だった。
「なっ!」
椅子に座る男は慌てて画面のコードを確認した。すると先程まで映っていた異能者のコードが消え少年のコードのみだった。
「G-507…まさかK-347がやったとでもいうのか…?」
「今すぐ、K-347を連れてこい!」
「はっ!かしこまりました!」
画面には少女の手を取る少年の姿が映ったところでスクリーンの映像を切った。