6 武器の名は
―――「なるほど記憶喪失ですか。」
食堂へと移動し軽く病人食を食べながら俺たちは目覚めてからのことを説明した。
その間ロレッタは深妙な顔をしながら話しを聞いていた。
「恐らく事故による一時的な記憶障害だと思われますが。記憶障害に効く特効薬も存在しませんし、このまま様子を観ることにしましょう。」
「ぶっははははッ、ポーション頭にぶっかけたら治るかもよ?」
「ッ!、ギン。レイ様の前でその態度。あまりにも無礼ですよ。」
「ははははッ…いやーごめんごめん。こんな面白い展開になるとは思わなくてさー。」
「はぁ…。あとモモ、ギンこのことはくれぐれも内密にね。」
「それはわかってるって、敵対組織にバレるとヤバそうだもんな。」
「ええ、そうね。ただでさえ病み上がりだというのに今はレイ様のラグナロクも行方不明だものね。」
「ラグナロ…ク?なんですそれ?」
「ええーとですね。さっきお二人が戦っていたような武器のことをラグナロクって私たちは呼んでるんです。」
「そうね、モモ。さらに詳しく言うと、このラグナロクは魔力も力も持たない人類が辿りついた神の力。能力によっては大魔法にすら匹敵するわ。
契約した本人しか使うことができない特別な力よ。
だけどデメリットも存在するの、契約するとき自身が持つ潜在魔力を半分失う。そして武器が破壊されたとき失った魔力は返っては来ないということ。」
「それって一生魔力が半分になるってことなのかな?」
「そのとおりです、レイ様。
さらに、武器を複数持つものは元々魔力の量が多かったものに限られます。
例えば二つ目のラグナロクを精製した場合、半分の半分つまり4分の1しか魔力を注入することができない為、常人より魔力の量が多くないと作ることすらできないのです。
しかも注入できる魔力が少ない為大抵1つ目を凌ぐラグナロクは精製されません。」
「私みたいに2つ持ってるなんてすげーレアなんだぜ!」
「確かにレアですが使いこなせなければ意味ないでしょ。」
「むー、だから練習してたんだろー。」
「話が脱線してしまいましたね。そのラグナロクですが、もちろんレイ様も契約し持っていました。」
「それが事故で行方不明になったと…申し訳ない。」
「いえ、あの時護衛を付けなかった私たちにも責任がありますので…。」
空気が重くなってしまったな。
「あ~、そういえば俺の行方不明になったラグナロクてどんなやつなの?」
「レイ様が失ったラグナロクは2本、両方とも遥か東の国で使われている"刀"という武器になります。」
「へぇ~2本か、じゃあ俺も二刀流使いなのかな?」
「いえ…レイ様は十刀流使いです…。」
「…ふぇっ!?」
補足:武器の種類は契約時に勝手に決まる。
:この世界のポーションは性能が悪く飲めば治癒能力が少し上がる程度、レ
イは眠っている間ポーションの点滴を打たれていた。