5 武器
―――試合場に辿りつくと同時に試合が始まった。
火花が散り二人の激しい戦闘が始まったかと思うと、銀髪の子の右腕から炎が出て腕を包み込む。
「ちょッ、モモ?あの銀髪の子の手燃えてない?」
あまりの非現実的な光景を前にし問いかけずにはいられなかった。
「はい燃えていますね。あれがギンさんの能力ですからね。」
「・・・能力?」
「えーとですね。私達が魔法のような特殊能力を使うことができるのは血の契約を交わしているからなのです。儀式で魔法石と契約を交わし、その石をエルフの錬金術を用いて武器とし精製させるのです。」
「へぇ~じゃあ武器を使うことで魔法みたいな能力を使えるわけか。それがないと人間は魔法は使えないってこと?」
「いえ、人間の中にも極まれに魔力を多く持って生まれるものがいます。そのような人間は大魔法を使うことも可能ですが、魔力を多くもって生まれる確立は100万人に1人と言われています。」
「じゃあ俺たちは魔力を持ってないってこと?」
「いえ、大抵の人間は少量の魔力を持っていて契約により力を増大させているということです。簡単な魔法でしたら使える人も多くいますよ。」
(なるほど、あれは武器あっての力というわけか。すごい力だ。それにしても炎に包まれているが熱くないのか?)
そのまま攻防は続き、ついには銀髪の子が壁に叩きつけられ地に倒れこんでしまう。
「――まだやりますか?」
槍を持ったブロンドの子が槍を突きつけ語りかける。
銀髪の子の左手の短剣が"ガチャリ"と音を立て淡く光る。
「いや、降参だ。・・・私の負けだ。」
両手の光は消え両手を上げ降伏のポーズを取る。
どうやら決着が着いた様だ。
「あ~あ、負けちまったよ。これであのときを含めると5連敗だ〜。」
短剣をしまい悔しさなど微塵も感じさせない笑顔を浮かべる。
「ギンは能力に頼りすぎる気がありますね。」
「むー、私の得意とする戦法は闇討ちや奇襲なんだよ。」
「それよりご主人様が目を覚ましたみたいですよ。」
ブロンドの子がこちらを向き軽くお辞儀をする。
おっ本当だ、と銀髪の子も立ち上がり手を上げ俺たちの所へ歩いてくる。
「レイ様、一考に目を覚まされないので心から心配していたんですよ。体調のほうはどうですか?どこか異常などはございませんか?」
「ご主人〜。ご主人が死ぬなんて微塵も思ってなかったけど全然目を覚まさないし心配してたんだぜ。」
両者とか俺のことを心配してくれていたようだが、
むしろ心配したのはこっちだ。あれほどの戦闘をして体は大丈夫なのかと。
だが、二人ともケロッとしているところから既にダメージは抜けているようだ。
何と返していいか返答に困りモモの方に懇願の視線を送る。
「えーとですね。こちらの美しい長髪の綺麗な方はロレッタさんです。で、こちらの戦闘狂で無礼な人がギンさんになります。」
「おいおい、その言い草はないだろ。てかなんで今更自己紹介なんてしてんだよ。」
「モモさん、何か異常事態が起こっているようですね。とりあえずレイ様も病み上がりですしゆっくり休める場所に移動して、ポーション漬けであまりお腹は空いていないかもしれませんが食事にしましょう。」