2 目覚め
「レイ様もしや事故の後遺症で記憶喪失に・・・」
事故?記憶喪失?
たしかに記憶がない、思い出そうとしても頭に何も頭に浮かんでこない。
俺は事故にあって眠っていたのか・・・。
通りで体が痛いわけだ。
よく自分の体を見て見ると腕や胸に包帯が巻かれている。
「そのようだね、俺はどうやら記憶がないようだ。」
メイドの悲しそうな顔を見ると自分が悪いことをしてしまったよう申し訳なさがこみ上げてくる。
だが現状を知らなくては前に進めない。
「君の名前はモモで俺の名前はレイでいいのかな?」
「はいッそうです。わたしの名前はモモです、レイ様の名前はロバート・レイです。レイ様は馬車で王都に向かっていたときに事故に遭われて5日間も眠っておられたのですよ。」
またメイドのモモの目には涙が溜まり潤んでいた。
「あ~泣かないで。ハハハッ俺もドジだなぁ事故で5日も眠ってたなんて。でも今は大丈夫だよ、ほらッ」
モモの悲しい顔を見たせいか腕を曲げ力こぶをつくりおどけてみせた。
「でもあの事故は・・・。いえ、モモはレイ様が目を覚ましてくれただけで本当に・・・。」
あ~結局泣いちゃったよ。
だが不謹慎にも泣いて目を擦っているモモはかわいい。
俺を心配して泣いてくれる人?がいるだけでも俺は幸せ者なのかもしれない。
ん?そういえばネコ耳と尻尾がついているがモモは人間なのか?
「モモ・・・さん、そのネコ耳と尻尾って本物なのかな?」
「モモって呼んでください!」
泣きながら強い口調で抗議されてしまった。
「モモは・・・そうです。モモは獣人ですから。」
「へ~。獣人てもっと全身毛だらけのもっとケモノぽいわけじゃないんだ。」
「いえ・・・。モモみたいなのは獣人の中でも異端です。普通の獣人は全身毛だらけの顔も獣のような顔をしているのですが、極まれにモモのように人間に近い姿をした子供が生まれるんです。」
「モモみたいなのは普通の獣人に比べ力も弱く姿が人間に似ていることから大抵捨てられるか殺されてしまいます。」
さらにモモは捨てられたところを俺に仕えていた元執事の老夫婦に拾われ育てられて老夫婦の死後は俺のメイドとして仕えていることを語ってくれた。
老夫婦には子供がいなかったこともありモモはかわいがられて育てられた。
さらに俺は幼いころはモモを妹のようにかわいがっていたらしい。
「お父様とお母様の遺産は少しありましたが、獣人のモモが何年も生きていくのは無理でした。そんなときレイ様がメイドとしてモモを雇ってくれたのです。」
涙目だったモモの顔は今では笑顔になり頬をわずかに赤く染めていた。
どうやら記憶を失う前のレイも悪いやつではないようだ。
「それで、俺はメイドや執事を雇うてこと大層な身分の人間なのか?」
貴族か何かか?頭がバラ色に染まっていく。
「はいッ、レイ様は身分の高いお方ですよ。なんたって王都を収めるギャングのボスですからね。」ニコッ
残念ながら悪人のようだ。
バラ色の人生終了である。
バラ色がどころか俺は血で染まっているのだろう。