第2話 不自然な言い争い
短め。
どこで行を分けるか、結構悩みます。
皆さんおはようございます、マリーです。
今あなたの後ろにいるの。
そんな私の現在地はどうでもいいとして、現在結構切実に困っています。
赤ん坊に生まれ変わって(?)早2ヶ月。
なんと私、両親の重大な秘密を聞いてしまったのです!
あ、後ろ云々はもちろん冗談ですよ?
私の最近の日課は、昼寝をするふりをしてメイドさんたちと乳母さんを部屋から追い出して――彼女たちは私の昼寝の時間には必ずどこかへ行くのです――魔法の練習をすること。
明かりをつけたり消したり掃除をしたり、あらゆるところで魔法が使われているので魔力というものは案外簡単に感知できた。
なので、それを体中に巡らしてみたり明かりとか火とか水の玉として手から出してみたり、ぬいぐるみに魔力を通して踊らせてみたりと色々練習しているのだ。
結構難しいのよ、これ。特に最後のとか。
いつか何体ものお人形を一気に操って一人でごっこ遊びすることがささやかな夢なのです。
そこ、虚しいとか言わない!私以外の子供を見たことがないんだから仕方ないでしょ!
とまあそんな日課があるわけなのですが。
いつものように眠いふりをしてメイドさんに抱き上げられ、このままベッドに向かうのかと思いきやまさかの両親登場。
初の同時登場ですよ奥さん!何かあったのかね?
説明なんてしてくれるわけもなく、そのままお母様に渡され廊下へ出て――お父様はその間お母様を恨めしそうな目で見ていた、多分私がお父様じゃなくてお母様に手を伸ばしたからだ――初めて入る執務室っぽい部屋へ。
ふぉ~、かっくい~とか思いながら部屋を眺めていたら、お父様とお母様の話し合いというか言い合いが始まりまして。
なんか固有名詞っぽいのが色々出ていたからあんまりよく分からなかったけど、今夜この屋敷は襲撃されるらしいのです。
一大事じゃん!って思ってたんだけど、よくよく聞いてみるとお父様とお母様の自業自得くさい。
なんでもお父様は奴隷を買うのが大好きで、頻繁に奴隷商人から綺麗な年頃の娘さんを買っているらしい。
んで、この度新しく買った奴隷さんが亡国のお姫様で、お父様はその方を買った挙句にちょめちょめしちゃったそうな。
お姫様を取り返して故国を再興しようとしている地下組織がそれを知っちゃって、奪い返そうと計画している、と。ついでにお姫様におイタしたお父様に天誅を、と。
お母様はお洒落が大好きで、頻繁にドレスやら宝石やら自分を着飾るものを買っているらしい。
高いものでも気に入れば躊躇せずに買うらしく、危機感を覚えたお父様はお母様用に割り当てられたお金以上は出さないと宣言したところお母様はこれに納得し承諾。
なるべく超えないように頑張って、今までそれは成功していたんだけど、少し前から少しずつお小遣い――というには多すぎるみたいだけど――が足りなくなってきていて、ちょっとずつ何処かから借りていたんだと。
そうして毎月のように、お金を借りては次の月のお小遣いで返し、その月にまた足りなくなって先月より多い額を借りて、と繰り返している内に返せないほどに借金は膨らみ。
少々返済を待ってもらっていたところ、待ちきれなくなった金貸しさん(?)が地下組織に便乗し屋敷を襲い金目の物を持っていく計画を立てている、と。
以上、責任のなすりつけ合いと言い訳の怒号から繋ぎ合わせて得た情報でした。
自業自得じゃないか!!!!
なるほど…確かにお父様はいつもお肌ツヤツヤで潤っていたし、お母様は常にお綺麗で同じドレスを着ているお姿は一度として見たことがなかったが…それにしてもこれは酷い。
子供の目の前で怒鳴りながら言い争っているのもなお酷い。
わざとらしすぎて目眩がします。
どうしてくれましょうね?
というかこれ、どうして私に聞かせたのかな?