激情
空気が淀んで見える。体が重い。蜃気楼のように視界が眩む。
時雨「(何なんだよ。糞っ!)」
手足が拘束されている。口も塞がれて息苦しい。
時雨「(舌を噛みきらない様にってことか?)」
顔を白い布で完全に覆った男が覗き込んでくる。ポッカリ開いた穴からこちらを見る目がガンをとばしているようにジトットしていて胸糞悪い。
マスクの男「俺は人間軍の医療スタッフだ。Dr:Kと呼んでくれ。」
精一杯このDr:Kとやらを睨む。毛が逆立つのを感じる。殺気と言う殺気をこいつに放つ。
Dr:K「おっと、すまないね。これでは話ができない。それにしても凄い殺気だあいつと良い勝負だ。」
口が解放される。空気を名一杯吸う。
時雨「何がしたいんだ?いや、僕に何をした!?」
Dr:K「君は人間軍の希望だったよ。君は我々にとって光でもあり影でもある。」
牙を剥く。目が限界まで見開かれる。今にでもこいつの喉笛を噛み千切りたい。
時雨「質問に答えろ!僕に何をした?」
めくられた布の下で奴の口が屈託なく笑っている。喉をククッと鳴らしている。
Dr:K「君に死なれてしなっては困る。だから我々は考えた。君を混合動物にしてしまおうとね。」
時雨「キメラ?…」
頭が働かない。絶望が並み寄せてくる。溜まった感情が弾けそうになる。
Dr:K「吸血鬼と戦うため人間は狼と契約を交わした。だが一人の人間に一匹の狼の魔力は強大過ぎて扱えん。本来ならば狼の魔力は多くの人間にスパイスのように振りかけ一定時間魔力を上げるものなのだよ。」
時雨「つまり僕には…」
Dr:Kの口が裂けたように笑った。
Dr:K「君の体には狼丸々一匹が封じられている。大変な作業打ったよ。」
思考が止まる。目の前が真っ白くなる。あぁ、あの感覚だ。なにかに支配される感覚。僕の横に黒い霧を纏ったなにかが立っている。何度も現れたあいつが。
時雨「よぉ。またお前か。」
ガシャーン!!!ベットが崩れる。
時雨「ざまぁざまぁぁ。ケタケタケタ!」