エピローグ―02
*わたし
「やっぱモトくんと向かいで食べるなんてやーだー! そっち行くー!」
「うわぁあああ! 来んなぁあああ!」
すまん、出落ちた。
でもやっぱり、モトくんとは向かい合ってお食事するより、横に並んで一緒の方向を見てお食事したいじゃないか。恋人ってのは見つめ合うんじゃなくて一緒の方向を見つめるものなんだと、どこかの偉い人が言っておりました。うん、何となく深いこと言って誤魔化せた感じがするぜ。
ということで、モトくんと二人の打ち上げパーチーで『あじすけ』に来ていた。何を打ち上げるのかって? そりゃーお金を稼げないわたしとかモトくんとのケンカとか、そういうモヤモヤしたのだよ。まとめてお星様にして、明日への活力を得るのさ。
先日、『あじすけ』で初バイト代を貰ったので、今日はモトくんと二人で『元村書店』の親父さんのところへケンカを売りに……もといバイト代の一部を貢ぎに行ってきた。わたしだって働けるんだぞぅ! ってところを、見せなければと思ったのだ。
元村父は複雑な表情でわたしの差し出した封筒を眺めていたけれど、基本的に温厚な人だったから、最終的には「ありがたく頂戴するよ」と苦笑してくれた。なので、今日はわりと素敵な一日になった。
偶然、書店でニートくんに会えたこともあるし。
やっつけなきゃ、っていうわたしの忠告をきちんと理解してくれていたみたいで、良かった。ニートくんの小説は部屋に置いてきてまだ読んでいないけど、後でモトくんと一緒に読んでみようと思っている。果たしてこの二人でまともな読書タイムを取れるのかという疑問は、今は保留ですよ。
「さぁさぁモトくん、早速リュウコさんのお好み焼き教室を始めるぜ!」
「え、何ですかそれ」
「普段は見せない大技を披露するんだよ。ヘラとお好み焼きで」
「……なんか嫌な予感がしますけど」
「気にすんなー! さぁまずはこの技! 行くぜ、大車輪!」
ポーン!
「うぉおおおい! お好み焼きどっか行っちゃいましたよ!」
「安心しろ! 天井にくっついてるだけだ!」
「お店で何やってんですか! ここウチじゃないんですよ!」
「バイトしてるんだからウチみたいなもんだ! ほら、落ちてきたじゃないか!」
「ホコリ付いてますけどね! どーするんですかこのお好み焼き!」
「愛するモトくんにプレゼントしちゃうぜ!」
「いらねぇ! 自分で食べなさいよ!」
「ハッハッハ! 今日はわたしが金を出してるんだ! 文句は言わせん!」
「卑怯だ!」
ほらね、こんなこともあるからお金は大事なのですよ。うん、用例がおかしい? 知らん知らん。
何だかシチュエーションが最終回っぽかったので真面目成分を含ませてみようかと思ったけど、わたしとモトくんのノリじゃ無理だった。
その代わりに生まれた会話の投げ合いがこんな感じなので、そちらをどうぞ。
「はいもときゅん、あーん」「あー……何やらせてんですか!」「気にすんなよーいつもやってるじゃないか!」「やってませんよそんなバカップルみたいなこと!」「みたいだとー! 今さらバカップルじゃないと言い張れるのかお前!」「いや……言い張れませんけど!」「そこ! 堂々とする台詞ちゃうよ!」「すいませんね! リュウコさんに流されちゃって!」「きゃー! 流されちゃうモトくんかわいいー!」「あっコラ! 何するんですか!」「きゅーん!」「だから場をわきまえろアンタは! 公衆の場ですよ!」「じゃあウチに戻ってから二回戦するぜ!」「だからそれセクハラ!」「もーとーきゅーん!」「今度は何だ!」「わたし、よっちゃったぁ」「酔った? お酒なんか飲んでないでしょ!」「モトくんという名のお酒をぉ」「色っぽい声出すな! あとそれ上手くない!」「前にモトくんにビール飲ませたときは傑作だったなー」「やめて下さい! 黒歴史なんですから!」「リュウコ、脱げ! なんて言われちゃったー。キャーキャー!」「飲ませたリュウコさんが悪いんでしょ!」「でもモトくんにも、そういう欲望があったのねー」「や、やめて下さいよ!」「正直に言えよぅ、変態くん」「ありますよ! あって何が悪いんですか!」「きゃー! モトくんが開き直ったー!」「開き直らなきゃやってられませんよ!」「じゃあ、今日もモトくんに襲われちゃうのかなぁ」「今日は襲いませんけど!」「けど?」「そ、そのうち……」「そのうち?」「……言わせんな恥ずかしい!」「モトくん顔真っ赤! かわいいー!」「うるさいですよー!」「ふあぁ、もとくーん」「今度は何だ!」「わたし、ねむくなってきちゃったぁ」「だから色っぽい声を出すな! 寄るな触るな抱きつくな!」「もとくんがいっぴきー。もとくんがにひきー」「もういいや、早く眠って黙って下さい」「りゅうこさんがいっぴきー。りゅうこさんがにひきー」「地獄絵図のようですね」「みんなでいちゃいちゃー。こづくりー」「どこの地獄だそれ! ボケと突っ込みの嵐でクソうるさいですよ、その世界!」「あ、やっぱ寝るのやーめた!」「今度は何ですか」「一回戦に突入だー!」「もういい加減にして下さいよぉおおお!」
モトくんと育むらぶは続けたらキリがないのでここらへんで。
一つ言うことがあるとすれば。
こんな会話が絶えない限り、わたしとモトくんはずっと幸せであり続けるということだ。




