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校長先生の秘書  作者: しーもあ
プロローグ
1/17

入学式の朝

「いってらっしゃい」


 母の声を背に、私はドアを開ける。

 マンションの外へ出ると、私は親父のおさがりであるトレンチコートの襟を立てた。

 四月といえども北国はまだ寒い。

 歩道は乾いていたが、道路脇には黒ずんだ雪が残っている。

 しばらく歩いていると、洗い立てのペンギンのような真新しい制服を着た、いかにも新入生といった高校生たちがちらほら見え始める。


 私の同級生になる連中だ。

 寒いのにみな制服姿か――。

 殊勝だな。


新雪しんせつ学園高等学校』と書かれた校門をくぐると、奈緒がいた。

「おはよう、真路まろ

「おっ。待っててくれたのか」

「そんなわけないじゃない。たまたま、真路の顔が見えたからあいさつしてあげようと思ったの。そのコートなんか探偵っぽいね。買ったの?」

「いや、親父の着てたやつ。ハードボイルドぽいだろ?」

「うーん、よくわかんない。でも似合ってるよ」

「サンキュー」

「また三年間一緒だね」

「だな。よろしくな」

「うん。うれ……」

 奈緒がうつむいて何かを続けたが、あちこちでできている人の輪の歓声にかき消された。


「ん? 何かいったか」

「さあ、行くよ」


 私の問いかけを無視するように彼女は顔を上げ、スカートの裾をひるがえすと、『入学式』と書かれた立て看板のある玄関に向かった。

 私は一度振り返り、くすんだ鉛色の空を仰ぎ見てから彼女のあとを追った。

 

 それが私の高校生活のはじまりだった――

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