狭間
………ぁ…………けて…………やぁ
どこかで誰かがなにか言ってる。
でも……知ってる人じゃ、ない。………いや、知っている人か?
誰、だろう………?
なんだか頭がうまく回らない。ぼんやりしてしまう。
誰、だっけぇ?
何をするわけでもない。ぼぉっと立っているだけで疲れた。
だけど座るという改善策も何も思い付かなかった。
………て!…………れか!
どこかで………また誰かがなにかを言ってる。
うるさいなぁ
何も考えたくないのに
もう…………疲れたの
ほおっておいて、くれないかなぁ
うるさい、よ………
もぉ何もしたく、ない………
どこかに行ってよ。
あんたが誰でも、もぉいいからさぁ
どーでもいいから
どっか行って
もっと向こうに行って…
っ!やっやだぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!
パチンと耳元でなにか割れた気がした。
同時に霞みがかっていた頭も晴れ渡る。
〝いやぁ!やめて!壊さないで!こっちこないで!………誰かっ!誰か助けて!いや!!………やっやだぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!〟
耳をふさぎたくなるくらい悲痛な叫び声。
わたしは何をしていたんだろう。
助けを求めている人をほおっておくなんて。
ぐるりと見渡すと真っ黒一色を背景に人影がちらほらと見えた。
でもだれも動こうとしない。
この声が聞こえていない見たいに………。…………?
何かが引っかかった。
そうか。さっきのわたしみたいにほんとに聞こえてないのかもしれない………。
でも。
だとしたら余計ヤバイ。
あの声に気づいてるのわたし一人かもしんないじゃんか!
それに!あの声!!
ちっちゃい女の子だった!!!!
なにやってたんだ、わたしは!!
自己嫌悪に駆られながら、わたしは声のした方へ駆け出した。
その先に何があるのかも知らずに。
更なる悲しみが、後悔が後でわたしを襲うことも知らずに。