うそ
遅くなりました。
なっ……!
思いもがけない出来事。
――どうし、よう……
くるりと半回転し、歩き出そうとした……そう、そのはずだった。
ばれない内にこの場を離れたかった
もう少しこのぐらぐらした気持ちが落ち着くまで。
あの言葉をもう少し、忘れられるまで。
なのに。
どうして。
どうしてこうなっちゃったんだろうう。
ほっと張り詰めていた気を抜いたのがいけなかったの?
後ろを向いた瞬間、くんと頭が引っ張られるような感覚。
そして、続く音。がさりって。
嘘、でしょう……?
見つかりたくなんて無いってのに……!
そう思っても既に時遅し。
慌てて振り向いた先には――純麗さん……。
「お嬢様……こんなところにいらっしゃったのですか。」
「……………。」
「――お探ししたのですよ。さ、お部屋に帰りましょう……?」
わたしに語りかける彼女の声は優しい。
けれどわたしにはさっき聞いたあの言葉がこの人の本心だとしか思えなくて。
だからこんな優しいのは、さっきの事がなかった事になっているとしか思えなくて。
そう思う自分がつまんなくて、悲しい人間だと思って。でも思いたくなくて。
この優しい声をニセモノだとは思いたくなくて。
だから取りあえず逃げることにした。
分からないなら考えればいい。
そのために必要なのは時間だから。
そのためには。
「―――――――〰〰〰っつ!!」
とれろとれろとれろとれろ!!
この髪をこの忌々しい枝からとらなければならないのに。
どういう風に絡まったんだか一向に取れる気配はない。
とれろとれろとれろとれろ!!
純麗さんがちかづいて来てるのに!!
焦れば焦るほどより絡まって見えるのは気のせいか。
「ん!とれ、た!!」
ホッと息をついたもをつかの間。
くるんと体の向きを変えると、一目散に走り出す。
後ろから聞こえる制止の声も聞かずに。
あ―――――!!!
ズルりという音とともに傾く身体。
いっ――――!!!!!?
そうして。
ガツンと何かにぶつかった後そのままわたしは深く深く落ちていった。
真っ暗なところへ
深い……深い、ところへ―――――――