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短編

闇の中の少女

「や、やめろ…やめてくれぇ!」

顔を恐怖で歪め、男は必死で叫んでいる

じりじりと後退していくが、やがて冷たい壁にたどり着く

男の視界には闇しか映らない

しかし、その闇の先から小さな足音が聞こえる

「ヒ、ヒイイイィィィ !!!!」

男は狂ったように悲鳴を上げ、壁に爪を立てている

何度も何度も壁を掻き、血が滲んでいる

爪が割れ、剥がれると、何度も何度も壁を叩く

そうしている間にも近づく足音

闇の中から、一人の少女が現れる

黒く艶やかな髪は床につきそうなほど長く

瞳は何もかもを見抜くような漆黒

透き通るほど白く華奢な体には、ありふれたセーラー服を纏っている

そのデザインから、近所の中学校の生徒だということが窺える

「何をしても、無駄」

少女の抑揚の無い、しかし鈴の音のような美しい声が響く

顔には、どこまでも感情が浮かばない

男はピタリと動きを止め、恐怖に歪んだ顔を少女に向ける

その瞳には絶望しか映らない

少女は、男に一歩歩み寄る

「貴方の罪は大き過ぎる」

少女は、その手に刀を握る

「貴方の寿命のうちに償うのは、不可能」

刀を上段に構える

「よって、貴方の命を戴く」

男は、濁った涙を流した

刀は静かに降り下ろされ、男の頭頂から真っ二つに切り裂く

赤黒い血が、床一面に広がる

血しぶきが、少女を緋色に染める

それはどこか、途方もない美しさだった

「…任務、完了」

断末魔は響かなかった

少女の足音だけが、闇の中に響いた




『昨夜、参議院議員の○○氏が殺害されました。死因は、刃物による切断です。議員は、税金の横領など―――』

朝、ニュースキャスターが無表情に事件を告げる

様々な映像が止めどなく流れる

人々は無関心に眺める

黒髪の少女だけが、漆黒の瞳を真っ直ぐに画面に据える

『続きまして、先ほど入ったニュースが―――』




真夜中、漆黒の髪が夜空に舞う

黒曜の瞳が星を映し、無限に耀く

「……次、あのビルにいる……」

少女の細い体が、星空に舞う

少女の持つ刀が、月明かりに照らされる




それは、まるで流れ星のようで―――――




最近、こんなブラッキーな短編ばっかり書いてるなぁ

きっと、私の心の中がこんな感じなんでしょうねぇ

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