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五之夢「人間÷ナイトメア=価値観」

四之夢が終わって後日談。今回はナイトメア視点となります。


10/20:誤字修正。ご報告ありがとうございました!

「こんばんは。前回はお疲れ様」


「……こんばんは」


あら、なんだか浮かない顔をしているわね。彼の代理である男性キャラクターが、だけど。

まぁ彼とこの男とは繋がっているのだから、彼自身が落ち込んでいるのには違いないわね。

けど理由は解かる。十中八九、前回の夢についてでしょうね。


仕方ない。ちょっと和ませてあげましょうか。


「……誰にだって辛い時期はあるわ。けどあなたはそれでも前を向いていかなければならないの。大丈夫、また不採用通知だったとしても、あなたの家族と共に歩めば」


「なんの話をしているんですかあなたは!?ていうかなんで知っているんですか!?」


ふむ、最初の頃と比べると違いはあるけど、いつも通りの彼ね。

……何故知っているか??確かに心は読めないと言っていたけど、ある程度なら記憶を読めるとは言っていないわよ?

彼にはそれを言わないけどね。精々からかいのネタとして使う程度だから安心しなさい。


「ジョークよ。で、あなたは何に悩んでいるのかしらね?」


そう言うと彼は諦めたかのように溜息を吐いて肩を落とす。

諦めの早い子ねぇ。それとも他人を叱れないヘタレなだけかしら?楽だからいいのだけど。

少し気が楽になったのには違いないらしく、彼は意を決したかのようにこちらを見る。


「……この間の夢で思ったんだけど、あれでよかったのかなって思いまして……」


―やっぱりね。


これを夢だと認めていても、なんだかんだで少しは気になるようね。

私もいくつかの夢に潜り込んで彼と同じようなことをさせてきたけど、大半が終えた後はこんな事を言う。


「いえ、夢だと解かってはいるし、あのままだと彼が衰弱死するってのも解かっています。けど、彼なりの幸せがあそこにあったんじゃないかなぁ……と」


区別しているのならいいわ。それでも引きずるものはあるようだけど。

シリウスと名乗っていた彼は、度が過ぎていたとはいえ、確かに活き活きとしていたわ。

現実ではどうなのかは知らない。彼がどんな生活を送っているのかも、彼の現実の姿ですら知らない。


だから私は、こう応える。


「どうでもいいわよ、そんなこと」


本当にどうでもいいわ。今の夢の宿主である彼以外の人間なんてね。

彼の反応は……意外そうに目を丸くしている程度。何を考えているかは解からないけど。

私は続けさまに、どうしてどうでもいいのかを説明するべく、口を開く。


「私達ナイトメアが生きる為に必要としている生命力……人間が減るのは困る。だから起こす。それだけよ」


「生命力を分けてもらっている割には薄情ですね」


ふーん、随分と平常心でいられるね?……というか、いつも通り過ぎね。

ちょっと意外。今までの人間は、さっきの答えを聞くと私に嫌悪感や敵対心を向けてきたのに。

それならいいんだけどね。続けましょうか。


「確かに彼は現実では不幸なのかもしれない。けど私達からしてみれば知ったことではないわ」


「……まぁ、あなた達と僕達は全然違う存在ですからね。仕方ないとは思います」


割り切っているわねぇ。現実ではウダウダ考えているタイプの癖に。


「人間って特別に憧れるんですよ。だから、夢の中ぐらい特別でいたいんだと思います」


あの傲慢男……いえ、弱い人間を代表して言っているのかしらね、この子は。

それこそ可笑しい話よね。私達ナイトメアにとっては、だけど。


「誰もが特別に憧れる。誰もが幸せな特別を求める。不幸だから。弱いから。誰も認めてくれないから。

……けどね、この世に特別なんてない。些細な差でしかないわ。人も夢も同じ事」


だからこそ私は、人間を可笑しいと思う。楽しいと思える。好きにも嫌いにもなれる。

同じ人間でも、彼のように夢だと割りきれるタイプは少ない。けど居ないわけでもない。

絶対や唯一が無い存在。だからこそ私達は、彼らの波長を辿り、変幻自在に姿を変えられる。


ただ一つ解かる事は……精神生命体には無いモノが彼らにあるということ。


「生きているかですら曖昧な私達から見てみれば、あなたが現実で生きていること自体、とても素晴らしくて羨ましいことなのに」


私達は、人間の夢が無ければ意思ですら持つことの出来ない存在。

他者の生命力を吸うことで生きていると実感できる、寄生虫のような幻。


だからこそ私達は、人間が羨ましい―――なのに解からない。


「だからこそ、なぜ彼らが長い夢に逃げるのか、まったく解からないわ」


そもそも私達は、短い夢を見せて少量の生命力を吸えればよかった。

なら、どうして長時間に渡って吸収することができるようになったのか。


その根本的な原因は私達ではない。


人間が夢に逃げたいと望んでいるから。


「現実世界で危険に晒されていようとも、彼らは夢中だったわ」


現実に嫌悪し逃避する彼らの意思を読み取り、それを利用して長期的な夢を見せたのが始まり。

そしたら彼らは喜んで夢の世界に居座り、本当の現実を忘れ、夢を現実だと刷り込ませた。

ナイトメアはそんな人間達を狙い、生命力を貪るようになった。

これが現実世界で話題となっている「昏睡状態での衰弱死」という現象。


死へと進んでいく現実を拒んでも夢を見ることを望む人間が、不可思議でならない。


「なにもしなくても生きていけることそのものが、懸命に生きる生命から見てみれば特別な事のに」


本当に人間ってのが解からない。これに関しては嫌悪感ですら抱く。

生きているってことだけでも幸せなのに、変に拘っちゃって。死ですら望む奴なんか理解できないわ。


……目の前で黙り込んでいる人間を見る限りは、彼は悩んでいるのかしら?それとも解からないのかしら?

何か言いたそうだから、私は待ってみる。どんな答えが返ってくるのか楽しみね。



「……まぁ、人にも色々あるってぐらいしか言えませんね……」



困ったなぁと呟いて頭を掻いて、暢気に苦笑いを浮かべる彼。

……深刻さがまったく感じられないほどに表情が緩んでいるわね。

言っておいてなんだけど、私ですら重い話をしたと思っていたのに。


「随分と呆気ない答えを出すのね。色々語っちゃったのに」


「それぐらいしか答えを出せませんから……理解できる人間は、友達と家族だけで精一杯ですし」


あーだこーだと論争になって嫌な気分になるよりはずっとマシだけど……。

どうやら頭の中ではウダウダ考えているようだけど、それがあなたの結論なのね。

切り替えが早いことはいいことね。現実でもそうだったらよかったのにね。


「どの道、あなたには今後も同じようなことをしてもらうわよ?」


「一応は人の為になって、僕も楽しめて、あなたと楽しめるんだから、むしろどんとこいですよ。夢だし」


とことん割り切っているわね。その方がいいけど。

夢だから楽しまなければ損、という点では他の人間にもある傾向ね。


「では改めて、これからもよろしく」


確か人間は、親しみを込めて握手をするものだったわよね。

そっと手を差し出すと、彼は少し手を見てから、うっすらと微笑んでこちらを見る。


「こちらこそ」


そう言って彼は私の手を取り、軽く力を込め……体格差があるからか、少し強いわね。


悪くないわね、握手ってものも。

さて、そろそろ夢から覚める時間だし、区切りとしてはいいかもしれないわね。



偉そうなことを書いていましたが、作者はそれについて深く考えたことがなかったり。

そもそも作者はコミュニケーションが苦手だったりします。ついでに文章力も。

話したり想像したりするのは好きなのに、いざ言葉や文章にすると難しくなるという。

人間、思ったとおりにいかないものなんでしょうかね?(←もっと練習しろって話)


次回の六之夢では、交流編となります。もちろん夢の中で(苦笑)

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