四之夢―其の3「観察+扇情=手数」
視点が話ごとに交互するというのは読みづらいでしょうか?
夢っぽく、相手視点と自分視点という風に分かれた方がらしいと思うのですが。
そんなこんなで、その3です。どうぞご覧になってください。
うわぁ、凄く怒っているなぁ彼。
けど不思議と危機感は感じられず、冷静に彼を観察することはできる。
なんていうか、彼の怒りは正しいようで、正しくないっていう意識が強い。
彼が技を放とうと叫んでいたから、僕は蜘蛛の足についていた死体を剥がし、投げ飛ばした。
確かに、ゲームとかアニメなら、技を放とうとしている最中に攻撃するのはアウトだろう。
けど野生の世界ならありえない事だと思う。獅子は全力で兎を狩るっていうし。
一瞬の油断が命取り。強いからって余裕を持っているからそうなるんだよー。
だから僕も、死なないように必死で彼の攻撃を避け続けています。
日本語がおかしい?国語が弱くてすみません。
「ちょこまかと逃げているんじゃねぇぞゴルァ!」
そうは言っても、当たったら間違いなく即死するじゃないですか。
それに、いくら衝撃波で広範囲に薙ぎ払えるからって、怒りに任せて剣を振り回しているだけじゃ当たりませんよ。
蜘蛛ってじっとしているイメージがあるけど、種によっては素早く跳ねる奴だっているんです。
地面に巣穴を作って待ち伏せするタイプの蜘蛛も、巣穴に近づいた獲物を瞬時に捉えることが出来る。
この死霊蜘蛛も、大きさに似合わぬ跳躍力と小回りを持っていて、それを駆使して避けまくっています。
モンスターとはいえ僕自身が操作しているんだし、彼に正面から挑みません。
ていうか怖いです。正面から挑む勇気がありません。ヘタレですみません。
「飛炎剣!」
「業火灰塵拳!」
「聖炎!」
うわ、彼の手から勢いよく白い炎が出てきた!けど避けれた!セフセフ!
あの人の攻撃って大抵が大振りだし、爆発拳もさっきの白い炎も見切れれば意外と避けられる。
しかも相手は死霊蜘蛛を雑魚だと見下しているからか、我武者羅に攻撃しているだけでなんの工夫も無い。
それに、普通の魔物なら敵を獲物だと思って攻撃を仕掛けるだろうけど、この場合は僕が操作しているからそれに当てはまらない。
何せ相手が強いと解かっているから、大袈裟なぐらいに距離を取って観察すればなんとかなったりする。
というか、蜘蛛の反射神経って便利だよね。考えただけで行動してくれたよ。
「だぁぁぁぁ!もういい!雑魚にゃ勿体無いが、とびっきりのお見舞いしてやるよ!」
今度は何を……うわー、でっかい炎の龍だー。
彼が怒り任せに手を掲げると、そこから蛇のように長い身体を持つ炎の龍が燃え上がってきた。
しかも炎にも関わらず咆哮を上げているし、こちらを睨みつけているし……避けれなさそう。
「シ、シリウス様!?」
「総員退避!焼き尽くされるぞ!」
しかも炎の龍を確認した途端、兵士達がゾロゾロと下がって行っちゃうし。
それだけこの魔法は攻撃範囲が広いんだろう。えーっと……。
「焼き尽くせぇぇ!炎龍乱舞!」
そう命じると、炎の龍は螺旋を描いて突進し、周囲を焼き払いながら死霊蜘蛛に迫ってくる。
―あー、こりゃ駄目だ。
案の定、死霊蜘蛛はこんがりと炭火焼になって絶命しました。
「あはははは!糞モンスターが俺に楯突くから悪いんだよ!」
黒コゲになって死んだ蜘蛛を見て高笑いするシリウスさん。
遠くから見ていた兵士達も歓声が上がる。一時は巻き込まれたかもしれないってのに。
それにしても、やっぱ駄目かぁ。
攻撃する暇が無い上に耐えられるはずが無いと解かっていたとはいえ、まさか一撃死とは。
まぁけど、避けることが出来たから予想以上に情報が集まったから、結果オーライかな?
死霊蜘蛛、僕が操作しておいてなんだけど、君の死は決して無駄じゃないよ。
―じゃあ、次だ。
「ははは……あ?」
「な、なんだ!?地震か!?」
さっきまで勝利で騒いでいた連中が、突然大きく揺れたことで慌て出した。
唯一動揺が薄く、しかし面倒くさそうな顔で周囲を見渡すのは……やっぱりシリウスさんか。
「お、おい!あれを見ろ!」
おお、丁度良い感じに指差してくれたね、兵士さん。
指差した先をみんなが振り向けば、そこにはまたおぞましい光景が広がっていることだろう。
今回が初となる夢繋がり(僕命名)だけど、僕も彼も同じファンタジー路線だというのが解かった。
彼はテンプレートな勇者系で、僕はマイナーなモンスター側。僕がまんま敵役なのは言うまでもなし。
そこへ戦場というテーマが混ざったんなら……必然、僕のモンスターのテーマも決まる。
さっきの死霊蜘蛛が選ばれた理由も一つだけど……戦争って死がつき物だと思うんだよね。
犠牲になっているのはいつだって兵士。モブと呼ばれる兵隊達は、主人公の余所で次々とやられ役となっていく。
―つまり、僕のモンスターのテーマは「死」。
次に創造するモンスターもそうだ。
「……キモい」
うん、シリウスさんの嫌そうな顔も、キモいっていう言葉も納得できる。
けどごめんなさい。これは悪夢を見せるんだから、怖いものでないと。
あちこちに散らばっている血肉を集め、積み上げ、一体化するモンスター。
名づけて「死を積む者」。スライムみたいに山になっているけど、れっきとしたゾンビ系です。
真っ赤な血肉が山のように連なり生き物のように蠢く物体を見て、兵士達は皆怯えている。
当然といえば当然か。シリウスさんもビビっているみたいだし。
けど、まだまだですよ?
僕に出来ることといえば次々とモンスターを創造することぐらいなんですから。
―あなたがこの世界を悪夢と認めるまで、僕は怖いと思えるモンスターを創造し続けます。
僕自身もこのモンスターを怖いと思っているのは内緒。
名称:死を積む者
種族:アンデット種
外見:全長3~40m・地と肉で構成・スライムのように蠢く
属性:闇属性(地寄り)
生への執念や怨念が原動力となり、複数の血肉が集まったアンデット。
また複数であるが故に、聖水や浄化を複数回行わないといけない厄介さを持つ。
動きが遅く防御力も低いので攻撃は通りやすいが、非常にタフで攻撃力が高い。
今回の夢は勇者と戦場をテーマにしているので、またこんなモンスターが出ました。
こんな不気味なのばっかり出てきてすみません(汗)ちゃんとしたモンスターも登場させたいです。
アクセス数が気になるこの頃ですが、今後も更新頑張ります(コラ)
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