参之夢「説明+悪夢=創造」
あらすじ変更いたしました。
前のままだと、この作品の展開が伝えきれないとおもったので(汗)
今回で主人公こと「僕」がどんなことをするのか大体お解かりになると思います。
ついでにナイトメアの少女にも名前がつきます。
それではお楽しみください。
「こんばんは」
「……こんばんは」
僕の目の前では、この間のロリ巨乳少女と僕の代理キャラが向き合って挨拶を交わしていた。
……あれ?もう再会しちゃったの?それにしたって……あれ?
「変だな……確かに一週間ほどの記憶が残っているのに……それも現実の」
それでも……なんていうか、初めてこの子と会った夢を見てから二日と経っていない気がしてならない。
けど、現実での記憶も思い出せる。日課のウォーキングや家の手伝い、お気に入り動画や小説なんかも……。
ついでに言えば別の夢もみた。パンダに追いかけられるっていう変な夢。
なんだろ、頭の中と体の感覚がごっちゃごっちゃになって……。
「夢と現実の境目なんて曖昧なものよ。だから混乱するのは仕方ないわ」
そんな僕を制してくれるかのように声を掛けてくれる彼女。
そう言われちゃうと、確かになって納得してしまう。夢って曖昧なもんだなぁ。
「むしろ嬉しい限りね。現実の記憶がハッキリ残っているということは、夢と現実の区別がしっかり出来ているということなのだから」
嬉しそうな顔をしている彼女。予想外の嬉しさを抱いているような顔だ。
なんていうか、含蓄があるっていうか、そういう人を見た経験があるからこそ喜んでいるっていうか……。
「ちなみに、ハッキリしていないと何か問題があるんですか?」
現実世界ではこの夢を思い出せないけど、こっちの世界では現実世界の事も夢の出来事も全て覚えていた。
じゃあ、ハッキリしていなかったらどうなっていたんだろうか?経験者に聞いてみよう。
「どんどんと夢の世界へ引きずり込まれ、現実での記憶が擦れて戻れなく……つまり起きれなくなるのよ。で、ナイトメアに生命力を吸収され続け、知らぬうちに衰弱死、と」
「うわ、怖っ!」
いつの間にか死んでいましたとか怖い!
ついでに雰囲気出して語っている、この子の邪悪そうな顔も怖い!何それ嫌がらせ!?
「ビビっている顔ってなんだかそそるわ」
「結構Sなんですね……」
クククと小気味良さそうに笑っている今のあなたが一番怖いですよ……。
すると少女は、こほん、と咳き込んで注意を逸らす。おふざけも大概にねってことかな。
「じゃあ改めて説明させてもらうわ。いいかしら?」
「えっと……あ、メモとらせてもらうかもしれませんが、いいでしょうか?」
「ええ。構わないわよ」
説明と聞いて思わずポケットを漁ってみたら、手帳とペンが出てきた!夢って便利!
僕って物覚え悪いし、長い話とか苦手だからなぁ。許可も貰ったし、メモの準備っと。
「私が他人の夢とあなたの夢を混ぜるから、あなたは想像力を駆使して夢を邪魔しなさい。以上」
「早すぎます!」
呆気な!?ていうか早!?説明が具体過ぎやしませんか!?メモする必要も無いよ!
しかもなんですか、その、ゴチャゴチャ言わないでさっさとやりなさい的な目つき!?
「あなたが難しい話を苦手としているのだから簡素的に説明してやったのよ?ついでに言えば私は、口で説明するより体で覚えさせる派なの」
「明らかに後半の言葉の方が本音だと感じるのは僕だけですか?」
ていうか、ここには僕と彼女しか居ませんよね。だから必然的に僕だけになるか。失念、失念。
面倒くさいなぁって言わんばかりに説明する彼女。やっぱり強気な子なんだなぁ。
「何事もやってみないと解からないものよ。仕方ないから、今回は説明から始めましょうか」
「そんな安直な……」
僕って、ゲームはマニュアルや説明書に目を通してやらプレイするタイプなんだけどなぁ……斜め読みだけど。
まぁ、斜め読みってなだけあって、後は特に考えずプレイして慣れようとするから、結果オーライかな?
この子、やっぱり心を読んでいるかのように僕に合わせてくれるなぁ。良い人かも。
では改めて、と再度咳き込む彼女。脱線しまくりだったもんねぇ。
「まずは想像力を駆使するって話だけど、これは簡単。人を怖がらせるような物を思い描けばいいのよ」
「思い描く?」
「簡単に言うなら創造ね。あるいは相手にとって邪魔になるもの……魔王の手先とか、悪の科学者とか上げられるわね」
「それって倒される側の代表格じゃないですか」
「逆に考えてみなさい。倒される側のポジションに夢を阻まれ追い詰められてしまえば、これは悪夢だと自覚するでしょうよ」
なるほど。自分がこんな奴に負けるわけが無いって思って、逆に夢だと思わせる作戦か。
その為に他人の夢と想像力を必要としているってわけね。ナイトメアも何でもできるって訳じゃないんだなぁ。
それにしても……怖いもの……悪夢だと思わせるような物……か……。
「それじゃあ、こんなのはどうでしょうか?」
想像し創造するのは、僕がいつも妄想で描いている物。
僕が多くのゲームやライトノベルの中でも一番関心のある物。
それはモンスター。ファンタジーの世界では必ずと言っても出てくる敵役。
僕は攻略本でいうと、キャラクターのプロフィールよりもモンスターのデータを好んでみている事が多い。
モンスターって、下手すると人型キャラクターよりも個性豊かだから、見ていて楽しい。
いつしか、こんなモンスターが居たらいいな、こんな場面にはこんなモンスターを登場させたいな、と妄想する事が多くなった。
いつも漫画やゲームの世界観に沿って描いているから、完全オリジナルっていうのは少ないけど。
僕がこれから描くのは、そんな世界観を借りずに考えたモンスターの内の一体。
怖いものと言われてすぐに浮かぶほどにピッタリな、見た目的に恐ろしいモンスター。
我ながらグロテスクな設定だと思いつつも想像してしまった、巨大かつ特殊な蜘蛛だ。
「うわ」
思いっきり退かれた。ズザザザって音がする程に前を向いたまま後ずさった。
そりゃあ怖いでしょうねぇ。全長5m越えの、長くて太い脚を持つ蜘蛛とか。
しかもその硬そうな身体には、大量の腐った死体や骨が纏わりついているのだから。
頭部にいたっては無数の骸骨や動物の頭蓋骨で鎧のように彩られている始末。怖い。
今描いているのは、ファンタジー路線の強い、死霊使いとかが居そうな世界観に住まうモンスター。
昆虫種に属する死霊蜘蛛。別名「墓荒し」と呼ばれる予定の大蜘蛛。
体に屍を纏い不吉や怨霊を背負うことで外敵から身を守り、腐肉食性の生物を誘き寄せて喰らう賢い蟲だ。
RPGだったら毒や呪いといったバットステータスを多様し、アクション系なら骨や死体を撒き散らす面倒い敵……という設定。
いやぁ、一度は絵に描いたりしようかなって考えていたモノを、こうもあっさり出てくるとは。
やっぱり夢っていいなぁ。解かりきっていても、こうして形に出来て嬉しい限りだ。
「あなた、なんていうグロテスクな化物を生むのよ?こんなおぞましい生物、今までの経験上見たことがないわ」
「だって怖いものを思い描けって言われたので……」
あ、死霊蜘蛛が喋っている。大量の骸骨で包まれた頭部の牙がカタカタと動いているし。
そっか、これって僕の代理キャラだったのが変身した姿だからかな?グロいけど。
彼女はしかめっ面をしながら死霊蜘蛛の姿をマジマジと見つめ、銀髪のツインテールを弄りながら溜息を吐く。
「これだけおぞましい生物に襲われたら、誰もが悪夢だと自覚したくなるわね」
ある意味で才能があるわ、と告げてくれた。ホラーはむしろ苦手な方なんだけどね……。
僕も、正直ここまでグロテスクになるとは思わなかった。
頭の中で描いていた姿形は曖昧なモノだったから、いざ実現してみて自分でもビックリした。
最近の人間そっくりな3D映画並にリアリティ溢れる姿をしているんだもん。
我ながら恐ろしすぎる。自分で想像したモノじゃなかったら絶対に逃げるよ。
「けどそれだけでは駄目よ?相手は恐らく自分の都合のいいように強さや環境を整え、邪魔者を排除しようとするわ」
そっか。ここって夢の世界だもんね。
僕が浮かんで生み出されたこの死霊蜘蛛も、設定だけは立派で姿は曖昧だったから予想外に怖さが増した。
それは僕の想像力が足りていなかっただけで、きっと慣れている人ならより具体的な力を得られるのかもしれない。
最近多い厨二病やチート厨がやったらどうなるんだろうか……僕自身がそれでないことを祈りたいが。
他人の夢がどんなのかは知らないけど……少なくとも、僕の想像力の曖昧さで予想外な展開を迎えるかも。
予想外な出来事って弱いんだけどなぁ……僕の夢とはいえ、そこまで都合はつかないか。
けど、対策が全くないってことはないか。
「あ、そのことなんですけど……えっと」
「……なにかしら?」
少女の赤い眼が僕を睨む。さっさと言いたい事を言えって感じ。
ちょっと言いづらいけど、彼女が睨んで訴えてくるので言わざるを得ないか。
「……すみません、お名前を教えてもらってもいいですか?」
そういえば初対面の時からずっと聞いていないや、名前。僕も名乗っていないけど。
すると彼女は少し呆然とした後、腕を組もうとして胸が邪魔だったから止めて、顎にてを添えて唸り出す。
どうしたんだろうか……もしかして名前が無いなんて、いやさすがにそれは……。
「仲間からはNo.7931または7931番と呼ばれていたわね」
「ただの番号じゃないですか!」
ナイトメア警察所(仮)は他のナイトメアを番号で呼んでいるの!?ていうか多っ!
仲間が居ることは納得できても、その呼び方は納得できない!
「あら、たかが番号、されど番号よ?精神生命体は波長で他者を区別できるものなのだから、呼称は必要とされないわ」
「僕達人間とあなた達ナイトメアを一緒にしないでくださいよ……」
「そりゃそうね」
「そこで納得しますか」
なんか話していて飽きないなぁこの方。ちょっと疲れるけど。
というか、屍を纏った蜘蛛とロリ巨乳少女が話し合っているって、奇妙な光景だなぁ。
ていかその言い方だと、番号があるだけでも進歩したんだぞ、って感じですね……。
こういう所で違和感や世界観の違いを知る、やっぱり種族が違うんだなぁって思う。
ともかく、名前がないと読むのに困るなぁ……番号で呼ぶのもちょっとアレだし。
よし。ここは思いつきで。
「……じゃあ、あなたの事をリームさんって呼んでいいですか?」
「……リーム?」
「夢の『リーム』を取っただけの単純な名前なんですけど、いいでしょうか?」
我ながら単純だなぁって思う。
けど深く考えられるほどの知識もセンスもないし、ならシンプルに行こうかなって。
彼女(まだ決定していないからね)は首を傾げて考え事をしている様子。
やっぱり名前っていう文化(というか習性?)が無いからか理解しづらいのかな?
「聞きたいのだけど、名前をつけることで何の意味があるのかしら?」
「……呼びやすくなる?」
いざ聞かれると、それぐらいしか思いつかないや。
そしたら彼女は小さく笑い出した。小ばかにしているっていうよりは、可笑しそうに。
「……まぁ、悪くないわね」
なんというか、面白い物を得た子供のような顔だ。顔つきは子供だけど。
まぁ、喜んでもらえたのならいっか。じゃあ改めてこちらから名を……。
「で、あなたの言っていた『そのことなんだけど』の続きは何?」
あ、僕の名前聞いてくれないんですか。ていうか関心が無いんですか、そうですか。
悲しいけど、それがあなた達の性質なら仕方ないと割り切りましょう……グスン。
えっと、それよりも、さっきの話の続きだったね。
「えっと、夢の引きこもりがチートを持ったとしても、数で押せば大丈夫じゃないでしょうか?」
「というと?」
「色んなモンスターを次々と出せば、相手も時期に疲れるんじゃないかなぁと」
死霊蜘蛛だけじゃないですからね、僕が考えているモンスターは。
性能で駄目なら、数で勝負ですよ。さっきもポンと蜘蛛が出たし、好きなだけ出せそう。
……なんですか?そんな意外そうな顔をして。
「……いえ、なんでもないわ。そうね、数で勝負できるのならそれも面白そうね」
さっきから難しそうな顔をしたり、ポカンとしたり、楽しそうだったりコロコロ変わるなぁ。
何か変なことでも言ったんだろうか?夢の中だから自由に出来ると思うんだけど。
そしたらリームさんはふと周囲を見渡し、再び死霊蜘蛛と向かい合った。
「さて、そろそろ時間のようね。大方説明は出来たし、次は実戦と行きましょうか」
「ちょ、早くないですか?」
「平気平気。夢なのだから失敗しても次があるわよ」
そんなあっけらかんと……まぁ夢だっていうのは正しいですけど。
何事も慣れってのは確かに大切だけど、事前練習だって大事っちゃ大事……。
「いいから明日やりなさい」
「はい」
有無を言わない静かな迫力に押されてしまう自分が居ました。
僕の夢とはいえ、主導権を握れるとは限らないよね……できたら苦労はしないだろうし。
「あなたっていろんな意味で付き合っていると楽しいわね」
クスクスと楽しそうに笑っているリームさんを見ていると、悪い気はしないけど。
波長が似通っていると夢に入れるって言っていたし、案外僕らは相性が良いのかも。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
短いしまだ二回目だけど、見ていて悪くない夢には違いないね。
さて、今朝は確か僕が食器洗い当番だったね。
名称:死霊蜘蛛
種族:蟲種
外見:全長5mほど・タランチュラ似・体色は黒・本体は柔らかい・赤い眼
属性:闇属性(毒寄り)
大型モンスターの食べ残しや腐食した死体を身に纏う巨大な蜘蛛。
不吉を纏うことで外敵から身を守り、獲物である腐食生物を誘き寄せて捕食する。
死霊蜘蛛が現れる地は怨霊が漂っているといわれ、不吉の象徴とされている。
しょっぱなからグロテスクなモンスターを出してすみませんでした(汗)
悪夢と聞くと、私は不気味な化物を想像するもので。
モンスターパニックモノの映画はいつもビクビクドキドキしています。ホラー全体に言えますが(苦笑)
とはいえ、今後もこんなモンスターばかりというわけではないので、ご安心ください(汗)
どうか次回もよろしくお願いします。