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二十年前からずっと
その学校には、妙な噂があった。
放課後の午後六時。
誰もいない二年三組の教室で、出席を取る声が聞こえる。
名前を呼ばれたら、返事をしてはいけない。
五人で聞いたら、一人が消える。
六人で聞いたら──
「七人目が来る」
ただ、それだけの噂。
子供じみた怪談だった。
少なくとも、三年前までは。
*
午後六時十二分
誰もいない教室に、雨音だけが響いていた。
黒板には、今日の日付。
六月十七日。
机は六つ。
そのうち五つには名前が書かれている。
佐伯蓮。
水野紗季。
黒田悠真。
神谷理央。
白石美月。
そして最後の一つ。
名前のない机。
教室の時計が、
カチ。
と鳴った。
秒針が止まる。
少し遅れて校内放送が鳴った。
「──出席を取ります」
誰もいない教室。
声だけが響く。
「佐伯蓮」
返事はない。
「水野紗季」
返事はない。
「黒田悠真」
返事はない。
「神谷理央」
返事はない。
「白石美月」
返事はない。
そこで声が止まった。
長い沈黙。
校内放送の声色が変わり、また声が聞こえた。
「……まだ五人」
その瞬間。
教室の後ろの黒板に、白い文字が浮かんだ。
『一人足りない』
そして。
誰もいないはずの教室から、
「佐伯くん」
という声がした。
*
その声を。
蓮は二十年後に聞くことになる。




