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あの教室には、五人しかいない  作者: 飛べない夜鷹/渡辺はるき
プロローグ

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1/18

二十年前からずっと

その学校には、妙な噂があった。

放課後の午後六時。

誰もいない二年三組の教室で、出席を取る声が聞こえる。

名前を呼ばれたら、返事をしてはいけない。

五人で聞いたら、一人が消える。

六人で聞いたら──

「七人目が来る」

ただ、それだけの噂。

子供じみた怪談だった。

少なくとも、三年前までは。

*

午後六時十二分

誰もいない教室に、雨音だけが響いていた。

黒板には、今日の日付。

六月十七日。

机は六つ。

そのうち五つには名前が書かれている。

佐伯蓮。

水野紗季。

黒田悠真。

神谷理央。

白石美月。

そして最後の一つ。

名前のない机。

教室の時計が、

カチ。

と鳴った。

秒針が止まる。

少し遅れて校内放送が鳴った。

「──出席を取ります」

誰もいない教室。

声だけが響く。

「佐伯蓮」

返事はない。

「水野紗季」

返事はない。

「黒田悠真」

返事はない。

「神谷理央」

返事はない。

「白石美月」

返事はない。

そこで声が止まった。

長い沈黙。

校内放送の声色が変わり、また声が聞こえた。

「……まだ五人」

その瞬間。

教室の後ろの黒板に、白い文字が浮かんだ。

『一人足りない』

そして。

誰もいないはずの教室から、

「佐伯くん」

という声がした。

*

その声を。

蓮は二十年後に聞くことになる。

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