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第六十話 最終話「新しい願い」

「これが封魔の指輪か」


 アスティナさんが指輪を調べている。


「ええ、リディオラさんから、古代の魔法や技術に詳しいマフトレインさんにあってから渡したほうがいいと言われたんです」


「......ああ、私も文献でみたことがある。 魔王がかつて暴虐の限りを尽くしたとき、多くの人々が永い年月で作り出した魔法道具があった。【願望の魔玉】それを用い魔王を倒したとあった。 しかしダレスが不死ならば手はない」


「それならぼくが気づいたことがあります」


「......トール。 すこし話がある」


 そうアスティナさんがこちらを見据える。


 

「......そうか、だから」


「確実とは言えないが......」


 アスティナさんがぼくに伝えるとそういって目を伏せた。


「......いえ、多分そうなんでしょう。 覚悟できました、もうぼくはいきます」


「行く前に、もうひとつしておかないといけない。 君の推察が本当なら、それがきっと鍵になる」


 そうマフトレインさんがいう。  


「わかりました、お願いします」


 ぼくはうなづいた。



「ここか......」


 ぼくは前にきた遺跡へとやってきた。 


 そして最下層にたつ。 そこにはダレスがいて、王女も縛られている。


「きたのか。 さあ渡すのだ......」


「きちゃダメ! わかっているでしょう! 私を返してもどちらにせよ世界にとって破滅よ!」  


「黙っていよ」


 ダレスの杖が王女にむけられている。


「......大丈夫、助けます」


「トール......」


「持ってきた魔玉をみせるがいい」


 ぼくは持ってきた魔玉を掲げてみせた。


「どうやら、小細工はしていない本物のようだな...... さあ、早く渡したまえ......」


 ぼくはゆっくりと歩いてダレスに近づく。 そして途中でとまった。


「......さきにアシュテア王女だ」


「いいだろう」


 王女の拘束がとかれた。 そのまま杖をむけている。


「離れててください」


「わかったわ......」


「見えるところにいろ、逃げれば二人とも殺す」


 ダレスに言われ王女はぼくの後ろにいる。


「さあ、渡せ......」


 ぼくが魔玉を渡すと、ダレスは嬉しそうに笑う。


「ついに叶う......」


「お前は不死なのか」


「ふふっ、そうだ...... 私は魔法を極めるため、不死を願った。 だから国を犠牲にして完全な不死となろうとした......  でなければ魔法を極めることなどできない」


「......そんなことのために国を犠牲にしたの!」


 王女が叫ぶ。


「そんなことだと、それが全てだ。 この世界の全てをしりうる、この世界にそれ以上の意味などあるか!」


「それで魔力を高める薬をつくったり、モンスターから魔力を奪ったりしていた......」


「そうだ。 まれに人間というごみのような塵芥ちりあくたから、奇跡を生み出された。 魔力の薬、モンスターからの魔力の吸収、モンスターの創造、その発想をえて私はここにたどり着いた......」


「モンスターの魔力吸収...... まさか、リーシュさんを殺したのは......」


「ああ、私だ。 彼女はモンスターから魔力を吸収する技術をかたくなに教えてくれなくてね」


 そうダレスは薄い笑みをうかべた。


(こいつ!!)


 ぼくは持っていた封魔の指輪を使った。 だが封魔の指輪は砕け散った。


「なぜだ!?」


「今のこの魔力をあつめた魔玉の力の前では、その程度の魔法にはなんの意味もない。 そして...... 貴様もな」


 魔玉が黒く輝くと、吸い込まれるように魔力が奪われる。


「ぐっ......」


「くくくっ、魔力が流れ込む。 失われた魔力の分、お前からいただくぞ」


「くっ...... そのためにぼくを呼んだのか......」


「ああ、私の魔法はかなりの魔力を必要とする。 さあ奇跡によって生まれた願望の魔玉よ。 我に力を与えよ」


「どういうこと!? 願望の魔玉!」


 王女がそういう。


「こやつのことだ。 ケットシーなど、そんなものは最初からいない」


 ダレスはあざけるようにいった。


「............」


「知っておったか...... かつて私を排そうとしたものたちが作り上げた魔玉、それが再びケットシーとなって我が前にたつとはな。 これも運命、だが、その魔力が今度は私の糧となるのだ! くっ、はっはっは!!」


 そうダレスは狂気を含むわらいごえをあげる。


「......糧にはならないよ」


「なに......」


「お前の言ったように、願望の魔玉は人の願いだ。 人々がケットシーの存在を空想して望んだ」


「なんだ腕が変わる......」


 ぼくの腕は剣となり、ダレスを切り裂いた。


「ぐはっ、なに...... だが不死たる我は、魔力さえあれば何度でも...... 元に...... 戻らない! なぜだ!」

 

 ダレスは戻らない体をみて狼狽する。


「もう戻らない。 お前は時間の魔法をつかうんだろ」


「時間の魔法......」


「ええ、アシュテアさま。 ダレスは時間を操作して、その命を長らえさせた。 不死のように...... その魔法をつかうために莫大な魔力が必要だった」


「それで無限の魔玉を......」


「くっ...... なぜだ! 封魔の指輪では、無限の魔玉を封印などできないはず......」


 ぼくは服をぬいだ。 そこには呪文がかかれている。


「それは!?」


「ぼくの体には、アスティナさんたちが不死のヒュドラを調べて作り出した封印の呪文がかかれている。 魔鉱石と同じだ。 いまそれを取り込ませた」


「バカなあの実験体を解析...... そんなことが!」


「お前は体の一部でもあれば、そこから魔力で時間を戻し現れる。 王女をさらった時のように、ぼくに一部をつけていたんだ」


「くっ...... 貴様わざと取り込ませたのか!」


「お前が言っていた人々の奇跡だよ」


 ぼくの体が大きい猫の姿に変わっていく。


「まて! やめろ! 私は! この世界のいままでの知恵を有している! それを失ってもよいのか!」


 ダレスはそうぶさまに叫んだ。 


「かまわない...... また人は自分たちでつくっていくから、他人のものを奪うしかないお前は必要ない」


「やめろーーーー!」


 ためらいなくぼくはダレスを叩き潰した。



「そういうことだったの」

 

 アシュテア王女はそういうと目をつぶる。 城にもどったぼくは異世界からきたことも全て話した。


「それでは、願望の魔玉がトールさんとなったのですね」


 リディオラさんがそういった。


「ええ、おそらく。 永い年月人々の願いが蓄積して、ケットシーの姿になったんだと思います」 


「それで自在に体を変化させられるのね」


「ええ、ぼく自身が魔力、魔晶剣のようなものなので、姿を変化させられることにアスティナさんたちにいわれて気づきました」


「......だがトールの元の人間は」


 アスティナさんが悲しげにみている。


「ええ、おそらく死んだんだと思います。 料理やネコ、死ぬまえにそういう願望を持っていたため、願望の魔玉に引き寄せられ、この世界にきたんでしょう」


「なるほど、まさに願望の具現化ね...... まあそんなことは、私にとってどうでもいいわ」


「えっ?」


 王女は手をわきわきさせている。


「まって!! まって! うわああああ!」


「やめてください! 王女!」


 いつもより念入りにもふられた。 王女なりの慰めだったんだろう。


 グラードさんたちは国に戻り、復興に進んでいる。 サイゼルスさんたち亜人も手伝っている。 タルタニアは暴君の死去で新たなる王がたった。 どうやら他国と融和する政策を進めるようだ。



「ふぅ、大変だったね、こむぎ」


「ピィ!」


 ぼくはこむぎと店に帰った。


「さて、新しいパンを作り出そう! いままでと違って、今度は元の世界にもないものを作り出してみせる!」


「ピィ!!」


 そう思い店の厨房にたった。 


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