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第五十四話「おかえり、ルナーク」

「失礼します」


 店にリディオラさんがきた。


「いらっしゃいませ」


「ええ、あれ? こむぎさん。 お母さんと一緒じゃないんですね」

 

「ええ、こむぎはもう親離れの年だったので、たまに集落に帰りますけど、ここにすんでいます」


「ピィ!」 


 こむぎはリディオラに近づきすりすりしている。


「ふあっ、それはよかった。 このまま群れに帰ってしまうのではと...... ああ、あの後の事をお話ししますね」


 リディオラさんは、アースラントは領地、爵位没収の上、投獄され彼に続いた貴族も同様の処置がなされたと話してくれた。


「ダレスは?」


「......いいえ、どこにもその姿はなかったそうです。 アースラントもダレスの口車に乗ったとそういってるそうです」


(何者なんだ、あのダレスって魔法使い......)


「それでマフトレインさんたちは......」


「それがですね」


 その時、アスティナさんが店にはいってきた。


「ああ、リディオラさま。 トールすこしきてくれないか。 こむぎも......」


「かまいませんが......」


 ぼくたちはアスティナさんから呼ばれアスティナさんの家へときた。 そこにはマフトレインさんが何か装置を作っていた。


「これは...... あのときの装置」


 それはアースラントの城、地下にあった装置だった。


「そうだ。 私はルナークから破壊の魔力を取り去る研究をしていた。 そのとき、ダレスが現れた。 最初、彼はイビルモンスターから魔力を奪い安全なモンスターにしたいと言われてね」


「それで協力したんですね」


「ああ、だが途中からおかしいと感じ拒んだのだが、拘束して脅されたんだ」


「それでこれは」


「おやじのつくった破壊の魔力を吸収する装置だ」


「では、これでイービルモンスターを、ホーリーモンスターにかえられるのですか」


 リディオラさんが驚いて聞いた。


「いや、そういうわけではないんです。 イービルモンスターとして生まれたものは元々破壊の魔力しかもっていませんから、そのまま全て吸い尽くして死ぬだけ。 ただ......」


「元々ホーリーモンスターなら...... もしかして」


 ぼくがいうと、マフトレインさんがうなづく。


「そう。 もしかしたらもとに戻せるかもしれない......」


 そういってアスティナさんが焦るようにいった。


「だが、君もしってるようにこの装置発動までかなり時間がかかるんだ。 暴れるルナークを長時間拘束できるか...... それが問題なんだよ」


 そうマフトレインさんがいった。 


 ぼくはすこし考えた。


「......わかりました。 ぼくがやってみます」


「ほ、本当か! でも危険だぞ! 長時間前にいれば必ず攻撃されるはずだ! でも正直私とおやじだけじゃ......」


「でもアスティナさんにはお世話になってるし、あれだけ苦しむルナークも助けたい。 それにひとつ考えもあります」


「......ならば、私もお手伝いします」


「ピィ!!」


「リディオラさま、こむぎ...... ありがとう」


 ぼくたちはルナークをもとに戻すべく行動を開始した。


 

 ルナークのいるレベクレイクへきた。


 マフトレインさんは装置を設置している。


「では計画通りに」


「わかった」


「ピィ!」


「はい」


 湖でまつと、そこから大きな魔力が水面にやってくる。


「来ます!」


「グオオオオ!!!」


 湖からルナークが顔を出した。


「今だ!」


「ピィ、ピィーーーー」


 湖面をこむぎが凍らせた。 


(引っ掛かるように、滑り止めのついた魔力をつくる......)


猫舌鞭タンウィップ!」


 魔晶剣を伸ばして分散させその首にムチのように放った。 ネコの舌のようなざらざらが滑り止めとなり首に巻き付く。


「グアアアア!!!」


「拘束しました!」


「わかった!」


 マフトレインさんとアスティナさんが装置を動かす。 装置の魔法珠が光り、ルナークも黒く光りはじめた。


「ガオオオ!!」


 ルナークが激しく暴れ始める。 凍っていた湖面が割れはじめた。


「おちつけ! ルナーク!」


「このままだとやはり! リディオラさん、こむぎ頼む!」


「はい!!」


「ピィ!!」


「水よ、その偉大なる力をもって、巻き上がれ、アクアストーム」


 湖の水が巻き上がり、ルナークをつつむ。


「ピィピィーー!」


 こむぎがその水を凍らせ、ルナークを凍りに閉じ込める。


「よし! これで......」


「トールどの! あれを!」


 ルナークを包んでいる氷が震えている。 


「やはり、ずっとは捕らえ続けられないか!」


 その振動が大きくなってくる。


「リディオラさん、こむぎ! ぼくが魔力を高めきるまで、氷を!」


「わかりました!」


「ピイィ!」


 リディオラさんたちが氷を維持している。 しばらくして振動が大きくなり、氷にヒビが入ってきた。


(もう少し! 魔力を変化させる!)


「も、もう限界です」


「ぴ、ぴぃ......」


「ガアオオオオオ!!!」


 氷ははじけルナークは咆哮した。


「よし! 【猫腹皮檻】《プライモーディアルポーチジェイル》!」


 巨大な魔力がルナークを包んだ。 液体のような柔らかな魔力のなかルナークはもがいている。 


「グォォ...... グォ......」


 そのうち、黒く光っていたルナークはおとなしくなった。


「よしトール! 破壊の魔力を吸収したぞ!」


 ぼくが魔力を解除すると、穏やかな顔になったルナークは湖の岸へとちかづく。


「ルナーク......」


「キュウウ......」


 そう小さくなくとアスティナさんに近づくとほほをすり付けた。


「......おかえり、ルナーク」


 そう涙を流して優しくアスティナさんは撫でた。

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