彼女の青い影
しばらく歩いた彼女は振り返ると何も言わずに立ち止まった。静かに、ゆっくりと後ろ向きに歩くと僕の顔を寂しそうに見つめた。淡いピンク色のライトに照らし出された彼女の足元には青い影があった。ここで一緒にファンタンゴは踊れない。僕は彼女に目を移すと体が微かに震えていることに気づいた。僕はため息をこぼすと彼女を愛しげに見つめ返した。彼女のお気入りのブーツは僕がプレゼントしたものだ。彼女は僕の首に巻いたマフラーを見ているようだ。彼女からプレゼントされた手作りの黒いマフラー。
冬の夢にいるようだった。『きっとこれは悲しいことになるかもしれない』と感じたが、もうどうすることもできないとも思い始めていた。 お互いに言葉が出てこなかった。ただ静かに雪が降っていた。
僕は『君のことを今も変わらずに愛しているのさ』という題名の連載小説を執筆中なんだけど、この題名を繰り返し繰り返し心の中で呟いていた。
結局、君のことを今も変わらずに愛しているのさ。僕らは何度でも愛し合えるんだ。もう二人は離れられないのだから。離れ離れになることなどできやしないんだ。誰も僕たちを引き離すことなどできやしないんだ。