きになるおふだ
かりかりかり……
「ちょっと何やってんの?」
いつもの旅行友達であるリサが整えた髪の最終チェックをしながら言ってくる。視線は鏡の中の自分だけでなく、私のことも捉えていたようだ。
「これ……なぁんか、気になるなって」
泊まっている旅館の部屋に貼ってあったおふだ……のような何かを指で示す。
「やだっ、やめてよ……剥がれたらどうすんのって」
「どうもしないよ、ただの紙じゃんこんなの」
“ような何か”ってのは言葉のままで、よくわかんない文字っぽい模様が書いてあるこれが、ちゃんとしたおふだとは思えないんだけど……。
「いやそれマジモンだって、ヤバいんだって」
「何がさ?」
「ボンジ書いてんじゃんっ、マジヤバいホンモノだって」
リサはそういうの好きなんだ、そういえば。なんだよボンジって、焼き鳥かよ……。
かり……かり……
「だからやめてって!」
「……ごめぇん」
あんまりリサが怒るから私はおふだを爪先で弄ぶのをやめて、今日の観光に出かけることにしたのだった。
で、一日中めいっぱいかんこうを楽しんで今日もこの旅館の部屋に戻ってきたわけだけど、今は私が部屋に一人ぼっち。リサっていっつもお風呂ながすぎだって。まえに旅行いったおんせんちでも肌がふやけるまでながい時間露天風呂で満喫してくるんだから。
かりかり……ちっ……かりかり……
おこる人もいないから、どうにも気になるおふだを、私はまたつめさきでこする。今朝よりもはしっこの引っ掛かりがつよくなったような気がする。本当にはがしちゃったらさすがに旅館のひとにおこられるかな……?
「あっ、またやってる!」
「え? あぁ、うん」
「うん、じゃないってぇ。今そこで若女将さんに聞いたんだけど、おふだにはぜっったい触っちゃダメって!」
さてはなにかをふきこまれてしまったなぁ、こいつ。これはあれだな、りょかんてきにはみられたくないくらいひどいあなでもあいてそうだな、このぼろいかべ。
「わかった!? ……ってぼうっとしすぎじゃない? 歩きすぎて疲れちゃった?」
「あぁ、……うん」
かり……ちっ……かりかり……ちぃ……
「言いながらも、続けんなってぇ! あんたさっきから何かおかしいよ?」
だってこのおふだ、もうすこしで……
かりかり……ぺり……かり……ぺりりぃっ
「あ! 剥が――