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3-2乙女チックなナギサちゃんの観光名所講座

 気持ちよく晴れた午後。風も心地よく、絶好の飛行日和だった。午前中はいつも通り、会社の雑用をして、午後はナギサちゃんと合流した。今日は、一緒に練習をする約束をしていたからだ。


 ナギサちゃんは、口では何だかんだ言いながらも、色々と付き合ってくれるし、面倒見もよい。ただ、同じ会社の人とは、一緒に行動しないみたいだ。


『自分の会社の人たちとも、こんな感じで仲良くすればいいのに』なんて思うけど、口には出さなかった。


 プライドが高いのと、負けず嫌いなのは、相変わらずなので。でも、以前に比べると、少しだけ柔らかくなった気がする。


 私達は、町を一周したあと、カフェで休憩――もとい勉強中だった。飛び方や手信号の出し方について。位置を確認する目印の建物について。他にも〈グリュンノア〉の歴史や、歴代の『有名シルフィード』などなど。


 時には『エンジン・メンテナンス』などの、かなり専門的なマナ工学の話も出てくる。ここら辺の話になると、私はさっぱり分かんない……。


 私とナギサちゃんは、実地期間こそ数ヶ月の差だが、知識については、月とスッポンぐらいの差があった。


 私は元々この世界の人間じゃないから、というのが大きいけど、シルフィードの昇級試験では、そんなのは言い訳にならない。何とかして、同じレベルまで行かないとならなかった。


 ただ、元々勉強は得意ではないので、色々と覚えきれていない知識が多い。中学時代の成績はギリ平均点で、中の下だったし。でも、体育だけは超得意で、運動会では、いつも大活躍だった。


 体を動かすのは得意なんだけど、覚えるのとかは、相変わらず苦手なんだよね。ナギサちゃんが色々説明してくれるけど、聴いた瞬間に、半分は頭から抜けていってしまう。


 やる気がない訳じゃないけど、体で覚えるタイプだし。日々新しい文化や知識を吸収するだけで、完全にキャパオーバーなんだよね。私の記憶領域、あまり広くないみたいなので……。


 私はアイスコーヒーを飲みながら、ナギサちゃんの話をじっと聴いていた。二人でいる時は、大体はナギサちゃんの講義が始まる。


 物凄く真面目な性格なので、プライベートで会う時も、仕事関係の話が多かった。今はちょうど、観光名所について話をしている。


「ところで、風歌はお客様を、どこの名所に案内するつもりなの?」

「どこって、希望の場所じゃないの?」


「必ずしも、指定してくる訳じゃないのよ。中には、おまかせのお客様もいるのだから」

「あー、それね……」


 なるほど、時には、目的地を決めていないお客様も、いるかも知れない。今までは、希望の場所にすぐ行けるように、場所を覚えることだけに専念していた。


「んー、やっぱり、海上都市の見どころは、海じゃないかな。まずは〈サファイア・ビーチ〉か〈エメラルド・ビーチ〉辺りがいいんじゃない? お洒落なお店も多いし」


 少し考え込んでから、自信満々に答えた。


「確かに、人気スポットだけど、中にはビーチのそばのホテルに、宿泊しているお客様もいるでしょ? 見慣れている人には、全く面白くないわよ」


 即行でナギサちゃんのツッコミが入る。


「うーん、そっか……。じゃあ、こないだ二人でショッピングに行った〈ウエスト・マーケット〉は? お土産屋さんも一杯あるし、見てて凄く楽しいよね」


「そこも、人気スポットの一つだけど、最初にお土産を買ったら、荷物になるでしょ? 土産物屋は、特に希望がない限りは、一番、最後よ。それに、ショッピングじゃなくて、勉強のための視察で行っただけでしょ!」


 ナギサはちゃんは生真面目に、どうでもいい部分までツッコミを入れて来る。


 二人でショッピングって初めてだったし、凄く楽しかったじゃん。私は二人の友情を深めるための、お出掛けだと思ってたのに。


 って、今はそんなことを、考えてる場合じゃなかった。真面目に答えないと、また厳しいツッコミが――。


「じゃあ〈新南区〉はどう? 色々なアミューズメント施設があるから、絶対に楽しいと思うよ」


〈新南区〉とは〈南地区〉の南端の海を埋め立てて作られた、最も新しいエリアだ。遊園地などの、大型の娯楽施設が揃っている。


「あそこは、お客様によるわね。〈ドルフィン・ランド〉は年配の方は行かないし、逆に子供がいる場合は〈ドリーム・ブリッジ〉から先には、行けないでしょ」

「それも、そうだよねぇ。結局は、お客様しだいかぁー……」


 ちなみに〈ドルフィンランド〉は、子供や若者に大人気の遊園地。向こうの世界だと『ディズニーランド』的な感じかな。


〈ドリーム・ブリッジ〉は〈新南区〉と〈南地区〉を繋ぐ一キロ以上ある長い橋だ。〈新南区〉入り口には、大きくド派手な金色の門があり、その先には、カジノや居酒屋などの歓楽街がある。マイアだと……そう『ラスベガス』みたいな感じ。


「何で、もっと普通の名所を選べないのよ? そんな人の多い所ばかりじゃなくて、他にも色々あるでしょ? 静かで風情のある場所とかが」


「人の多い所のほうが、楽しいかなぁー、って思って。私は人の多い所のほうが好きだから、にぎやかな名所しか押さえてないんだよね」


 人が一杯いるのを見ると、凄く元気になる。逆に、人気がないところだと、何か寂しいし、嫌なことを思い出したりするんだよね――。


「あのねえ、風歌の好みじゃなくて、お客様を第一に考えなさいよ。風歌が観光するんじゃないのだから、お客様が楽しめなきゃ意味ないでしょ?」

「あははっ、だよねー。覚えること多くて、中々手が回らなくて」


「本当に何も知らないのね……」

 ナギサちゃんは大きくため息をつくが、


「最初に行くなら、神社や神殿がおすすめよ。〈竜宮神社〉や〈ユーノス神殿〉は、特に人気が高いわ」

 何だかんだで、ちゃんと教えてくれる。


「あー〈ユーノス神殿〉は聞いたことある。確か、貝のネックレスを二人で身につけると、永遠に結ばれるんだっけ?」


「ネックレス以外にも、イヤリングや指輪もあるわよ。要はペアの貝殻を、二人で片方ずつ持つのが大事なの。あと『女神ユーノス』は、恋愛の神様だからね」


「ナギサちゃん凄く詳しいね。買ったことあるの?」


「ないわよ、そもそも相手がいないし……。って、そんなのは、どうでもいいのよ!〈ユーノス神殿〉は恋愛運アップ。あと〈竜宮神社〉は財運アップ。他にも神殿関係は色々あるから、ちゃんと勉強しときなさいよ」


 彼女の顔がちょっぴり赤くなっていた。占いとかも好きみたいだし、結構、乙女チックなんだよね、ナギサちゃんは。


「でも、洋風っぽいのと和風っぽいのが、一緒に存在するのも面白いよねぇ」

「神社は全て、風歌が住んでいた『マイア』から来たものよ。だから、神殿に比べるとかなり新しいわ。自分の世界から来たものぐらい、覚えておきなさいよね」


「なるほど、私のいた世界から来たんだ。色んなものが入って来てるけど、神様もこっちに来てたんだね」


 神社なんて、向こうの世界でも、初詣ぐらいでしか行ったことがないので、完全にノーマークだった。


 ちなみに、この世界には、私がいた世界の物もかなり流通している。食べ物や雑貨、化粧品など。特に、服やファッション系は、大きな違いがないので普通に売られており、どちらの世界のメーカーか、知らない人も多い。


 ただ、家電製品だけは流通していなかった。技術体系が全く違うし、こちらの世界には『電気』がないからだ。


 あと『次元技術保護法』というのがあって、特定の技術の物は、輸出入が禁止されていた。それぞれの世界の商品を保護するためと、軍事転用を避けるためだ。


「他にも、東地区の〈聖杯の泉〉や、西地区の〈風車丘陵〉とか。北地区の〈精霊の池〉なんかも、人気の観光スポットね」


「えーと〈風車丘陵〉って、一杯風車が並んでる所だよね? あそこの上空はよく飛ぶけど、壮観だよねー。お花畑も綺麗だし」


「昔はもっと、町中に沢山の風車があったのよ。パン用の小麦を挽くために作られたのだけど、今は全て機械でやっているから、観光用に少し残っているだけね」

「へぇー、あれだけ沢山あるのに、少しなんだ……」


 ずらりと並んだ大きな風車が一斉に回る姿は、物凄い迫力があって、初めて見た時はすごく感動した。そもそも、本物の風車って、こっちの世界に来て、初めて見たからね。


「年配の方には〈聖杯の泉〉が、とても人気があるわ。ここは健康祈願の人が行くところね。泉の水を一杯飲む度に、寿命が一日延びると言われているから、足繁く通っている人もいるみたいよ」


「おぉー、寿命が伸びるんだ?! 私も通おうかなぁ」

「風歌は今のままでも、きっと長生きするわよ」

「なんで?」


 私が尋ねるとナギサちゃんは、さっと目をそらす。って、その微妙は空気はなによ……?


「あと〈精霊の池〉は、老若男女に人気ね。ただ、夜行くとカップルだらけだけど」

「あそこって、ホタルが見れるところだよね?」


 そういえば、私は本物のホタルって見たことないや。今度見に行ってみよ。


「夏の間、限定だけどね。あそこは『特別保護種』に指定されている『天使ホタル』が見られる、この世界でも物凄く貴重な場所なのよ。だから、観光客だけではなく、昆虫マニアや研究者もよく来るわ」


「凄く素敵な名前だね『天使ホタル』って。天使みたいに綺麗だから?」

「それもあるけれど、この池には、ある伝説があるのよ……」


「昔、天界から降りてきた天使と、水の精霊が恋に落ちたのだけど、種族の違いから無理やり引き離されることになったの。天使が天界に戻る際、羽からホタルを作って、自分の代わりに永遠に彼女のそばにいて、見守ることにした。それが『天使ホタル』の伝説よ」


「きゃー、ロマンチックだねー。女の子とか好きそうだよね、そういう話」

「だから、人気スポットなんでしょ。ちゃんと覚えておきなさいよね」


 ナギサちゃんは呆れた目で私を見る。その冷めた視線、地味に心に突き刺さるから止めて……。


「それにしても地元だけあって、ナギサちゃんは、本当によく知ってるよねー。さすがは、ノアっ子だね」


「別に、地元だから知っている訳じゃないわよ。むしろ、地元にいるほうが、よく知らない場合もあるし。私が今知っているのは、ほとんどがシルフィードを目指してから、学んだ知識だから。つまり、風歌が勉強不足なのよ」


 ナギサちゃんは、ビシッと指差しながら言い放つ。うぐぅ、正論過ぎて反論できない。


「あ……あははっ。ほら、私って実戦で学ぶタイプだから。そうだ、今から見に行こうよ」

「どこに行くのよ?」


「うーん〈ユーノス神殿〉とかどう? ナギサちゃんて、恋愛系が大好きでしょ」

「なっ、別に好きじゃないわよ!」


 ナギサちゃんは激しく否定するが、意外と乙女思考なのは知っている。


「よーし、レッツゴー!」

 私は、さっとエア・ドルフィンに乗ると、エンジンを始動した。


「待ちなさいって! 行くとは言ってないでしょ」

 と言いつつも、ナギサちゃんは急いで追いかけてくる。付き合いがいいのは、相変わらずだ。


 私はスーッと上昇すると、目的地に向かって飛び始めた。


 勉強は超苦手だけど、元気・体力・行動力は、誰にも負けない自信がある。こうなったら、全て周って、体で覚えちゃうもんね。


 目指せ、業界NO1の体育会系シルフィード!

次回――

『空を飛んでたら人が倒れてるのを発見してしまった』


 犯人はこの中にいる!

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