35.国外追放、そして新たなる冒険の始まり(第一部完結)
これで第一部完結になります。残念ながら力及びませんでしたが、拙いながらも区切りのいい所まで書き切ることができたのは、今後の自信になると思います。今まで読んでくださった方、とりわけ評価・ブックマークをしてくださった方、本当にありがとうございました。
35.国外追放、そして新たなる冒険の始まり
翌朝。
中央広場の掲示板に張り出されたトゥバロン王直々の下知状は、王都ファルカに住む人々を大いに混乱させた。
『以下の者は、第二王女リリア=ポーリャ=リヴルノヴァ
失踪事件に深く関わったとして、国外追放とする。
・ベリンジャー=ゴールドブラッド
・モランゴ=アルファス
・モランガ=アルファス
・バルボラ=ソウザ
・ノーマン=アーヴィング
・ジャチカーヴァ
・キャンデリーナ
・ヴォレッタ
以上』
「本当にこれでよかったの?」
住み慣れた我が家を引き払い、長旅の準備をしている僕にセシルが問いかける。
「リリアを本気で助けるなら、Sランクパーティーの戦闘力と探索力がどうしても必要だからね。ベリンジャーたちも死刑や労役を免れたんだから、よかったんじゃないかな」
「だからって、君たちまで国外追放になる必要はなかったんじゃないの? これでリリアが見つからなかったら、勇者になるどころか名誉も回復できないんだよ? ララたちはノーマンの決めたことだからって納得してたみたいだけど、私は自分の処遇も含めて全く納得がいかないんだけど」
セシルを今回の処分から外すと決めたのは、僕ではなく王だった。確かにリリアが行方不明の今、セシルまで国外追放になれば国家の存亡に関わってしまう。パーティーメンバーをのけ者にするのは心苦しいが、彼女には彼女にしかできないことをして貰うべきだろう。
「最善ではないのかも知れないけど、全体的なバランスを考えればこれでよかったんじゃないかな。それに前から言ってるけど、名誉とか勇者認定とかは大した問題じゃないよ。どんな立場だろうと、僕はやるべきことをやるだけだからね。だからリリアの救出は僕に任せて、セシルには是非とも国を守ってもらいたいんだ」
「そりゃあノーマンは私なんかいなくたって、3人のお姫様と楽しくイチャイチャできるからいいわよね。こうなったら、本当にピピを性奴隷にしちゃおうかな」
不謹慎な本音を丸出しにして、セシルが拗ねる。こうやって感情を素直にぶつけてくれるのは、親密さの証みたいで正直嬉しい。ただそれだけに、いくら言葉を尽くしても納得させるのは無理だろう。だから本当に申し訳ないけど、敢えてスルーさせてもらうよ。
「そうだ。ひとつ頼まれて欲しいんだけど、いいかな?」
「いいけど、何?」
「僕の家族がガルフ村に住んでるのは知ってるよね? 今回の一件でだいぶ迷惑かけてると思うから、それとなく様子を見て欲しいんだ」
「それはやめたほうがいいかな。王家の使いの者が出入りしたら、監視してるみたいで逆効果になるよ」
「そうか。そうだよな……セシルが婚約者候補という名目で事情を説明してくれたら、両親や姉夫婦も少しは安心すると思ったんだけど……」
「しょ、しょうがないなぁ! 私も忙しい身だけど、そういうことなら引き受けてもいいわよ! 全く、そういうことはもっと早く言ってよね!」
セシルは怒ったような困ったような声を出しつつ、満更でもないような顔で請け負ってくれた。面倒を押し付けて申し訳ないと思っていたけど、なぜか嬉しそうなので結果オーライ……なのかな?
その日の夕方。僕たちNAPとリヴルの末裔は、城壁東側の門前に集められていた。もちろん国外に追放されるためだ。それぞれのパーティーが2馬力の幌馬車を用立て、当面必要な物資を積み込んでいる。見送りは禁止されているので、辺りには門番と衛兵しかいない。
ちなみにリヴルの末裔は、その名の使用を禁止された。追放になる国の開祖の名を使っているのだから、当然の措置だろう。とはいえリリアを見つけ出して名誉を回復すれば、再び名乗りを上げられる。だから敢えて新しい名は聞かず、僕の中ではリヴルの末裔のままにしておく。
「御主人様。準備が整いましたよ」
「ご苦労様。それじゃあ出発しようか」
「おい、ノーマン。何も言わせずに行くつもりかよ」
振り返るとそこには、リヴルの末裔の面々が勢揃いしていた。
「別れの挨拶をするような仲じゃないだろ。今更何が言いたいんだ?」
「極刑を免れ、リリアを助けるチャンスを貰ったことには感謝する。だが貴様に助けられたのが、全くもって気に食わん」
「まあそうだろうね。結果的に助ける形にはなったけど、たまたまそうなっただけだから、良くも悪くも気にしないでくれ。僕は今でもちゃんと君たちが大嫌いだから、安心していいよ」
するとモランゴ、モランガ、バルボラの3人が、ベリンジャーの前に出る。やれやれ。それでなくてもあまり楽しい気分じゃないのに、くだらない嫌味や虚勢を聞かされたくはないんだけどなぁ。
「ノーマン。お前のお陰で、妹は死刑にならずに済んだ。本当にありがとう。そして今まですまなかった」
「ノーマン。このご恩は一生忘れません。もし困ったことがあったら何でも言って下さい。私にできることなら、何でもします」
モランゴ兄妹は僕に対し、深々と頭を下げた。予想外の展開にしっかり驚く間もなく、今度はバルボラが僕に近づく。
「お前さんのお陰で、30年も冷や飯を食わされずに済んだよ。どうもありがとう。それでお返しと言っちゃあ何だが、ひとついいことを教えてあげようじゃないか」
「いいこと、ですか?」
「軍事国家ドルゼオン領内にある神獣の聖域が、次なる魔素汚染のターゲットらしいね。リリア救出は一旦アタイらに任せて、お前さんたちはそっちに行くといい」
リリア救出は一刻を争う緊急事態だけど、魔素汚染と聞いては黙っていられない。ここはバルボラの言葉に甘えて、ドルゼオンに向かうべきだろう。だけど、どうしても引っかかることがある。
「そんな重要な情報を、どうして事前に知ってるんですか?」
「アタイには弟がいるんだが、そいつは内外の情報が手に入りやすい立場にいてね。アタイがお前さんに助けられたことも知っていて、この情報をあたしに託したってわけさ。ちなみにリリアの行方に関しても鋭意調査中だ。もし何か分かったら、この魔獣を飛ばしてお前さんにも教えるよ」
バルボラはそう言いながら、肩に止まっている灰色の魔鳥を撫でた。相変わらず謎の多い女性だけど、親切は素直に受けるとしよう。
「ありがとう。助かります」
「それじゃ、そういうことで。また会える日を楽しみにしてるよ」
バルボラが乗り込むのを待って、リヴルの末裔を乗せた馬車はゆっくりと動き始めた。城壁の門をくぐり抜けてから、モランゴが馬に気合を入れる。馬車は一気に速度を上げると、森の中へと姿を消した。そう言えば、彼らが何処に向かうのかを聞きそびれてしまった。まあ、今の彼らだったら、それほど心配する必要もないだろう。
「よし。僕たちも行こうか」
「「「はい!」」」
こうしてパーティー追放から始まった僕の冒険は、国外追放によって新たな局面を迎えた。向かうは軍事国家ドルゼオン……今度は追放されないといいなぁ。
もしよろしければ、ブックマークと広告下の☆☆☆☆☆で応援よろしくお願いします。




