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30.一方その頃『リヴルの末裔』は(2)


30.一方その頃『リヴルの末裔』は(2)



「ねえ、ベル。やっぱりやめたほうがいいんじゃない?」

 

 ダンジョンの中階層に至っても、リリアは俺様の引き留めを諦めなかった。気持ちはありがたいが、いい加減鬱陶しい。


「しつこいぞ、リリア。危険だと思うなら、無理について来る必要はないって何度も言ってるだろう?」


「そうじゃなくて、私はベルが心配なのよ。剣聖ブラスの二の舞いにでもなったら……」


 剣聖ブラスとは、また随分と懐かしい名前が出てきたもんだ。彼は強さを求めるあまり魔道具に手を出し、魔人に墜ちた挙げ句魔王になってしまった。そしてリヴルノヴァ王国建国の祖である、勇者リヴルによって打ち滅ぼされた。事実かどうかはともかく、童話になるくらい有名な話だ。


「くだらん。そんなおとぎ話で、俺の決意が揺らぐわけがないだろう」


「剣聖ブラスの悲劇は史実よ。当時の記録が、王国の公式資料としてちゃんと残ってるんだから」


「いずれにせよ、俺はブラスのような間抜けじゃない。安心して、俺に全部任せておけばいい」


 リリアはこれ以上言っても無駄だと悟ったのか、それきり押し黙ってしまった。そうそう、それでいい。でもだからといって、モランガみたいに無言で俺様を睨みつけてきたり、バルボラみたいにニヤニヤしたりするのはやめて欲しいが。



 特に強い魔獣に出くわすことなく、俺様たちは最下層に到着した。これもバルボラのお膳立てなのかも知れないが、さすがに心配になる。


「バルボラ。こんなレベルの低いダンジョンに、強い魔道具を持った魔族なんて本当にいるのか?」


「そう慌てるんじゃないよ。ほら、おいでなすった」


 バルボラの指し示す先にいたのは、全身が鎧に覆われた大小2体の魔族だった。大きい方が巨大な戦斧を、小さい方が刀身の黒い剣を携えている。どちらの武器も根源的な恐怖を感じさせるほどの、禍々しいオーラを放っている。なるほど、これは期待できそうだ。


「どうやらアンデッドみたいだな。物理攻撃じゃ倒すのが難しそうだが、どうする?」


 モランゴの言う通り、正面からの殴り合いは得策じゃない。かといって魔道具は魔法耐性を持つものが多いから、効果的な呪文を探るのに時間がかかりそうだ。


「長引かせて魔道具が破損したら元も子もない。よし。ここは俺に任せてもらうぞ」


 俺様はそう言ってから、長年に渡って愛用してきた長剣を抜いた。

 2体の魔族は構うことなく、俺様との間合いをジリジリ詰めてくる。

 そして奴らが一足一刀の間合いに入る寸前に、俺様は薙ぎ払うように剣を振った。

 もちろん斬撃は奴らに届かない。

 しかし大蛇に変化した刀身が、魔道具を弾き飛ばしてから奴らの体に巻きついた。

 大蛇は体を伸ばしながら、魔族2体の全身にくまなく巻きついていく。

 それが終わると今度は締め付けが始まり、圧縮されて小さくなっていく。

 そしてどんどん小さくなっていった大蛇と2体の魔族は、やがてこの世から姿を消した。


「すげぇじゃねえか。こんな技が使えるなんて知らなかったぜ」


「剣を犠牲にして発動する必殺技だからな。今回みたいに新しい剣が手に入るならともかく、そう簡単には使えないよ」


「でもこの技があれば、魔王だって簡単に倒せるんじゃねぇか?」


「技の威力は剣の威力に比例するから、今までの愛剣では多分無理だったろうな。もちろんこの魔剣でも無理なんだが……」


 俺様はそう言いながら、地面に転がっていた黒い魔剣を拾い上げた。刀身は光を反射することなく、まるで深い闇で塗り固められているかのようだ。いきなり生命力を吸い取られたり、体を操られるような事態も想定していたが、どうやら杞憂だったらしい。


「振り心地も抜群だし、こんなに手に馴染む武器を持ったのは生まれて初めてだ。こりゃあ期待できるぜ」


 モランゴの意見には、同意しかなかった。あとは具体的な使い心地を確認したいところだが、今から新たなダンジョンに潜るのは体力的にも雰囲気的にも厳しそうだ。


「試し斬りがしたいのかい?」


 そんな俺様の心を見透かすように、バルボラが問いかけてきた。バルボラは俺様とモランゴの顔を交互に見てからひとつ頷くと、


「分かった。ついてきな」


 と言って先に進み始めた。わけが分からないまま、その後に続く俺様たち。最下層の奥は、当然行き止まりだ。だが最奥の岩肌にバルボラが手をかざした途端、壁が崩れて通路が現れた。 


「何を驚いてるんだい? ここは隠しダンジョンなんだから、隠し通路や隠し部屋があっても不思議はないだろ?」


 バルボラはこともなげにそう言うと、瓦礫を避けながら隠し通路を進んで行く。暫く進んだ先に待っていたのは、異様な瘴気を纏った巨大な扉だった。


「ここが真のラスボスの部屋だ。それなりに強敵だが数を頼りにしたゴリ押しタイプだから、試し斬りにはもってこいの相手だよ。ちなみに倒せば新たな魔道具も手に入る。さて、どうする?」


「もちろんぶっ倒すに決まってんだろう!」


 モランゴはそう言うと、自慢の怪力で扉を押し開いた。


 ラスボスは、ホブゴブリンの大群を従えたゴブリンキングだった。今までの俺様たちであれば、かなり厄介な相手だったろう。


「こりゃあスゲェ! まるで大根みてぇにサクサク斬れるぜ!!」


 敵陣に突っ込んだモランゴが、巨大な魔戦斧をぶん回しながら叫ぶ。確かに恐ろしいほどよく斬れる。だがそれより気になったのは、ホブゴブリンたちの様子だ。 

 ホブゴブリンにはそれなりの知能があるので、劣勢になれば我先にと逃げるのが普通だ。だがこいつらは逃げるどころか、馬鹿の一つ覚えのように突進してくる。そう、まるで誰かに操られているかのように。


(まさか、バルボラが操ってるのか?)


 ホブゴブリンの攻撃をかわしながら、バルボラの様子を窺う。すると全てを見透かしているかのように、俺様に向かってにこやかに手を振りやがった。底の知れない不気味な女だ。だが俺様の役に立とうというその心がけは、素直に褒めてやろうじゃないか。

 全てのホブゴブリンを斬り刻むと、満を持したかのようにゴブリンキングが戦闘態勢に入った。見た目と気合いからそれなりに期待したが、今の俺様たちの相手をするには力不足だった。だからといって嬲り殺しにしたのはやり過ぎだったかも知れないが、弱いのが悪いんだから仕方ないよな。 


「満足したかい?」


 全てが終わったタイミングを見計らって、バルボラが声をかけてきた。最高のお膳立てと申し分ない成果だったが、素直に認めるのは癪に障る。


「ちょっと歯応えが足りなかったが、試し斬りとしては悪くなかったよ」


「しかし魔道具ってのは凄いっすね。これさえあれば、ノーマンどもなんか目じゃないっすよ!」


「そうかい。それは何よりだ」


 興奮冷めやらぬといった感じで、更にまくしたてるモランゴ。火に油を注いだかと、俺様はそっとリリアとモランガの様子を窺う。しかし彼女たちの眼差しは、完全な拒否と不信から羨望へと傾いていた。

 ここまでの展開を読み切っていたとすれば、恐るべき頭脳と洞察力だと言わざるを得ない。果たしてあのバルボラに、そこまでの能力があるんだろうか……。俺様はそんなことを考えながら、隠し部屋の奥へと進んでいく。宝箱は祭壇に祀られているかのように、平らな岩の上に置かれていた。トラップなど気にせず、その蓋を開ける。


「試したいなら、ここを使いな。頑丈だし、誰にも見られる心配がないからね」


 嬉しそうなバルボラの声が、ダンジョン内に響き渡る。

 宝箱の中に入っていた魔道具は、一対の魔法の杖だった。

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