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序章:追い求めた末路-5

 


『な゛に゛? ごれ゛……』


 声を発し、最初は自分のものだとクートゥは認識出来ませんでした。


 しかし直ぐにそれが自分の喉を震わせながら口から吐き出ている事に気が付き、そんな喉を抑えようと手を伸ばします。


 すると視界に入った両の手が、真っ黒に染まっている事にも気が付きます。


 皮膚が変色したのか、と混乱しながらよくよく注視してみると、それは変色したのではなく、真っ黒な毛で覆われていたのです。


 それは先程彼女が手にしていた剣の柄を覆っていた毛皮に酷似しており、太く鋭利でぬらぬらと邪悪に輝いていました。


 そこでクートゥの脳裏に凄惨な想像が広がります。


 そしてその現実を否定する為に、彼女は自身の身体を手当たり次第に弄ります。


 結果、判明してしまったのは残酷な現実でした。


 その全身を手にも覆っていた体毛で支配され、まるで鮫肌のようにザラザラと不気味な手触りをしています。


 手足の指の先には醜く歪んだ爪が鋭く伸び、触れた物を容易に傷付けるでしょう。


 体格は大きく変わってしまい身長体重は数倍にまで膨れ、筋力も骨格も無骨で醜くく盛り上がってしまいまるで獣が二足歩行しているような体躯になっています。


 そして何よりその顔は、およそ今までのものとは比べ物にならぬほど、変貌していたのです。


 狼のように面長で突き出した顔に、後頭部付近まで裂けた大きな口。口腔内には刃物のような鋭く醜い黄ばんだ歯が乱立し、長い舌は不気味に蠢いています。


 更にその瞳は二つから四つまで増えてしまい、切り傷のように切長に裂けた四つの(まぶた)から覗く眼球には、一つにつき三つの瞳孔が妖しく輝きます。


『あ゛あ゛ぁぁ……』


 クートゥは絶望し、膝をつきます。


 その姿は正に化け物。確かに自身の身体が変化し、決して外から皮を被っているわけではないのが全身から這い上がるように脳に伝わり、彼女に現実を突き付けます。


『な゛、ん゛でぇぇ……。ごん゛な゛ぁぁ……』


『望みは叶えた。貴様はもう力と共にある』


 絶望するクートゥの脳内に、再び声が響きます。


『わ゛だじは゛ぁぁ、ごん゛な゛の゛の゛ぞん゛でな゛い゛っっっ!!』


『ぐ、ふ……』


 慟哭するクートゥに、声は遂に堪え切れなくなったとばかりに笑い出します。


『ぐはははははははっ!! 貴様は何も分かっていないなぁっ!?』


『え゛ぇ?』


『最強の力? 不死身の身体? そんなものを望んで安い対価で終わるわけがないだろう? ましてや竜に勝つなど……。笑わずして何だという?』


『わ゛だじ、ばぁ……だだぁ……』


『そんなもの知った事ではない。貴様は欲に塗れ、願いを叶え、対価を払った。その結果がその姿だっ!!』


『あ゛あ゛ぁぁ……』


『ぐはははははっ! それに嘆くのはまだ早い……』


『あ゛あ゛?』


『ほぉうら、感じないか? 我等が親愛なるご主人様の〝罪〟の片鱗をっ!!』


 その瞬間クートゥを襲ったのは____


 ぎゅるるるるるぅぅ……


 暗闇から這い上がるような、抗いようのない〝空腹〟でした。

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