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序章:追い求めた末路-4

かなり遅くなってしまい申し訳ありません。


日付が変わってしまいましたが、今日の分も更新しますのでよろしくお願いします!

 


 まさかの精霊からの懇願に目を見開くクートゥは、改めて剣を見ます。


 本物の生物かのように鼓動する禍々しい剣。状況が状況でなければ彼女は関わろうとはしなかったでしょう。


 ですが魔族の国を出来してから数ヶ月……。王様や国民、そして同僚達が竜を倒し、英雄になった彼女を待っているのです。


 それに「なんでも願いを叶えてくれる」という信じ難いけれど魅力的な言葉。彼女の中で、誰もが考えるような欲望が湧き上がります。


『最強で、不死身の剣士になれるのか?』


 クートゥは生唾を飲み込むと、ゆっくりゆっくり剣が刺さる祭壇へと歩み寄り、その剣の目前で止まります。


 そして深呼吸をし、意を決したように剣の柄を両手で握り、力を込めて引き抜こうとしました。すると____


『求めし者よ』


 クートゥの脳内に、再び声が響きます。


 ですが今後は先程の精霊ではありません。


 精霊のように澄んだ声音ではなく、今響いているのは何とも重々しく、そして悍ましい程に不明瞭で這い寄るような、そんな声でした。


 クートゥは思わず剣から手を離してしまいそうになりましたが、不思議と柄から手が離れません。


 まるで逆に剣の方から手を握り返されているように、離すことが出来ません。


『求めし者よ。お前、俺の牙を手にして願いを叶えようと言うのか?』


 何度となくその声に、クートゥは覚悟を決め、言葉を発します。


『ああそうだっ! 私は願いを叶えに来た剣士クートゥっ!! 私の願いを聞き届けろっ!!』


 その言葉に、不気味な声はその声のトーンを一つ上げながら、まるで面白がるように言葉を返します。


『ならば願いを口にしろ。その代わり相応の苦難が貴様を襲うが、必ずその全てを叶えてやる』


『苦難など、そんなものは覚悟の上だ。私は____』


 クートゥは一度目を閉じ、じっくり自分の中で願い事を決め、そして口を開きます。


『私を竜すら屠れる最強の剣士にしろっ!! 誰にも負けない、誰にも傷付けられない不死身の剣士にっ!!』


 その願いは祖国の為。そして自分が望む英雄像に近付く為。それが叶う願いを口にしました。


 そして声は答えます。


『わかった。お前を最強の存在にしてやろう』


 次の瞬間、彼女の全身に唐突な激痛が走り抜けます。


『がっ!? あ゛あ゛ぁぁぁぁっ!?』


 その激痛は治ることなく、全身を這い回るように駆け巡ります。


 皮膚が裏返り、筋肉が裂け、骨が軋み、神経が千切れ、内臓が裏返り、脳が灼ける。


 そんな表現が生温く感じるほどの耐え難い激痛。


 思わずその場で転げ回りたくなる衝動に駆られますが、相変わらず剣が彼女の手を離してはくれません。


 ですが、それでも彼女は安心しました。


『この激痛ならば耐えられる』と。


 歴戦の剣士であるクートゥにとって痛みなど日常茶飯事。確かに今経験している激痛は初めてであるが、強靭な精神力を持つ彼女はそんな激痛にも耐える事が出来たのです。


 彼女は想像します。


 激痛に耐え抜き、言葉通り最強となった自分が竜を倒して英雄になる姿を。


 そして皆から称賛を浴び、天族に報いを受けさせる自分を。






 約一時間。彼女はその激痛に耐え抜き、気が付けば痛みは引いていました。


 荒い息を吐き、安堵の声を漏らします。その声は____


『こ゛れ゛で、よ゛う゛や゛……あ゛?』


 以前の彼女とは程遠い、獣のような声になっていたのです。

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