急章:叶わぬ望み-18
後十話無い、って言ってからニ十話くらい過ぎた気がしますがきっと気の所為でなので気にしないように!!
……拘り出すと止まらないのです、はい。
(……お母さんと、おじさんの記憶……)
スカビオサによってクートゥのスキルを流し込まれているスターチスは、二人の記憶を垣間見ます。
母の記憶がスキルに乗って……スカビオサの記憶が経由した際に巻き込まれて、彼の中に注がれているのです。
そしてそこにあったのは、まだ魔族だった頃のクートゥと若々しさ溢れるスカビオサの仲睦まじい光景。スターチスの知らない、母の姿でした。
(二人は……そっか……)
スターチスはそこで二人の関係を悟ります。そして恐らく母は相手がかつて愛した男である事には気付いていただのだろうとも理解しました。
(これ……お母さん、の……)
それと同時に自身の中に少しづつ、得体の知れない力が入り込んで来る感覚を覚えました。
その力は暖かく、まるで母が抱いていたスターチスに対する愛情がそのまま彼の心に寄り添うような、そんな温もり溢れるものでした。
スターチスには何が起こっているのかは判りません。
母に不死のスキルがあった事も、スカビオサに《救恤》のスキルがあった事も、そしてこれから母がどうなるのかも、スターチスには判り得ない事でした。
知っていれば避けられたかもしれません。
力があれば別の道もあったかもしれません。
しかし無常にもスターチスはまだまだ子供で、クートゥはどうしようもなく化け物で、スカビオサは紛れもなく「勇者」でした。
それらが織りなす結末は、残酷にも揺るがないものでしかなかったのです。
スターチスという一人の子供が後悔まみれの人生を歩む、そんな結末に……。
『がはっ……』
スカビオサが二人に触れてから数秒後、彼はまるで全身全霊を尽くしたかのように息を乱しながらその場に崩れ落ちます。
『スカビオサっ!!』
それを見たロドデンドロは《氷雪魔法》を解除し、凍傷だらけの身体を無理矢理動かしながら彼に寄り添います。
『おいしっかりしろバカ野郎っ!!』
『ろ、ロドデンドロ……』
『いい歳してハリキリ過ぎなんだよ……。ちったぁ身体労われっ』
『あ、はは……。でも、上手くはいった、よ……』
そう言ってスカビオサはなけなしの力で先程まで氷漬けになっていたクートゥへと指差します。
そこにあったのは、先程とは見違える程に朽ち果てた化け物の姿。
生命力溢れる筋肉は枯れ、力強かった体毛は荒み、鋭く歪んだ歯や爪は朽ち果て、身じろぎしてしまう程の威圧感を放っていた四つの瞳は生気を失っています。
《暴食》以外のスキルを失った影響は凄まじく、様々なスキルの恩恵で保たれていた肉体を維持する事が困難になってしまっているのです。
『やった……。おいやったなスカビオサっ!!』
『……』
『……スカビオサ?』
不死の怪物を倒し、喜びの声を上げるロドデンドロにスカビオサは俯きます。
『おい。なんだ。どうしたんだよ』
『……僕は──』
『お母さん……?』
二人の英傑が、声の方へと顔を上げます。
そしてそこには、最愛の母を目の前で失った、一人の少年の姿がありました。




